2016年4月から、18年間の勤め人を辞めて独立開業しました。
従業員ゼロ、所長税理士のみのひとりぼっち税理士事務所、「自宅兼事務所」での開業です。
もし、「自宅兼事務所」ではじめるならば、あらかじめ考えておくべきことについてお話しします。
自宅兼事務所は「想像力」と「ポリシー」がたいせつ
「自宅兼事務所」で開業する際のポイントを3点にわけてお話します。
- 固定電話、FAXなどはどうするか
- 同業者の目、お客さまの目はどうなのか
- 「家庭」で仕事はできるのか
実際にはじめてみてわかったことでもあるのですが、上記ポイントに対する答えは、「想像力」と自分の中にある「ポリシー」がカギになります。
固定電話、FAXなどはどうするか
【 固定電話 】
- 自宅兼用
- 仕事用にあらたにもう1回線
- 固定電話をつかわない
私は「固定電話をつかわない」を選択しています。
先ほど「カギになる」といったポリシーが理由です。
- 電話であれば携帯電話でじゅうぶん
- 電話をお客さまコミュニケーションのメインツールにしていない
といった自分のポリシーから携帯電話1本です。
事務所か外出かで言えば、半分以上は外出です。固定電話であれば、その間、誰が電話を受けるのか。
家族?それは余計な手間と負担を家族に強いることになりますよね。
第一、仕事のことはわからないでしょうから、結局は「ただの電話番」です。
かけてきたお客さまに対しても留守電とかわりません。その点では秘書サービスなども同じようなことではないでしょうか。
コストがかかるにもかかわらず、「代わりに回答」も期待できない秘書サービスは不要だと考えています。
また、固定電話から携帯電話へ転送設定する方法もあるのでしょうが、それならばはじめから携帯電話でもよいでしょう。
むしろ、着信履歴を一元化できる「携帯電話のみ」のほうが、管理上はラクだといえます。
ちなみに、固定電話の「自宅兼用」は想像するに、かなりキツイのではないでしょうか。
仕事用に公開している携帯電話の番号には、見知らぬ電話番号や非通知設定の営業電話が頻繁にかかってきます。
かといって自宅への電話を「すべて無視」というのは、精神衛生上よろしくないのでは・・・と思うわけです。
【 FAX 】
FAXについては、「必要なし」がわたしのポリシーです。
残念ながら、いまだにFAXでの連絡を強いられる場面はありますが、「縁がなかった」と思うか、電話かメールで対応してしまうことにしています。
物理的にFAXを置きたくないし、紙が増えるのはイヤ!
FAXのインターネットサービスもありますが、コミュニケーション手段を増やすのは煩わしいですし、コスト負担もイヤ。
ポリシーというよりも、もはやワガママですね(笑)
【 その他 】
お客さまコミュニケーションのメインツールについては、chatwork(イメージは企業版LINEです)をすすめています。
電話はお互いに「緊急時」という位置づけです。こちら都合で相手の時間を邪魔しないというのはお互いメリットです。
2.同業者の目、お客さまの目はどうなのか
「自宅兼事務所」には、一般にどこか「残念」な響きがあります。「あ~、(単独の)事務所ないんだ~」みたいな。
もちろん、全員なんてことはありませんが、自宅兼事務所に対して、「残念」な目を持たれる方はいらっしゃいます。
同業者の方でも、お客さまになりうる方でも。
ここでこそ、自分の中の強いポリシーが試されるのです。
ポリシーが弱いと負けてしまうかもしれませんので、あらかじめ「残念」に思われる空気は想像しておきましょう。
私は、人を雇うつもりがありません。お客さまに対する責任として、自分が仕事のすべてを担当します。
ゆえに「事務所」が大きくある必要はまったくありません。
また、次の3つ目のポイント(「家庭」で仕事はできるのか)も重視しているため、「残念」に思われても「考え方の相違」と割り切っています。
ところで、税理士会に開業を届け出る際、届出用紙には「固定電話番号」「FAX番号」の記載欄があります。
事前に税理士会に問合せをしたところ、「あるのが望ましいが、必須ではない」という回答でした。
おそらくですが、「事務所の実質的な存在」を確認する参考情報でもあるのでしょう。実体のない開業税理士、というのは以前から問題になっていますので。
この点、税理士会の支部によっては、開業後に事務所に訪問して所在確認することもあるようです。
さらに余談ですが、私が所属している東京地方税理士会・戸塚支部について、「実際はどうなんだろうね」ということで調べてみました。
正会員数 201名中、携帯電話のみが2名。FAXなしが4名(平成27年9月21日現在)。心が弱いと負けてしまう、明らかに劣勢の少数派です。
「えっ、FAXないの?」と言われるかもしれませんね。そのときは、「えっ、まだFAX使っているんですか?」と言います、たぶん。
3.「家庭」で仕事はできるのか
これは正直、「人による」と思います。
税理士の方にかかわらず、自宅兼事務所について、「家では気が散ることが多い」「集中できない」という声はけっこう聞きます。
実は私自身も開業前にはかなり不安がありました。ですが意外や意外、私は毎日集中して仕事ができています。
自分は、自宅の一部屋を事務所にあてています。部屋の扉を閉めれば、気が散るような外部要因はありません。
部屋の中には快適なモノ、好きなモノを揃えています。なので、「そこに居る」のはとても居心地がよいこと、ということがあるのだと考えています。
扉を閉めれば、と言いましたが、実際はほとんど開けっ放しです。家庭に身を置いている以上、「仕事中なのでシャットアウト」ということは極力したくありません。
仕事部屋には小さいながら、円テーブルと2つの椅子を用意しています。これはお客さまとのミーティング用でもありますが、家族とのコミュニケーション用でもあります。
小学生のこどもが2人いますが、ときどき(業務時間外)はそこに座って勉強やゲームをしています。
「実質的母子家庭(?)」が長かった我が家では子が父親になついておらず、正確には私が誘って、無理やり座らせているのですが・・・
それはそれとして、仕事中であっても「込み入っている」状況でない限り、部屋の扉はオープンです。
また、時間については朝礼などを取り入れ、仕事と家庭との境界に「線」を引いています。
一方で、気持ちの関わり合いについてはあえて「あいまい」にする。
いささか私事に過ぎますが、これまでの「家族との歴史」に対する「答え」であり「ポリシー」です。
これは私の仕事における「家庭に対するポリシー」ですから、だれにでも受け入れられることでないことは承知しています。
自宅兼事務所については、「仕事と家庭の時間」「家族との関わり合い」がポイントになります。
「自宅で働く姿」を、家族と一緒によく想像してみる、ということですね。ここは「想像力」がたいせつ。
日々の仕事と生活スタイルとを想像しましょう。
この点、私は「後付け」になりましたが、事前に、家族と想像し、相談し、合意までしておくことを強くおススめします。
せっかくの開業も、家族とうまくいかなければ台無しですから。
まとめ
ということで、私が「自宅兼事務所」を選択していることと、「ひとりぼっちの税理士事務所」というスタイル・ポリシーとは強い関係性があります。
スタイル・ポリシーはひとそれぞれ。
カタチとしての「自宅兼事務所」ということではなく、スタイル・ポリシーを貫くための手段として自宅兼事務所は考えましょう。
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きょうの執筆後記
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きのうは午前、午後と2件のセミナーに行ってきました。
午後はブログ運営に関するセミナーに参加、
「ひとり税理士」の井ノ上陽一さんにようやくお会いすることができました!
開業のおおきなきっかけをいただいた方です。
いろいろなおはなしをうかがい、初心を強く取り戻しました。
初心もなにも開業2か月目なんですけれど…ブログへの勇気をいただきました。