いつも仕事をする場所までは、定期券を買っている・使っている。
そんなフリーランスの、「定期券」にまつわる仕訳・経理のFAQ(よくある質問とその回答)についてお話をしていきます。
定期券を使うフリーランスが仕訳・経理について知りたいこと
いつも仕事をする場所(シェアオフィス、コワーキングスペース、お客さま先など)まで行くのに、電車やバスの「定期券」を買っている・使っている。
そんなフリーランスからの仕訳・経理に関する「よくある質問とその回答(FAQ)」をまとめてみます。よくある質問は次のとおりです ↓
- 定期券を購入したときは?
- 定期券の区間を利用したときは?
- 他の交通手段を利用したときは?
それでは、このあと順番に回答を見ていきましょう。
フリーランスの「定期券」にまつわる仕訳・経理Q&A
《Q1》定期券を購入したときは?
定期券とひとくちに言っても、「期間」があります。1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月など。
たとえば、「期間3ヶ月、金額 30,000円」の定期券を買ったときには、毎月 10,000円ずつを経費にする。という仕訳・経理をするのが正解です。
具体的な仕訳で確認をしてみましょう ↓
期間 3ヶ月(7月1日〜9月30日)、金額 30,000円の定期券を 6月30日に購入した
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | |
6月30日 | 前払費用 | 30,000 | 普通預金 | 30,000 |
上記のとおり、購入時点では「前払費用」という「資産」の勘定科目を使います。「費用」という言葉が付いていますが、前払費用は経費ではありません。資産です。
買っただけでまだ使ってはいない。その分の購入代金を「貯金している」というようなイメージをしておきましょう。貯金は費用ではなく資産ですよね。
そのうえで。定期券を使ったとき(期間が経過したとき)に経費にする、という仕訳をします。次のとおりです ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | |
7月31日 | 旅費交通費 | 10,000 | 前払費用 | 10,000 |
8月31日 | 旅費交通費 | 10,000 | 前払費用 | 10,000 |
9月30日 | 旅費交通費 | 10,000 | 前払費用 | 10,000 |
上記のうち、まずは借方(左側)から。毎月末に 10,000円ずつ「旅費交通費」として経費にしていきます。なお、10,000円という金額は「30,000円 ÷ 3ヶ月」を計算した結果です。
定期券の金額を期間で割り算する、ということになります。
続いて貸方(右側)。購入時(6月30日)に資産としていた「前払費用」を、経費にするつど取り崩していることをあらわします。
3回(7月31日、8月31日、9月30日)で 10,000円ずつ、合計 30,000円を取り崩したことで、当初の「前払費用 30,000円」はゼロになっておしまいです。
ちなみに。厳密には1ヶ月ごとではなく1日ごとに上記の仕訳をするのがよいのではないか? との考えもあるでしょう。
けれども、多くの場合、経理の結果は「月単位」を最小としています。「月次決算をしましょう」とか、「月次試算表をつくりましょう」などと言いますよね。
ゆえに、わざわざ日単位で仕訳をしても、結果的には月単位なのですから。だったら、はじめから月単位で毎月末に仕訳をすれば事足りる、というわけです。
いっぽうで。このように「毎月末に仕訳」をせず、定期券購入時に 30,000円をまとめて経費にドーンとするとどうなるか?
経理の結果が歪みます。上記の例で言えば、6月だけ 30,000円という大きな経費(旅費交通費)が計上されることになります。定期券をまだ使ってもいないのに。
また、実際に定期券を使う7月から9月については経費ゼロです。ほんとうは 10,000円ずつの経費がかかっているはずなのに。
これではせっかく経理をしても、状況を正しく把握することができません。こんな歪みが出ないように、「前払費用」の仕訳をしましょう。
たとえば、「期間 7月16日〜10月15日、金額 30,000円」の定期券だった場合。
7月31日に経費(旅費交通費)にする金額は、「30,000円 × (16日 ÷ 92日)」で計算することになります(7月16日〜7月31日までが 16日。7月16日〜10月15日までが 92日)。
めんどいですが、「日割り」の計算です。同様に、8月31日は「30,000円 × (31日 ÷ 92日)」、9月30日は「30,000円 × (30日 ÷ 92日)」、10月31日は「30,000円 × (15日 ÷ 92日)」となります。
《Q2》定期券の区間を利用したときは?
定期券の区間を利用しつつ、別の場所に行く。ということもあるでしょう。
たとえば。自宅のあるA駅から、仕事場のあるB駅までの定期券がある場合。自宅から、B駅の先にあるC駅のお客さまのところまで行くようなケースです。
このとき(A駅からC駅にあるお客さまのところへ行くとき)に経費にできる金額はいくらでしょうか?
答えは、「B駅からC駅までの運賃分」だけ、です。
A駅から電車に乗ったとしても、B駅までは定期券があります。定期券のほうで経費にしています。そのうえ、A駅からB駅までの運賃を経費にするのでは、経費の二重計上です。
これを「メンドーだから」と二重計上していると。税務署に見つかったときには、税金を追徴されることにもなってしまいます。
定期券の区間を利用しつつ別の場所に行くときには気をつけましょう。経費にできるのは、定期券の区間外の部分だけです。
《Q3》他の交通手段を利用したときは?
定期券を持ってはいるけれど、あえて他の交通手段を利用する。ということもあるでしょう。
たとえば、自宅のあるA駅から、仕事場のあるB駅までの定期券がある場合。タクシーで自宅まで帰った、というようなケースです。
このとき、タクシーを使うことに「理由」があれば、定期券とは別にタクシー代も経費にできます。
例としては、残業をしていて終電を過ぎてしまった、とか。お客さまを接待していてお酒を飲んだ。電車はまだあるけれど、酔っているし転んでケガなどするのを避けるため、とか。
あるいは、いつもよりも荷物が多くて、電車やバスで移動するのはタイヘンだ。だからタクシーで移動する、ということもあるでしょう。
このように「理由」があるときには、定期券の区間を移動する場合でも、「(定期券とは別に)利用した交通手段」にかかった費用を経費にできます。
経費からは除外する《Q2》との違いを押さえておきましょう。
まとめ
フリーランスの「定期券」にまつわる仕訳・経理FAQについてお話をしてきました。
これらは「よくある質問」であると同時に、仕訳・経理をするときに気をつけるべきポイントでもあります。
定期券を買っている・使っている、という場合には押さえておきましょう。
- 定期券を購入したときは?
- 定期券の区間を利用したときは?
- 他の交通手段を利用したときは?