預金500万円・借入500万円の会社 vs 預金5,000万円・借入5,000万円の会社

預金500万円・借入500万円の会社 vs 預金5,000万円・借入5,000万円の会社

預金500万円・借入500万円の会社と、預金5,000万円・借入5,000万円の会社と。あえて、勝ち・負けをつけるのであれば、どちらを勝ちと考えるのか。その理由もふまえてお話をします。

目次

あえて、勝ち・負けをつけるのであれば

唐突ではありますが、以下2つの会社を比較してみましょう↓

  • 預金500万円・借入500万円の会社
  • 預金5,000万円・借入5,000万円の会社

もっとほかにもいろいろ情報が必要だろう、とおもわれたかもしれませんが。限られた情報のなかで判断することもときには必要なことです。そのうえで、2つの会社を比較してどう考えるか。

あえて、「勝ち・負け」をつけるのであれば、わたしは「預金5,000万円・借入5,000万円の会社」のほうを勝ちとします。もちろん、いろいろな見方があるのも承知のうえです。

それでもわたしが、預金5,000万円・借入5,000万円の会社を勝ちとする理由を、お話してみます。わたしの「勝ち」には反対の人もいるでしょうし、賛成であっても理由まで同じかどうかはわかりません。

というわけで、預金5,000万円・借入5,000万円の会社が勝ちの理由について、確認をしていただければとおもいます。具体的には、次のとおりです↓

預金5,000万円・借入5,000万円の会社が勝ちの理由
  • 資金がより潤沢
  • 主導権がこちら
  • より信用がある

それではこのあと、それぞれの理由を解説していきます。

預金5,000万円・借入5,000万円の会社が勝ちの理由

資金がより潤沢

預金500万円・借入500万円の会社をA社、預金5,000万円・借入5,000万円の会社をB社とします。A社に比べて、B社のほうが預金が多く、資金がより潤沢だという点でB社は優位です。

極論、会社はおカネがなくなればつぶれてしまいます。そういう意味では、資金が何より重要であることは間違いありません。では、預金500万円のA社と、預金5,000万円のB社のどちらが安全か?というハナシをしています。

たとえば、A社もB社も、月に500万円の固定費(借入金の返済も含めて)が必要だとして。新型コロナや大地震のような不測の事態によって、売上がゼロになってしまったらどうでしょう。

A社は1か月しかもちませんが、B社であれば10か月もちます。社長であれば、日ごろ、どちらの会社のほうが安心かはいうまでもありません。

でもさぁ、B社は借入5,000万円に対して利息を払わなければいけないんでしょ?A社だったら、借入500万円に対する利息だけですむなら、そっちのほうがいいのでは?と、おもわれるでしょうか。

では、仮に借入金利が2%だとして。A社の年間利息は約10万円です(500万円×2%)。いっぽうで、B社の年間利息は100万円です(5,000万円×2%)。両者の差は、年間で90万円であり、ひと月あたりにすると7.5万円になります。

たしかに、B社の利息負担は、A社に比べれば大きなものです。とはいえ、預金で見れば、B社はA社よりも多く所有しています。その額は、実に4,500万円。

中小企業にとって、手元に4,500万円のおカネがあるかないかは「大きな差」だといえるでしょう。では、その4,500万円のおカネを持つにあたって、ひと月あたり7.5万円の利息をどう考えるか。

いざというとき(不測の事態)に備えるということであれば、保険のようなものであり、そちらを選ぶという選択もありうるはずです。

ところが、いざというときに対する想像力が不足するあまり、「いまは大丈夫」と、年間利息が少ない(預金も少ない)ほうを選択する社長がいます。資金の重要性をいまいちど再考しましょう。

主導権がこちら

いましがた、資金が潤沢だからB社の勝ちだといいました。これに対して、「いやいや、おカネが必要になったら借りればいいでしょう」と、おもわれたかもしれません。

たしかに、そのほうが利息負担も小さくてすみますし、理屈としてはそのとおりです。ところが、理屈どおりにはいかないのが現実でもあります。どういうことかというと…

必要になったら借りるといいますが、借りたいときに借りられないのが銀行融資なのです。もしも、業績が悪化している会社が融資を受けようと、銀行に相談をしたらどうなるか。

銀行としては、「貸したおカネを返してもらえるのか?(いや、難しそうだ)」と不安になるため、会社が借りたくても借りられないことが多くなります。

いわれてみれば当然のことなのですが、「自社の都合(利息がもったいない)」を優先しすぎる社長は、「貸すか否かの主導権は銀行にある」ことを忘れてしまうのです。だから、「おカネが必要になったら借りればいい」などという、理屈(机上の空論)を持ち出すことになります。

いっぽうで、自社の業績が良いときであれば、銀行のほうから「借りませんか?(ぜひ借りてほしい)」と持ちかけてくることさえあるものです。この違いを理解しておきましょう。

すると、会社はできるだけ利益を出したほうがよいこと(節税はほどほどに)、利益が出ているときには、積極的に融資の申込みをしたほうがよいことに気がつくはずです。目先の利息負担を惜しんでいる場合ではありません。

もう、ウチの会社は未来永劫、銀行から借入する必要などない!と、いえるのであれば、それもよいでしょう。ですが、そんなことをいえるような中小企業はほとんどないはずであり、「いつか借りるかもしれない」という会社がほとんどであるはずです。

だとしたら、「貸すか否かの主導権は銀行にある」ことを忘れないようにしましょう。

これに対して、B社のような状況であれば、主導権はこちらにあるともいえます。なぜなら、本当に借入が必要なければ(将来にわたり、借入が必要ないほど資金が潤沢ならば)、繰り上げ返済することができるからです。

つまり、A社の状態からB社の状態になるには「銀行しだい」であり、銀行に主導権があるのに対して、B社の状態からA社の状態になるには「自社しだい」であり、自社に主導権があります。

ちなみに、借入が多いと自己資本比率が悪くなる・資本効率が悪くなるから、繰り上げ返済をしたほうがいい、というアドバイスを見かけることもありますが。それは、いつでも資金調達ができる大企業・優良企業のハナシです。

中小企業にとって、自己資本比率や資本効率は二の次、三の次。まず大事なものはおカネであることは前述しました。そのおカネを減らしてまで、繰り上げ返済をしている場合ではないともいえます。

より信用がある

B社が勝ちである理由は、まだあります。A社に比べて、より信用があるという点です。

そもそも、銀行から借入をした場合に増えるのは、負債だけではありません。借入と同額の資産(預金)も増えます。ですから、借入による資産と負債の関係は行って来いです。

借入によって、貸借対照表の「純資産(資産ー負債)」の額は変わりません。そういう意味では、借入によって、財務状況は変わらないし、悪化することはないのです。

借入というと、負債ばかりが増えるイメージを持つ社長もいますが、理論的にも誤りであることを理解しておきましょう。もちろん、利息の支払い分だけ費用は増える(利益は減る)ことになりますが、潤沢な資金を活かして利益率を上げることで、やはり行って来いにできるはずです。

そのうえで、銀行は取引先の「預金」の額を見ていることを覚えておきましょう。繰り返しになりますが、中小企業にとって、まず大事なのはおカネだからです。そのおカネが少なければ、銀行は返済不能をイメージするために、融資を躊躇するようになります。

よって、預金が借入によるおカネであろうと、預金が多いほうが銀行は安心だし、預金が多い会社を銀行は信用するものです。

それに、借入が多いこともまた、銀行に対しては信用になります。なぜなら、借入が多いということは、それだけの借入ができるだけの信用があることにほかならないからです。

会社が借入を望んだとしても、銀行は際限なく融資できるわけではありません。会社の規模や状況を見て、どこかでストップがかかります。たとえば、年間売上高1億円の会社が、1億円借りられることはあっても、10億円を借りられることはありません。

そんなことをすれば、それこそ利息負担で会社がつぶれてしまいます。だから、銀行の融資にはどこかでストップがかかるし、そこがその会社の信用の上限です。

以上をふまえて、「借入が多いほど信用が大きな会社だ、信用できる会社だ」との見方が銀行にはあります。すると、A社に比べてB社のほうが銀行からの支援が受けやすく、協力がえやすいことはB社にとっての強みです。

まとめ

預金500万円・借入500万円の会社と、預金5,000万円・借入5,000万円の会社と。あえて、勝ち・負けをつけるのであれば、どちらを勝ちと考えるのか。その理由もふまえてお話をしました。

預金と借入という、たった2つの情報のみで比較をするなど乱暴だ!との意見は承知のうえです。

実際には、預金500万円・借入500万円の会社が選ばれがちであり、選ぶにあたって見落とされがちであることから、注意喚起としてお話をさせていただきました。ご参考になれば幸いです。

預金5,000万円・借入5,000万円の会社が勝ちの理由
  • 資金がより潤沢
  • 主導権がこちら
  • より信用がある
預金500万円・借入500万円の会社 vs 預金5,000万円・借入5,000万円の会社

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