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言ってはいけない!「解雇」のひと言が会社を潰す

解雇と言ってはいけない

どうにもアイツにはガマンならん。解雇だ、解雇!

と思いはしても。口に出してはいけません。
収まらない気持ちはありますが。そのひと言がのちのちに火種を残します。

時に火種は、大きな炎となって会社を襲うかも・・・失うお金、時間、そして心労。気づいたときには後の祭りというものです。

目次

会社のために。「解雇」の言葉を口にしない

まずはじめに。これだけは覚えておきましょう。

” 解雇をめぐり争えば、会社は負ける ”

もちろん、負けない「場合」もありますが。それは非常に限られたケースであることを理解しておく必要があります。多くの場合、「解雇を口にした側」が負けるのです。

「解雇」の言葉でほんとうに会社は潰れるのか?

さて。会社を潰すだなんて大げさだ、と思われるでしょうか。決してそんなことはありません。

辞めさせた社員から、解雇撤回・損害賠償の求めを起こされたら。

不毛とも言える交渉のための時間。それに伴う心理的ストレス。なにより、争いに負ければ多額の損害賠償金が待っています。

もし、裁判訴訟となり「不当解雇」として敗訴した場合。「解雇以後、敗訴が決まるまで」の期間の賃金を請求されることになります。解雇後も雇用契約は続いている、ということになるからです。

労働事件の第一審での平均審理期間は14.3月(最高裁判所:裁判所データブック2015)。対象が月給50万円の社員であれば、その期間にかかる賃金は700万円です。

その後も第二審へ、と言うことになれば経過する期間分さらに金額は膨らみます。小規模の会社であれば、死活問題になる金額と言えるでしょう。

潰れず済んでも、ノーダメージは免れない

そうは言うけど「勝てばいいんだろ」とはいきません。冒頭お話しした通り、会社はそう簡単に勝つことができないのです。

社員に解雇を言い渡すとき。会社は「労働契約法 第16条」を無視することができないからです。引用します。

(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

労働契約法 第16条

会社にとって、この法律がきわめて高い壁として存在します。

対象社員による「横領事件や多額の損害」があるような場合であれば、「客観的に合理的な理由」であるとわかりやすい。社員が明らかに悪い、クロです、と言えます。いわゆる「懲戒解雇」です。

ところが多くの場合は「グレー」です。勤務の成績が悪いから、勤務の態度が悪いから。そういったことで「客観的に合理的な理由」を押し切ることはムズカシイ。なぜか?

” 対象社員が解雇にならずに済むよう、会社はどれだけ努力をしたんですか ”

を問われるからです。会社としては、アイツが悪いでは済まないわけです。

こうなると。懲戒解雇のように「100%アイツが悪い」ではなくなります。アイツも悪いかもしれないが、会社も悪いかもしれないね、と。

結果、会社が金銭的にノーダメージで乗り切ることは難しくなります。話を終わらせるための「手切れ金」・・・敗訴ほどの金額ではないにせよ、3ケタ万円程度の数字は想定することになるでしょう。

退職届

解雇をめぐり、会社がとるべき3つの行動

分が悪いのは会社だと理解したところで。「解雇」について、会社がとるべき3つの行動をお話しします。

  1.  「解雇」と言わない
  2.  それでも言うなら、証拠固めを
  3.  訴えられたらすぐ動く

「解雇」と言わない

とにかく、会社側は「解雇」とは言わないことです。絶対に言わない、くらいに考えましょう。言いたい気持ちはわかりますが、その後のダメージを思い浮かべ、そして我慢。

じゃあどうすんだ?ということですが、「相談」です。

社員本人の意思で納得して退職を選択できるまで、対象社員と話し合いを重ねます。きちんと「納得」してもらうためには、プラスアルファも必要かもしれません。

たとえば、退職金の上乗せ。有給休暇を付与して、その間の転職活動を認めるなど。

「こういったプラスアルファの事実のうえで、社員本人が退職に納得した」というストーリーがあれば、会社を守る要素として働きます。

のちのち対象社員が争いを起こそうにも、「わたしは無理やり退職を迫られた」とは主張しづらくなるでしょう。もちろん、意思表示としての退職届を受け取ることも忘れないように!

それでも言うなら、証拠固めを

さきほど、労働契約法 第16条のお話をしました。「解雇」を口にするのであれば、「客観的に合理的な理由」を備えなければいけません。

会社が考える「理由」に対して、しっかり「証拠」を準備しましょう。アイツにはなんども言って聞かせたんだ、なんてことが証拠にならないことは明らかです。口頭ではなく、形に残るもので。

始末書などの紙面、メールでのやり取りなど。証拠として提出できるものを、時系列で整えます。その際には「理由の発生」に加えて、会社側による「改善の努力」もわかるようにしておきましょう。

「アイツも悪いけど会社も悪いよね」と言われた場合には、その努力の度合いで、会社が受けるダメージの度合いも変わります。「解雇」に関して、面倒がってはいけません。

訴えられたらすぐ動く

万策尽くしたものの、訴えられてしまったら。ところで。ヘンな言い方ですが、訴えられ方にはいろいろあります。

  • 対象社員が弁護士を代理人にして内容証明郵便を送ってくる
  • 裁判所から労働審判申立書・呼出状が届く
  • 裁判所から訴状が届く
  • 労働基準監督署などから調査の連絡がくる
  • 対象社員が駆け込んだ外部労働組合などから団体交渉申入書が届く など

それぞれについての詳細は省略しますが、総じて大事なこと。それは、訴えられたことが分かった時点で、とにかく「すぐに動く」ことです。

具体的には、弁護士などの専門家に相談をすることがベストです。すぐに動くとはいっても、よくわからないままに請求に動くことは得策ではありません。

上記のそれぞれの訴えについて、対応には特徴やコツがあります。専門家に判断を仰ぎながら対応することを強くおすすめします。

とくに「労働審判申立」については、初回の労働審判期日が申立から40日以内と非常に短くなっています。

審判日前に、答弁書を提出しなければならないなどのスケージュールを考えると、申立書が届いてからのんびりしている時間はありません。申立書が届いてしまったら躊躇せずに動きましょう。

 

まとめ

解雇をめぐる労務トラブルについてお話ししました。「解雇」について会社側は、慎重にしてし過ぎるということはありません。

まずは、たかぶる感情をひとまず抑えて、どれだけ冷静になれるかどうかです。

「解雇」を口にするその前に。その後に訪れるかもしれない「厳しい戦い」を忘れないようにしましょう。

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  きょうの執筆後記
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そもそも同じ方を向いて出会った社員をやめさせるのだとすれば。それは会社にとって、社長にとって「苦渋の決断」でもあるはずです。
怒りの感情は押さえなくてはなりませんが、そんな「苦渋の思い」こそ十分に伝える、十分に伝わることを願ってやみません。
甘いことを言うようですが、少しでも「解雇」による物別れがなくなることを祈るばかりです。

解雇と言ってはいけない

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