今度の確定申告、税金はどれくらいだろう?
確定申告の税金。すなわち、「所得税」はフリーランスの関心ごとのひとつでしょう。
もちろん。できるだけ節税、したいですよね。
それならば、計算のしくみは押さえておきましょう。まずは、「敵を知る」です。
所得税の計算のしくみはポイント3つ
税金の計算だなんて・・・と尻込みする気持ちはわかります。税金は高いし、嫌いだし。それに、小難しいハナシばかりだし。
ところが、フリーランスともなれば。そうも言っていられません。お金の使い方しだいで、税金の額も変わります。
節税のことも考えてお金を使うなら、「最低限」の計算のしくみは押さえておきましょう。大丈夫、恐れることなどありません!
今回お話しする「最低限」はたったの3つです。
《 所得税の計算のしくみ 3つのポイント 》
- 所得 ~税率は何にかけるの?
- 超過累進税率 ~税率は急に上がらない
- 所得控除 ~節税するなら
《ポイント1》所得 ~税率は何にかけるの?
税金は「税率」を掛け算して計算するモノ、というイメージを多くの人がもっています。ただしいイメージです。
では、何に「税率」を掛け算しますか? と尋ねると。きちんと答えられる人は意外と多くありません。
所得ってなんだ?
今回お話しする「所得税」については、「所得」が答えです。「所得」に対して「税率」を掛け算します。さらに言うと、
所得 = 収入 - 経費
税金を抑えるには、税率をかけるこの「所得」を抑えることになります。そこで、節税をするにあたりヒトは思案をします。
この収入は無かったことに・・というのは脱税になるので、多くの人は「経費」を増やすことを考えます。「税金を払うくらいなら経費を使うぞー!」というのはこのことです。
所得には種類がある
実は、所得には種類があります。しかも10種類。フリーランスの本業における「所得」のことを、所得税法では「事業所得」と言います。別に覚えなくていいです。
ここで言いたいことはひとつだけ。本業以外の所得があれば、やはり税金はかかるということです。たとえば、株を売却しました、とか。
ちなみに。株の売却についても、所得は「収入-経費」で計算します。これを本業の所得とゴッチャにするとワケがわからなくなる。ということで所得は10に分かれています。
これ以上この話をすると迷宮入りですからやめておきましょう。本業以外の所得があるときには、税理士や税務署などにいちど相談をするのが安心です。
《ポイント2》超過累進税率 ~税率は急に上がらない
続いて、税率の話です。所得との関係で言えば、次の通りです。
税金 = 所得 × 税率
ただいまの最高税率は・・・55%です
ところで、この税率。所得が多い人ほど、言い換えると、稼ぎがイイ人ほど税率が高い。これは周知の事実です。税率表で確認しておきましょう。
所得の金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
たしかに、段階的に税率が上がっていくことを確認できます。最後は45%。住民税は所得に関係なく一律10%ですから、あわせて55%。稼ぎの半分以上は税金で持っていかれます。う~ん、高いっ!
330万円超えちゃった-、と焦らないで欲しい
税率表のようなしくみを「超過累進税率」と言います。これも覚えなくていいです。それよりも大事なことは、この表の見方です。たとえば、所得が330万円の場合。
税金 = 330万円 × 10%(税率) - 97,500円(控除額) =232,500円
となります。では、所得が331万円だったらどうでしょうか?「うわっ!税率20%で税金が倍じゃん」と早とちりは禁物です。落ち着いて計算してみましょう。
税金 = 331万円 × 20%(税率) - 427,500円(控除額) =234,500円
さて、どうでしょう。倍どころか、たった2,000円しか増えていません。これが超過累進税率。税率表の「控除額」というところがミソです。
つまり。税率10%の330万円を超えてしまった「1万円」の部分だけが、税率20%になるだけ。331万円のすべてが20%になると勘違いする人が少なくありません。
「なんとしても税率を下げるんだ!」と、躍起になって経費を使ったりするのはやめておきましょう。ただのムダ遣いです。
《ポイント3》所得控除 ~節税するなら
さいごのポイントは「所得控除」です。所得控除とは? からお話していきます。
所得控除はいろいろ
「税金=所得 × 税率」という話をしましたが、厳密には少し違います。次の通りです。
税金 = (所得 - 所得控除)× 税率
ということで、「所得」からさらにマイナスできるものがある。それが「所得控除」です。「基礎控除 38万円」なんて言葉は耳にしたことがありませんか?
基礎控除は誰でもがマイナスできる所得控除として、所得から38万円をマイナスすることができます。
基礎控除を筆頭に、たくさんの所得控除が用意されています。所得控除は節税の手段としても有効です。
所得控除は漏れやすい
所得控除について、とても大事なことがあります。それは「漏れなく控除する」ということです。あたりまえと言えば、それまでですが。
あえて、言うのには理由があります。所得控除には、経費のように「お金を使った、何かをした」という感覚がないものがあります。だから漏れやすい。
たとえば、配偶者控除や扶養控除など「人に関する」所得控除。奥さんや子供などについて、一定金額の控除ができるというもの。聞いたことがありますよね。
そのことであらためてお金を使った、何かをしたという意識はないので、うっかりすると忘れます。ほんとうに。
さらに。人に関する所得控除として、障害者控除、寡婦控除などがあります。これらは、その人の状態・状況などによって控除できるというものです。やはり、漏れやすい。
税理士や税務署などに相談をしても、漏れてしまうことがあります。自分のこと、家族のことをよくわかっているのは申告をする人、その人本人です。相談をするときにも気を付けましょう。
お金を払って所得控除
人に関する所得控除とは対照的に。節税目的もあって、お金を払うことでできる所得控除があります。列挙してみます。
- 社会保険料控除(健康保険料、国民年金保険料、国民年金基金保険料)
- 医療費控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 小規模共済等掛金控除(小規模共済掛金、確定拠出年金掛金) など
健康保険料や年金保険料は、しかたなく払っているいう認識かもしれませんが節税効果も期待できます。滞納していると控除はできません。
特に年金保険料については、「老後に向けた貯金」だと考えれば、貯金しながら節税もできるというお得感。銀行にお金を預けても節税はできませんから。
将来、年金はもらえるのかね? という不安はありますが。そもそも払うべきものでもあります。節税も考えて、しっかり支払うことにしましょう。
おなじような考え方で言えば、国民年金の上乗せである「国民年金基金」や、退職金の意味合いがある「小規模共済」や「確定拠出根金」も節税にはおすすめです。
節税できる分を「利回り」だと考えると、これらは「かなり運用の良い商品」だという考え方もあります。
注意すべきは、銀行預金のように簡単には解約ができないこと。あくまで老後の準備ということで、無理のない金額で支払うことです。
国民年金基金などの詳しい説明は本筋から外れますので省略しますが、興味があればぜひ積極的に調べてみましょう。
生命保険料控除や地震保険料控除は、保険料が高いとしても節税効果はそれほど大きくありません。無いとは思いますが、節税目的で保険加入はおすすめできません。
まとめ
フリーランスの所得税計算のしくみについてお話ししました。
所得税は、フリーランスと切っても切れない税金のひとつです。細かいことまではともかく、「全体像」はつかんでおきましょう。きっと、節税にも役立ちます。
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きょうの執筆後記
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日本には「年末調整」というしくみがあります。よって、サラリーマンのほとんどは確定申告とは無縁。所得税のこともさっぱり・・・という人は少なくありません。
そんなわけで、フリーランスになると突然の税金に戸惑います(笑)