キチンと現金出納帳をつけなさい!
と、多くの税理士センセーが言っています。わたしも言っています。でもね、フリーランスなら要らんかも、と思ったりして。
そういえば、フリーランス型税理士であるわたし自身もつけていないしっ!ということで「フリーランスの現金出納帳」についてのお話です。
「フリーランスの現金出納帳不要論」の目的と理由
フリーランスが「ほんとうに正しい」現金出納帳なんてつけられないだろう、と考えています。あ、能力的にということではなく。現実的にムチャだろうというハナシです。
目的は「毎日5分だけ経理」
今回の「フリーランスの現金出納帳不要論」ですが、最終的には「毎日5分だけ経理」という話につなぎます。
確定申告で苦しまないように、毎日コツコツ5分の経理。結果的にラクしてトクしよう。というのが、わたしがおススメする「毎日5分だけ経理」です。「フリーランスの現金出納帳不要論」は、その前哨戦。
「なんで、現金出納帳をつけないんだ!」と怒られたとき(!?)にビシッと反論できるよう、ご理解いただきたい内容です。
少々マニアックではありますが、その後の「毎日5分だけ経理」を目的に。ぜひ、ついてきてください!
フリーランスは仕事用のサイフとプライベート用のサイフを2つ持ってるのか?
フリーランスに現金出納帳は要らない理由。それは、サイフをひとつしか持っていないから。
仕事用のサイフと、プライベート用のサイフを持って。それぞれのサイフの中で現金を管理していますか?していたら早々に謝ります。ところが、そのようなキトクな人をお見かけすることはまずありません。
ほとんどの人が、「ひとつのサイフ」の中で、仕事用・プライベート用両方の現金をゴチャマゼにして使っています。にもかかわらず、現金出納帳は仕事用オンリーでつけようとするから、さぁタイヘン。
サイフの中にあるおカネと、現金出納帳のおカネの残高は一致しない・・・ なんで?というハナシをこれからしていきます。
ほんとうに正しい現金出納帳をつけるなんてナンセンス
サイフの残高と、現金出納帳の残高が一致しないナゼ。具体例で見てみましょう。
フリーランス・ジョーさんの9月30日のカネ使い
フリーランスのジョーさんは、9月30日、次のように過ごしました。
- 事業用の銀行口座から、50,000円の現金をおろした
- 家族旅行の申込金 30,000円を旅行会社に払った
- ○○書店で、1,620円の本を買った
- 取引先△△商事との打ち合わせで、東京から横浜まで電車で移動。往復で600円
- 上記、打合せの後、いっしょにレストラン××で、10,000円の食事をした
- 帰宅途中に、スーパーで食料品 5,000円の買い物をした
さて。自宅に帰ったジョーさんのサイフの中身はいくらでしょう。ちなみに、ジョーさんはサイフをひとつしか持っていません。
ほんとうに正しい現金出納帳を公開!
ジョーさんのサイフの中身は、2,780円です。計算過程は次図のとおり。
「相手勘定科目」などは気にせず、金額だけ追ってみましょう。現金出納帳の残高とサイフの中身が合ってますね。
そして、上図は「計算過程」であると同時に、「ほんとうに正しい」現金出納帳でもあります。ところが、ちまたによく見かける現金出納帳はちょっと違うんだな、これが。
ちまたによく見るザンネンな現金出納帳を公開・・・
ほんとうに正しい現金出納帳をつけられるなら、フリーランスも現金出納帳をつけるべきです。でも、たいていはうまくいきません。下図のような現金出納帳になります。
残高は37,780円。サイフの中身 2,780円とはズレています。ザンネンなことに。ところで、このズレはなんでしょう?
おそらく気づかれたことでしょう。プライベートでの支払い分だけ残高がズレているんです。
仕事用の帳簿づけ(経理)として、現金出納帳をつけようかというときに。プライベートのレシート・領収書までちゃんと記録しようという「意識高い系」のヒトはそういません。
これは経費だぞ、と認識しているレシート・領収書だけを見て帳簿づけします。すると、残高 37,780円の帳簿ができあがる。できあがったところで、サイフの中を覗けば2,780円。
はて・・・と悩んだ末に、ジョーさんは税理士に相談してみることにしました。
そしてできあがる「イイ加減現金出納帳」
税理士に連絡が取れたのは、翌日の夜のことでした。
税理士さん 「で。普段、サイフの中身はいくらくらいです?」
サイフを開くジョーさんは思います。昨日はもう少し少なかった気がするけれど。いまは5,000円くらいか・・・
ジョーさん 「5,000円くらいかな、へへ(笑)」
税理士さん 「(何だ?へへって・・・)じゃ、5,000円くらいにしときますか」
そして、税理士の教えにより、できあがった現金出納帳は下図のとおりです。
摩訶不思議。かくして思惑通り、現金出納帳の残高は5,000円です。ちなみに「事業主貸」というのは「事業用のおカネを経費以外に使いました」というような意味です。
ですから、経費の計算自体は問題ないのですが。現金出納帳の残高は事実ではありません。事実は2,780円ですから。こんなイイ加減な現金出納帳でいいんでしょうか。いいはずはありません。
「イイ加減現金出納帳」が抱える問題点
イイ加減現金出納帳とはいえ、「ま、いいんじゃないの?経費は合っているんだし」という見方もあります。
ただそれは、「仕事用のレシート・領収書がすべてある」ことが前提です。もし、どこかに紛れ込んでしまった領収書があったら?
領収書がなければ経費は計上できませんから、その分だけ現金出納帳の残高は大きくなりますよね。
このとき、「ほんとうに正しい現金出納帳」をいつもつけているのなら、なにかしら領収書がないことに気づくことができるでしょう。サイフの中身と帳簿の残高が合わないぞ、と。
これが、「ほんとうに正しい現金出納帳」のメリットです。でも、そんな現金出納帳はすごくレア。というハナシをしましたよね。フツーは「イイ加減現金出納帳」です。
しかし、「イイ加減現金出納帳」では気づくことができません。もともと、サイフの中身と合わないモノなんですから。結果、経費を計上し損ねます。税金が高くなります。
さきほどの例では、9月30日たった1日だけのお話ですからまだマシですが。これが1年分となれば、それだけ経費を漏らしてしまう可能性は高まります。
まとめ 解決策は「現金を持たない」
「ほんとうに正しい現金出納帳」はつけられない。「イイ加減現金出納帳」には問題がある。というお話をしてきました。だったら現金出納帳なんてつけないことにしよう、そうしよう。
じゃあ、いったいどうするんだ?ということですが。答えは
どうせ管理できない「現金」など、そもそも持たない
現金を持たないなんてムチャ言うな!というお話は次回に続きます。冒頭で触れた「毎日5分だけ経理」です。
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きょうの執筆後記
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なんと、帳簿をつけなくていいのか?とはじめに「ヌカ喜び」をさせてしまっていたらすみません。
そんなことはありません、現金出納帳とは別な帳簿は必要です。それは次回。