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『対策』を打てる店、『耐策』を打たされる店

対策

お客さんに文句を言われたから。お客さんが怒っているから。

そんな言い訳をしてはいませんか?

「お客さん」を理由にした対応ばかりしていると、結局、お客さんを失うことになってしまうかも。

目次

お客さんを「言い訳」にするな

生じた問題に対するにあたり。お客さんを言い訳にすると、おかしなことになりかねません。では、「お客さんを言い訳にする」とは、いったいどういうことなのかを考えていきます。

とある店のとある掲示物

先日、とある飲食店に、次のような内容の掲示物が貼ってありました。

ピーク時、勉強等による長時間の座席占有により、多くのお客様がお席でお食事をいただくことができない事態になっております。

これに対し、多くのお客様からお叱りを頂戴しております。

これを受け、当店では土休日の11時から16時及び混雑時は勉強・パソコンの利用を御遠慮下さいます様、ご協力の程、宜しくお願い致します。

さて、これを読んで、あなたは何を感じましたか?

違和感がありすぎる

上記の掲示物を読んだわたしには、「とんでもない違和感」がありました。いちばんの違和感はコレ ↓

『多くのお客様からお叱りを頂戴しております』

どういう意図で書いたのかはわかりかねますが。「だって、お客さんに言われちゃったから」という責任回避の姿勢が見えるのはわたしだけでしょうか。

そして、もうひとつの違和感はコレ ↓

『勉強・パソコンの利用を御遠慮下さい』

そもそも「長時間の座席占有」が問題であったのはずなのに。勉強・パソコンをしている人は、すべてひとまとめに皆ダメよ、と。

今度はそっちから「お叱り」を受けそうですが、だいじょうぶ? と心配になってしまいます。そのときは、『またしてもお客様からお叱りを頂戴し、・・・』という掲示物が貼られるのでしょうか。

お客さんのせい、お客さんが言ったから

実はすでに冒頭の一文から、違和感のある、おかしなコトになっています。

『勉強等による長時間の座席占有により、多くのお客様がお席でお食事をいただくことができない事態になっております』

あたかも「お客様が長時間、座席占有してくれちゃってるから。困ってるのは当店のほうなんです」的な。

お客様のせい、お客様が言ったから。他者批判に他者依存。お客さんが言い訳にされているこの状況、あなたならどうします?

 

当事者根性で3つのステップを踏んでみる

ここはひとつ。某飲食店に関わる自分をイメージし。当事者意識でこの問題を考えてみることにします。3つのステップで解決に臨みます。

いったい何をしたいのか?何を売るつもりなのか?

まずは、当店が「いったい何をしたいのか?」を確認することです。たとえば、仮想のカフェが2店、AショップとBショップがあるとして。

  • Aショップ・・・たくさんの人にコーヒーを楽しんでもらう
  • Bショップ・・・最高のコーヒーでたいせつな時間を演出する

これに続けて、「何を売るつもりなのか?」に展開すると、

  • Aショップ・・・リーズナブルで大衆的な味わいのコーヒー
  • Bショップ・・・時間を気にせず過ごせる居心地のいいスペース

ここが出発点です。自店が何をしたいのか?何を売るのか?をすっ飛ばしていくから、答えがブレるんです。お客さん任せになってしまうのです。

来店したお客さんの責任は、自店にあります。お店が何をしたいのか?何を売っているのか?という「思い」を見て、感じて、お客さんは来店しています。

もしも、意図しないお客さん、マズいお客さんが来てしまったというのなら。それは、自店の「思い」が足りていない、伝わっていないということです。お客さんのせいではありません。

それはなぜ起きたのか?

自店の「思い」を確認したところで、次に進みます。なぜ、問題は起きてしまったのか? 

さきほどの「長時間の座席占有」問題を思い出すことにしましょう。その原因を考えてみると。

なんのことはありません。勉強・パソコンを長時間利用できる、利用しやすい環境にある、ということです。

繰り返しになりますが、その「環境」をつくっているのは自店です。お客さんではありません。そこを理解して、さらに次に進みます。

自店はどうするか?

さいごのステップ。問題を受けてどうするか、という対策を考えます。ただし、自店の「思い」を忘れずに。自店がつくった「環境」を忘れずに。

冒頭の張り紙をした飲食店、実は、Aショップ的な「思い」を持つお店です。そこのところを踏まえて、対策を考えていくと。

Aショップの売りは「リーズナブルで大衆的な味わいのコーヒー」です。戦略としては「薄利多売」とならざるを得ない、お客さんにある程度の回転率を求めざるを得ないビジネスモデル。

にもかかわらず、Aショップを見ていると「勉強・パソコンを長時間利用できる、利用しやすい環境」を提供しています。たとえば、

  • 競合店に対抗して、Wi-Fi環境、電源コンセントを整備している
  • 混雑時でも、店員が長時間利用者に声掛けをしない

Aショップは、この「環境」を変える対策を打たなければいけません。「たくさんの人にコーヒーを楽しんでもらう」という「思い」を果たすのに、Wi-Fiや電源は必要だったのでしょうか?

その投資額を控えれば、より販売価格を引き下げ、より明確なコストリーダーシップ(低価格)戦略がとることもできたのではないか?

あるいは店内のクリンネス(清潔さ)向上や、長時間利用者への声掛けのための人件費に充てられたのではないか?

結果、長時間滞在には不向きな、カフェや食事を直接の目的としたお客さん中心のお店になるのではないか?

これまでの自店の環境づくりに誤りはなかったかを考えると。「お客さんのせい」にした掲示物を貼る前に、できることはあったはずです。

 

すべてを守るために、責任を負う

「お客さんにお叱りを受けたから」の言葉が示すとおり。問題の発生に目が奪われ、自店の「思い」や自店の「責任」が飛んでしまった、というお話でした。

問題に対するための「対策」を打ったつもりが、お客さんの言い分に耐えるという「耐策」を打たされた。

さて、こんな言葉があります。

誰かが言いたいことを、自分が言わされる愚を避けよ。

カリン・アイルランド / 米国の著作家

今回の話に置きかえると。勉強やパソコン利用に不満を持った「特定のお客さん」が言いたかったことを、お店が掲示物というカタチで代弁させられたことになります。

ところが、「特定のお客さん」の言いたかったことは、自店としても言いたかったことだったのでしょうか?

違いますよね。それは、上記の3ステップを通じて説明した通りです。

掲示物を貼るにしても、自店の「思い」、自店の「責任」でもって言うべきだった、ということ。

他者批判、他者依存では、自店のほんとうのお客様を守れません。声の大きな「特定のお客さん」を支持する姿勢に嫌気します。店を離れます。

自店のたいせつな従業員だって守れません。お客さんの言われるがままとなる、最前線に立つ従業員は疲弊するばかりです。

すべてを守るために。自店の「責任」で語るべきことを教えてくれる好例でした。

 

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  きょうの執筆後記
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