狭い狭い税理士業界のハナシではありますが、税理士事務所の人材論について。
税理士事務所に多い人材とは?税理士事務所にとって貴重な人材とは?
税理士事務所の人材を型分けする
独立開業するまで18年間、3つの税理士事務所に勤務してきました。その間に、出会った他の税理士事務所の方々も含めて。
税理士事務所に多い人材、貴重な人材など。わたしの独断と偏見ではありますが「税理士事務所の人材論」を考えます。
税理士事務所の管理職
多くの組織と同じように、税理士事務所にも「管理職」というポジションが存在します。
それは入社したばかりの新入社員からみれば、将来の姿であり、目指すべき姿。で、あってほしいもの。
そんな税理士事務所の管理職をタイプ別に分類するとこんな感じでしょうか。
「管理職への入り口」は図の左下からと考えます。新人から成長を経て「管理職フィールド」に参入します。
その「管理職フィールド」は、縦軸の「スペシャリスト-ゼネラリスト軸」と横軸の「マネージャー-プレーヤー軸」の2軸で区分されています。
わたしの理論ですので、わたしなりに2軸の言葉を定義します。
スペシャリスト | 特定の分野に対する入れ込みが強いタイプ。主に税務・会計分野の知識・能力に長ける |
ゼネラリスト | 幅広い分野の理解に努めるタイプ。たとえば経営学や人間学などにも理解の幅を広げる |
マネージャー | 自分が動きよりもチーム(メンバー)の動きを重視するタイプ。いわゆるマネジメントできる人 |
プレーヤー | 自分の動きにウエイトがあるタイプ。本人が意図している場合と結果的にそうなってしまっている場合とがある |
2軸の言葉を定義した結果、極端ではありますが管理職は「4分類」に型分けされます。
完全型 | 管理職の最終形態。まさにアイム・ア・パーフェクトヒューマンです |
リーダー型 | 税務などの自実務能力よりもマネジメントに重きを置き、チームの成果を目指します |
職人型 | 道を極めんとする実務没頭で、悪気なくマネジメントは二の次です |
プレイングマネージャー型 | あぁ悲しき中間管理職。いつも何かに追われています |
リーダー不在の税理士事務所
言うまでもなく、「完全型」が理想ですが、このタイプはそう居るものではありません。
税理士事務所の経営者といえど、「完全型」とは限りません。完璧な人は世の中に多くないので、現実的にはその他の3つの型に分かれます。
税理士業界で多いなぁ、と感じるのは「職人型」です。「税理士」なのですから当たり前ですが、「税の道」をとことん行こうとする方は多い。
「税」は専門家として重要なことではありますが、管理の場面にまで「職人気質」を持ち込みだすと問題といえます。なぜか?
「税ができないヤツ=ダメなヤツ」というマネジメントになるからです。税理士の能力は「税」だけ求められるわけではありません。「税」は一部です。
次に多いのは、残念ながら(と言うべきでしょう)「プレイングマネージャー型」です。
たぶん。税理士業界の「労働集約産業体質」が影響しているのでしょう。人がいなければ業務が成り立たず、その「人」が不足しているのです。
管理職もまた「人」として直接業務にあたらなければ立ち行かない、そういう仕事のしかたが多いことを示しているように感じます。
組織の中の管理職に「プレイングマネージャー型」が少ないというのであれば、それは僥倖と言えるかもしれません。
さいごが、数少ない「リーダー型」です。これからの税理士事務所に居てほしい人材、最後の希望。
さきに述べた「労働集約産業」という旧体質を脱却し、税理士業界を変えるにはリーダーが必要です。
「個」を重視する旧態依然のやり方に埋没することなく、組織の全体最適を念頭に行動できる。道を示し、道の先をいくリーダーの希少性は税理士事務所に限った話ではありません。
ただ。税理士試験や顧客担当制という税理士業界の在り方が「個人」偏重的であり、よりその希少性を高めているところがあります。
税理士事務所が探すべき人材
「管理職フィールド」を見ながら、税理士事務所の人材の偏りをみてきました。そこでは「リーダー型」が少ないというお話をしました。
これまでの税理士業界の成長を支えた「顧問料」というビジネスモデル。ですが、そのビジネスモデルは崩壊しつつあると言われています。
税理士の専門分野として「税」が必要なのは当然として。そのうえで次世代の税理士事務所を考える、広い視野と強い行動力を持つリーダーの存在が必要です。
組織としての税理士事務所は「リーダー型」の管理職をどう育成するかが重要だといえるでしょう。
採用を見極める、もうひとつの軸
さいごに、採用という面も踏まえて、人材について考えてみます。
わたしも勤め人時代は、管理職というポジションで「採用」にかかわってきました。その中で一番重要だと感じていたことを「軸」に加えます。
さきほどまでの「2次元」から「3次元」への転換です。第3のZ軸として「プロフェッショナル-アマチュア軸」を追加します。
また言葉を定義してみます。
プロフェッショナル | 顧客にとっての価値を考えることができる。「価値」提供で仕事をする |
アマチュア | 自分にとっての価値で考える。「作業」提供で仕事をする |
「プロフェッショナル」は、一般に言う「お金をもらっている(職業上)」というようなことではありません。
その定義であれば、仕事をしている人は皆「プロフェッショナル」です。ここでの定義は仕事をしていても「プロフェッショナル」ではない人がいるという前提です。
採用面接では「なりたい税理士像」についてよく聞いていました。少なくない人が「自分のスキルを上げて」ああだこうだ、という話をされます。
かくいうわたしも、その昔はそう言っていました。税理士試験の名残という影響は大きいでしょう。
スキルを上げること自体はだいじなことです。ですが、その出所は「顧客にとっての価値」のほうが望ましいといまは考えています。
極論ではありますが、「顧客にとっての価値」がないスキルを上げても、結局のところそれは自己満足にすぎません。
自己満足で仕事をしていると、「作業」提供が仕事になります。それが過ぎると、作業で値付けをするようになります。
作業で値付けされた商品やサービスは価格競争に陥ります。結果、顧問料のビジネスモデルから脱却できません。
業界や事務所の体質改善を考えるなら、リーダー人材に加え、「プロフェッショナル軸」の強い人材を見つける必要があります。
繰り返しになりますが、税理士業界に身を置く人には「個人」「作業」に偏る傾向がある。
そのことをゆめゆめ忘れぬように、と自分自身に言い聞かせています。個人偏重、作業偏重ではいけません。
************
きょうの執筆後記
************
昨日は終日所内。顧問先の決算作業その他もろもろ。
きょうは税理士事務所の人材論についてお話ししました。
ちなみに、わたしの管理職時代は「リーダー型」と「プレイングマネージャー型」の間くらい。そう信じています。
はたから見ると「プレイングマネージャー型」だったかもしれませんが・・・(汗)