個人事業主の青色申告で気を付けるべき3つの誤解

青色申告の誤解

どうせ税金は出そうもないからね。申告期限に遅れてもイイよね。

その理解は、「誤解」かもしれません。あなたが青色申告の場合、申告期限に遅れることで不利益を被ってしまうかも。

そんな個人事業者の青色申告にまつわる誤解について、3つお話をしていきます。

個人事業者の青色申告で気を付けるべき3つの誤解

ヒトからそう聞いた、とか。なんとなくそう思ってた、とか。不確かなことは「よくよく調べてみたら違ってた」というのはあるものです。いわゆる「誤解」。

税金の誤解で損をしたくはありませんよね。

ということで。個人事業者の青色申告について、ときおり耳にする「誤解」のことをまとめてみます。ぜんぶで3つ。

  1.  税金が出ないなら申告期限に遅れても問題ない
  2. 青色申告は帳簿をつけるのがタイヘン
  3.  とりあえず貸借対照表を付けておけば・・・

 

《 誤解1》税金が出ないなら申告期限に遅れても問題ない

ひとつ目の誤解、申告期限後の申告について。

期限後申告の問題

まずは結論として。所得税の青色申告で申告期限に遅れると、ある問題が生じます。

  • 65万円控除が使えない(10万円控除はOK)

税金は出そうもないからなんて、タカをくくっていると痛い目にあうかもよ。ということです。

65万円控除が使えない

青色申告の特典として、「青色申告特別控除」があります。65万円または10万円を、所得からマイナスできるという大きな特典です。

一定の要件を満たした申告ができると10万円控除、より厳しい要件を満たすことができると65万円控除。という位置づけです。

で。65万円控除については、その要件に「期限内の申告」というものがあります。ですから、申告期限に遅れるとOUT! 65万円は認められず、10万円控除までです。

もしも、65万円控除を見込んで「税金はゼロ」だと考えていた場合。控除が10万円に減ることで「実は税金があった」ということもあり得ます。

その場合には、ペナルティの税金が上乗せされることも・・・期限後申告の場合にはすべからく「65万円控除は不可」となりますので気を付けましょう。

 

《 誤解2 》青色申告は帳簿をつけるのがタイヘン

ふたつ目の誤解、青色申告の帳簿づけについて。

白でも青でも記帳義務

「青色申告は帳簿付けるのがタイヘンだよね」というハナシを耳にすることがあります。このハナシは「青色申告はメンドーだから、白色申告でいいんだ」と続きます。

残念ながら、それは誤りです。いつの時代のハナシをしてんの?と教えてあげなければいけません。

平成26年から、白色申告であっても「帳簿の記帳」は義務となりました。それ以前はたしかに、小規模事業者などの白色申告は「帳簿の記帳義務なし」ということがありました。

納税者自らが申告をするという「申告納税制度」にあって、国は「白色申告から青色申告への移行」を促しているという背景があります。

事業者の矜持

ということで。白色申告であっても、皆に「帳簿の記帳義務」は課されることとなりました。おまけに、「帳簿等の保存」についても義務とされています。

もはや「青」も「白」も、そう変わりはなくなってしまったわけです。やや記帳の要件がユルいなど、少々の差異はあるものの。積極的に「白」を選ぶ理由はもはや無い、と言っていいでしょう。

えっ、なになに。少々の差異ってなに? やっぱり「白」の方がラクなんでしょ? なんてこの期に及んでやめましょう。

ここはひとつ覚悟を決めて、事業者としての矜持を見せて、青色申告を選びましょう。そして、しっかりと青色申告のメリットを享受することです。

 

《 誤解3 》とりあえず貸借対照表を付けておけば・・・

3つ目の誤解、「とりあえず貸借対照表」で65万円控除について。

65万円控除の2大要件

さきほど《 誤解1 》で、「65万円控除には、10万円控除よりも厳しい要件がある」というお話をしました。その「より厳しい要件」とは、

  • 複式簿記
  • 貸借対照表の添付

会計や経理の従事者でなければ、目をそむけたくなるような要件です。とはいえ、会計ソフトを使うことで「技術的には」クリアが容易な要件と言えます。会計ソフトも随分と易しくなりましたから。

でもそれは、あくまで「技術的」な側面だけです。形式的に、複式簿記で記帳ができ、貸借対照表を作ることができたとしても。「本質的」なところまでを会計ソフトは解決してくれません。

「発生主義」という本質

「本質的なことってなに?」ということですが。ひと言でいうと、「発生主義」と言われるものです。「は、は、発生主義!?」と腰が引けても無理はありません。なかなかやっかいなお話しですから。

ひとつだけ例を挙げます。ちょっと考えてみてください。

  • 平成28年12月31日に、10万円の商品が売れました
  • 商品の代金は、平成29年1月4日に受け取りました
  • さて、「平成28年分」の確定申告での売上額はいくら?

 

答えは「10万円」です。正確に言うのであれば、「発生主義にもとづく売上は10万円」。おカネを受け取ったのは平成29年ですが、「商品が売れた」ことに着目して考えます。

いっぽうで、発生主義に対する考え方として「現金主義」というものがあります。これは、現金の動きをベースに取引を見る考え方です。

だから、現金主義にもとづく平成28年分の売上額はゼロです。10万円は平成29年分の売上として計上される。これが発生主義と現金主義の違いです。

青でも白でも発生主義

ここで大事なポイントです。青色申告だろうが、白色申告だろうが。発生主義が原則です。現金主義ではいけません。

ただ唯一。例外として「現金主義による所得計算の特例」が許されています。ただし、次の3つの条件を満たす必要があります。

  • 青色申告の承認を受けている
  • 前々年分の不動産所得と事業所得の合計額が300万円以下
  • 「現金主義による所得計算の特例」の届出を出している

この条件を満たす以外には。やっかいだろうがなんだろうが「発生主義」をとらなければいけないのです。

発生主義と売掛金

もうちょっと、専門的な話にお付き合いください。

さきほどの例で、発生主義をとる場合。平成28年分の貸借対照表には「売掛金 10万円」と計上されます。売掛金とは、いわゆる「ツケ」による売上の未回収金額をあらわします。債権です。

資産や負債を掲載するのが「貸借対照表」であり。資産としての債権「売掛金」は、やはり、貸借対照表に掲載されます。

現金主義をとった場合には、「売掛金」が掲載されることはありません。「ツケ」だろうがなんだろうが、入金したときが売上ですからね。会計的に「ツケ」を把握する必要がないのです。

つまり。

貸借対照表に「売掛金」があるかどうか、ということが「発生主義」の要件を満たすかどうかの判断基準と言えます。

発生主義の痕跡を貸借対照表に探す

 売掛金が発生主義の判断基準と言いましたが。現金商売ということであれば、そもそも売掛金がないということはあるでしょう。

しかし、売掛金だけが発生主義の産物ではありません。他にも、売掛金の反対概念としての「買掛金」もあれば。その他の未収金や未払金など、発生主義にもとづいて計上すべきものはたくさんあります。

そういう諸々の「発生主義の産物」が貸借対照表に現れているのかどうかを見なければいけません。ただ、貸借対照表が申告書に付いていればよい、わけではないのです。

極端な場合、「現金預金 ○○円 」だけ、みたいな貸借対照表にお目にかかります。「それ、ほんとうに発生主義なの?」と疑うことになります。信用取引のご時世です、ほかになんかあるだろう?ということです。

貸借対照表を付けることに気をとられ、本質としての発生主義がなおざりでは、65万円控除は受けられません。

「とりあえず貸借対照表をつけておけば65万円」というのは誤解であることを覚えておきましょう。

 

まとめ

個人事業者の青色申告で気を付けるべき3つの誤解についてお話をしてきました。

意外と誤った理解が、もっともらしい誤解が、世の中には広まっているものです。あらためて、自分の眼で見直してみましょう。

 

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  きょうの執筆後記
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