事業を続けていれば、赤字になることもあるでしょう。では、「今期は赤字」と決まったら?すべき銀行対応がありますよ、というお話をしていきます。
事業は山あり谷あり
会社が赤字になれば、銀行融資が受けにくくなるのはご存知のことでしょう。ですから、まずは赤字を避けるべきであり、黒字を目指すことになります。
とはいえ、事業は山あり谷あり。ときには、赤字を免れない場面もあるに違いありません。では、「今期は赤字」と決まったらどうするか?
そのときには、採るべき銀行対応があります。具体的には次のとおりです↓
- 特別損失へ振り替え
- もっと赤字にする
- いまのうちに借りる
このあと、順番に解説していきます。
今期は赤字と決まったらすべき銀行対応
特別損失へ振り替え
最終利益が同じ赤字であったとしても、営業利益や経常利益は黒字というケースもあれば、営業利益や経常利益も赤字だというケースがあります。
銀行の見方としては、前者(最終利益は赤字、営業利益や経常利益は黒字)のほうが、評価は上だということはわかるでしょう。どの利益であれ、赤字より黒字がいいに決まっています。
ところが、本当は営業利益や経常利益は黒字なのに、経理処理のせいで赤字になっているケースはあるものです。たとえば、社員の退職金を「販売費および一般管理費」にしているとか。
中小企業においては、退職金を支給する頻度は高くなく、支給するとなれば金額的なインパクトもありますから、経常的な費用である「販売費および一般管理費」よりも、「特別損失」とするほうが、より実態をあらわしているといえます。
この点、社員の退職金を「販売費および一般管理費」から、「特別損失」に振り返ることで、営業利益や経常利益が、赤字から黒字に転じることはあるでしょう。
同じように、毎年は発生せず金額が大きな修繕費や人材採用費(人材紹介料)、不良在庫の廃棄損(売上原価に含めているケースに注意)など、特別損失にすべきところをしていないケースがありえます。
そこは、税理士任せにせず、社長も確認するようにしましょう。特別損失にしようがしまいが最終利益は変わらず、納税額も変わらないことから、特別損失への振り替えを検討していない(銀行融資の視点がない)税理士もいます。
もっと赤字にする
今期は赤字だとわかったら、もっと赤字にすることも考えましょう。ここでいう「もっと赤字」とは、翌期に売上を先送りしたり、翌期の費用を先取りしたり、ということです。
もちろん、会計処理として許される範囲であり、たとえば、本当は今期の売上とすべきところ(すでに納品もおわっている)、帳簿上は翌期の売上にする、といったことは認められません。
よって、売上であれば、取引自体を翌期に先送りできるかどうかを検討することになります。では、翌期の費用を先取りするとは、具体的にどういうことか?
たとえば、特別償却費を計上することが考えられます。これにより、翌期の減価償却費が少なくなるため、翌期の費用を先取りしたことになります。30万円未満の資産を、耐用年数で減価償却せずに即時全額償却するのも同じようなものです。
また、不良在庫があれば、今期のうちに売却することで、売却損を計上できます。やはり、翌期以降の費用(損失)を先取りできるため、もっと赤字になります。
しかし、もっと赤字にする意図は何なのか?
翌期の利益を増やすためです。翌期に売上を先送りしたり、翌期の費用を先取りしたりすることで、その分だけ翌期の利益は増えます。結果として、黒字になる可能性が高まるのが狙いです。
逆に、今期、もっと赤字にすることがなければ、翌期、黒字になる可能性は低くなります。実際、翌期も赤字になると「2期連続赤字」となり、銀行融資が受けにくくなるのが問題です。
なので、それを避けるために、今期はもっと赤字にすることで、「赤字からの黒字転換」というシナリオを目指すことになります。実現すれば、翌期は銀行からの評価が高まります。
いまのうちに借りる
もっと赤字にすることで、翌期は銀行からの評価が高まるといいました。よって、翌期の決算後であれば、融資が受けやすくなるでしょう。
ところが、それまでのあいだは、今期の「もっと赤字」がありますから、融資が受けにくくなります。だとすれば、今期の「もっと赤字」が確定する前に、いまのうちに借りておくことです。
つまり、今期の決算書ができる前に、借りられるだけ借りておくということになります。今期の決算書ができる前であれば、基本的には、前期の決算書が銀行評価のベースです。
ただし、前期の決算から時間がたつほど、試算表の提示を求められますし、試算表の内容が悪ければ、銀行からは「(融資の検討は)次の決算を見てから」といわれてしまいます。
ですから、できるだけ早く融資の相談ができるようにしましょう。そのためには、できるだけ早く、決算予測をすることです。これができていない会社が少なくありません。
すると、決算間際になって、ようやく赤字が判明するので、いまさら融資の相談をしても、銀行からは「決算書ができてから」といわれてしまうのです。
そうはならないように、毎月の月次決算の段階で、つど、決算予測ができるようにしましょう。そのうえで、今期の赤字が避けられそうもないとわかったら、すぐに融資の相談に動きます。
じゅうぶんに融資を受けることができれば、翌期のあいだは融資が受けられずとも、資金繰りの心配をすることもなくなるはずです。
まとめ
事業を続けていれば、赤字になることもあるでしょう。では、「今期は赤字」と決まったら?すべき銀行対応がありますよ、というお話をしました。
意外と、すべき対応ができていない会社はあるものです。結果、のちの資金繰りが厳しくなりますから、本記事の内容を理解して、確実に対応していきましょう。
- 特別損失へ振り替え
- もっと赤字にする
- いまのうちに借りる