資金繰りをよりよくする秘訣は、「返したら借りる」ことです。銀行借入をし続ける、と言い換えることもできます。でもなんで?という理由について、お話をしていきます。
せっかく借入が少なくなったのに
会社の銀行借入について、資金繰りをよりよくする秘訣として、「返したら借りる」が挙げられます。文字どおり、「返済をしたら、また借入しましょう」ということです。
いやいや、せっかく返済して借入が少なくなったのに。また、借りるなんてダメでしょう。借入が少ないほうが財務指標だってよくなるはずだし。
と、おもわれるのであれば、このあとのお話を確認しておきましょう。知らずにいると、せっかく借入が減っても、資金繰りが悪くなってしまう。なぜ、そんなことが…?と、なってしまいます。
繰り返しですが、「返したら借りる」のが、資金繰りをよりよくする銀行借入の秘訣です。
返し続ければ預金が減る
まずは、あたりまえのお話から。借りたおカネを返し続ければ、おカネは減ります。たとえば、600万円を返済期間60か月で借りたら、毎月10万円ずつおカネが減っていく、ということです。
借入当初は、手元に600万円のおカネがあっても、返済するたびに10万円ずつ減っていきます。その分、資金繰りが厳しくなることはわかるでしょう。
その600万円が、経常運転資金(売掛金+棚卸資産ー買掛金)分の借入である場合、事業の状況に変化がなければ、ずっと必要になるおカネです。
にもかかわらず、毎月返済を続けていれば、手元のおカネは600万円よりも少なくなることから、資金繰りは悪くなっていきます。だとすれば、「返したら借りる」ことです。
と、いわれれば、あたりまえの話ではありますが、実際には、そのあたりまえができずに資金繰りを悪くしている会社が少なくありません。返し続けたままになっている、ということです。
したがって、経常運転資金分の融資は、返したら借りることを忘れないようにしましょう。もともと借りていた金額まで借り直すことを、「折り返し融資」などと呼びます。
銀行としては、いちど貸した実績があるため、貸しやすい融資ではあるものの、融資先の業績が悪くなれば、貸しにくくなるものです。なので、業績が悪くなる前に、折り返し融資を受けましょう。
ところが、業績が良いときには「借りる必要はない」との考えから、折り返し融資を怠り、資金繰りが悪くなってから苦労する…というケースが見られるので注意が必要です。
返し続ければ銀行から嫌われる
借入したおカネを返し続けていれば、借入が減る。銀行は、貸したおカネを回収できるのだから、喜んでくれるだろう。銀行からは好かれるだろう、というのはちょっと違います。
たしかに、回収できるのは喜ばしいことですが、回収しているだけでは銀行も儲かりません。回収した分だけ借入が減れば、利息収入も少なくなるからです。
そこで、「回収した分は、また貸したい」と、銀行は考えます。にもかかわらず、会社のほうは返すいっぽうで借りない、となればどうでしょう?
銀行からすれば、「よいお客さま」とはいえません。ましてや、繰り上げ返済をするような会社は、嫌われることになります。当初の約束よりも早く返されてしまえば、その分、利息収入は減るし、融資残高も減ってしまうからです。
以上をふまえて、銀行は「約束どおりに、きちんと返済してくれる会社」を好みます。そういう会社には、どんどん貸して、利息も融資残高も伸ばしたいのです。
なので、返してばかりの会社が、銀行から好まれることはありません。返したら借りる、すると、銀行から好まれ、いっそう借りやすくなる。ひいては、資金繰りがよくなります。
ただ借りられるだけではなく、銀行から好まれれば、融資条件がよくなるのもメリットです。金利を引き下げられたり、担保や保証をなしにできたり。会社にとっては、望ましい条件でしょう。
ちなみに、返してばかりいると、それを見た他の銀行からも嫌われることがあります。
他の銀行から見れば、借入残高が減っているのは「借入できない(銀行が貸さない)からではないのか?」ということであり、「だとすれば、ウチも貸すのをやめよう」とも考えるからです。
返したらもっと借りる
返したら借りる、といいました。さらにいえば、返したらもっと借りましょう。当初借入したよりも、もっと上乗せをして借りるということです。
当初借入した分までは借りやすい、という話はしました(折り返し融資)。これをひとつの「限界」だとすれば、その限界を引き上げるのです。
実際に、限界を引き上げることができれば、いざというときに、借入できる額も多くなることはわかるでしょう。よって、会社はできるだけ、限界を引き上げておくことが大切になります。
といっても、銀行は、限界を引き上げるのには慎重です。いうまでもなく、貸した実績がないからです。それでも、限界を超えて借りるにはどうするか?
業績がよいときや、資金繰りがよいとき(預金残高が多い)ときに借りることです。逆に、業績が悪いときや、資金繰りが悪い(預金残高が少ない)ときに、限界を引き上げる銀行はありません。
ところが、前述もしたとおり、業績がよいときや資金繰りがよいときほど、社長は「借りる必要がない」と考えるものです。結果として、限界を引き上げられないことになります。
というわけで、返したらもっと借りましょう。返した分を借り直すときには、タイミングをみはからって、返した分以上の借入を相談するようにしましょう。
まとめ
資金繰りをよりよくする秘訣は、「返したら借りる」ことです。銀行借入をし続ける、と言い換えることもできます。でもなんで?という理由について、お話をしました。
返し続けるだけにならないように、返し続けるだけで資金繰りを悪くしないように気をつけましょう。