フリーランス・個人事業主の『開業前』の支払は経費になるのか?

開業費

開業前の準備にかかったおカネ、経費になるのかなぁ…?

はいはい、なりますよ! フリーランス・個人事業主が、開業日より前に支払ったおカネも経費になります。

でも、どこまでが経費になるの? 帳簿づけ(経理)はどうやるの? そんな「開業前の支払」について、疑問にお答えしていきます。

その名は「開業費」

開業前に支払った経費のことを、会計・経理の世界では「開業費」と呼んでいます。以後、お見知りおきを。

開業費について知っておくべきこと

それではこれから「開業費」について見ていきます。フリーランス・個人事業主に必見の確認ポイントは、次の3つです。

  • 開業費の範囲
  • 開業費の経理方法
  • 開業費のオトクな扱い方

 

開業費の範囲

まずはじめに。「開業費」の範囲はどこまでか、を確認することにします。

開業費とは

あらためまして、「開業費」ってなんだろね。ということで、法律条文に当たってみましょうか。だいじょうぶ、サラッと済みます。

一 開業費(不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用をいう。)

《 所得税法施行令 第7条1項 より抜粋 》

事業を開始するまでの間に、開業準備のため特別に支出する費用だ、ということがわかります。

イメージを理解したところで、具体的に見ていくことにします。

「開業費になるモノ」の具体例

たとえば開業費とは、について。具体例を挙げてみましょう。さきほど見た通り、事業開始前(開業前)の支払であることが前提です。

  • 電気・ガス・水道料金などの光熱費
  • 文具、名刺、印鑑、その他備品代
  • 事務所や店舗の家賃
  • 市場調査にための費用
  • 書籍購入費用
  • セミナー・交流会などの参加費用
  • チラシ作成、WEBページ制作などの広告宣伝費用
  • 取引見込先などへの手土産代、接待費用
  • 打合せのための飲食代、喫茶代
  • 電車代、バス代、ガソリン代、時間貸し駐車代、カーシェア利用料
  • 従業員の採用費用、給料 など
もちろん、事業(仕事)に関係のあるものに限ります!

「開業費にならないモノ」の具体例

いっぽうで開業費にならないものは、次のとおり。

  • 1単位で10万円以上の備品類(いわゆる固定資産)
  • 商品の仕入代金
  • 事務所や店舗を借りる際の敷金、保証金、礼金
  • 固定資産の購入にともなう借入金利息 など

いちばんのポイントは「固定資産」です。お値段高めのパソコンやプリンタなど、1単位で10万円以上の備品類は、「固定資産」になり「開業費」にはできません。

固定資産に分類されると。固定資産ごとに定められた年数(耐用年数、と言います)に応じて、その年数にわたり、分割して経費にしていきます。

この、分割して経費にするというルールは、会計・経理の世界では「減価償却」と呼ばれています。耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。

いずれにしても、「固定資産は開業費にならないのだな」ということを覚えておきましょう。

もっと知りたい人のための補足

  • 「商品の仕入代金」は、開業費ではありませんが、「仕入」としてフツーに開業年の経費になります。
  • 「敷金、保証金」は、債権として「資産」に計上されます。経費にはなりません。「礼金」は「資産」として扱われ、金額や契約期間等に応じて、一定の年数で経費にしていきます。
  • 「固定資産の購入にともなう借入金利息」は、その固定資産の本体価格に加算されます。そのあとは減価償却です。

「事業を開始するまで」とはいつから?

冒頭、「開業費とは」で見た通り。開業費は「事業を開始するまで」の支出。つまり、「開業日より前」の支出です。「いつから開業日までか」について、法律条文では明らかにされていません。

よって、「開業日前、開業準備のため」の支払いであれば、本来的にはその支払時期を気にするものでもない、ということです。

が。一般には「開業日以前1年未満程度」と解されています。開業日の2年も前、3年も前など、支払いが昔であればあるほど。「開業準備のため」にあたるものなのかを問われることになります。

 

開業費の経理方法

続いて。開業費として分類したものを、どのように経理すればよいかについて。

「資産」に計上、「経費」にあらず

「開業費」はその名に「費(コスト)」を冠しながらも、なんと経費ではありません。資産です。「開業費」という名の資産です。

「えぇっ!?経費じゃないの?」と驚くかもしれませんが、落ち着いて。ここからが大事ですから。

資産と経費の違いをカンタンに言うと…

  • 経費は、利益の額に影響します。売上-経費=利益
  • 資産は、上記の利益の計算には影響しません。負債と対比されるものとして、財産の一部を形成するものです

その後、「経費」になる

「開業費」は資産です、と言いましたが。結果的には、経費になります。しかも、いつでも、いくらでも経費になります。

「なんじゃ、そりゃ!?」と、ふたたび驚くことになりますが。だから、まぁ落ち着いて。

たとえば、開業前の支払いを分類した結果、開業費の合計額が50万円になった場合。この50万円はいったん「資産」になります。

その後、あなたの気のおもむくままに。50万円を限度に「経費」に振り替えることができるのです。振り替えるタイミングは自由。今年でも、来年でも。はたまた10年後でも。

いったいいつ経費にすればいいか、のタイミングについては後述します。

「開業費償却」という経費

開業費を経費に振り替える際には、「開業費償却」という勘定科目を使います。勘定科目とは、経費を分類する名称です。「交際費」とか「交通費」とか、そういった名称が勘定科目。

資産に計上していた開業費を経費にするぞ、というタイミングで。資産である「開業費」の金額を削り、その分、「開業費償却」として経費に振替計上するのです。

経費は経費

開業費償却だろうと交際費だろうと経費は経費です。

たとえば、「取引見込先などへの手土産代」について。勘定科目が開業費償却だろうと交際費だろうと、最終的に計算される利益の額が変わるわけではありません。

少し乱暴な言い方をすれば。開業年の経費にしようとする限り、勘定科目を必要以上に気にすることない。ということになります。

開業費の範囲とか、資産から経費への振り替えとかようわからん、という場合でも。「交際費」とか「交通費」とか、フツーの勘定科目で処理しても「大きな問題」はないのです。

問題があるとすれば、開業費を「開業年以外の年」の経費にしたいと考える場合です。この場合は、次項に注目。

 

開業費のオトクな扱い方

開業費はいつでも、いくらでも経費にできる。では、いつ経費にしたらいいのか?「開業年以外の年」の経費にする場合の考え方を見ていきます。

所得が高いほど、税率は高くなる

突然ですが。日本の所得税は、基本的に所得(利益など)が多い人ほど税金が高くなるしくみになっています。所得が多い人ほど、税率も上がっていきます参考:国税庁WEBサイト)。

ということは。開業費をいつでも経費にできるというのなら。

所得が少ないよりは多い年に、税率が低いよりは高い年に。開業費を経費にする方が、その効果はより高くなる。税金を減らす効果は大きくなる、ということです。

税金を減らす効果とは?

たとえば、開業年は所得が少なく、税率は10%でした。開業翌年は所得が伸びて、税率は30%でした。開業費50万円を経費にするなら、あなたならどうしますか? 計算してみましょう。

  • 開業年に開業費50万円を経費にする→税金が5万円減る(50万円×10%)
  • 開業翌年に開業費50万円を経費にする→税金が15万円減る(50万円×30%)

同じ50万円の開業費で、税金10万円の差が出ました。ちなみに、開業費は一度で全額経費にすることも、分割して経費にすることも可能です。今年10万円、来年40万円とか。

ゆえに、開業費をオトクに使うには、経費化(経費にすること)タイミングが重要になります。

事実は例題よりも奇なり

現実は例題ほどカンタンではありません。明日もわからないわたしたちに、1年先、2年先のことを知る術もなく。ましてや、5年先や10年先のことなど知りうるわけがない。

それでも未来を思い、開業費を計上するところに、あなたの覚悟が現れます。開業費の計上とその経費化は、あなたの意思と行動の覚悟を示すもの、とも言えそうです。

 

まとめ

フリーランス・個人事業主の「開業前の支払」について見てきました。

ひとことで経費と言っても。「開業費償却」は同じ経費でも、他の経費とは性格を異にする経費です。「開業費償却」のもとになる「開業費」に出会うのも、開業年の1年限り。

開業年にあたる場合には、そんな「開業費」について学んでおくとよいでしょう。将来、節税効果を発揮して、我が身を助けてくれるかもしれません。

 

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