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愚問とは言い切れない 顧問税理士に聞いたほうがいいかもしれないたった2つのコト

質問

「ウチの税理士は当然こんなことわかっているだろう」と聞かずにいる。
聞くまでもないこと、いわゆる「愚問」。
ですが、中には「わかっていない」ということがあるかもしれません。
愚問だろうとは思い込まずに、いちどは顧問税理士に聞いてみるのはいかがでしょうか。

目次

聞かなければわからないことがあります

お客さま自身のことも、税理士の専門分野である経理や税金についても、顧問税理士とて「わかっていない」ことがあります。
その点について、「一方的に税理士が悪い」とも、「全面的に税理士は悪くない」とも言えません。
なぜなら、お客さまと税理士との関係は「ケースバイケース」であり、十把ひとからげとはいかないからです。

税理士を非難する意図も、擁護する意図もありません。
ここは非常にデリケートな部分であり、誤解のないようにここでくれぐれもお断りしておきます。
意図はただひとつ、お客さま側が「経理や税金で損をしない」ようにということだけです。

それではあらためて。
「経理や税金で損をしない」ために、いちどは顧問税理士に聞いてみた方がいい2つのコトについてお話します。

質問1 「ウチの現金残高はいくらなの?」

一見すると、とてもおかしな質問ではあります。
ですがとくに、現金出納帳をお客さま側でつけていない場合には聞いておくべきところです。

「ほんとう」の現金残高はお客さま側が知っていることです。
手元の現金を数えればいいわけですから。
むしろ、税理士側では数えようがなく、お客さまに聞くしかありません。

では、「税理士が」「お客さまに」「現金残高を」聞いているかどうか、ということです。

お客さま側で現金出納帳をつけることなく、領収書などの書類一式を顧問税理士に渡している場合。
税理士は受け取った書類に従って、「会計帳簿」を作成していきます。
できあがった現金出納帳に記載された「現金残高」は、「その結果」でしかありません。

税理士が計算した「その結果」と、お客さまが知りうる「ほんとうの現金残高」とは一致するのでしょうか?
可能性の問題として、一致しないケースはありえます。

たとえば、お客さまは「経費」だと考えて税理士に渡したある領収書。
税理士側では、それは「経費ではない」と判断して会計帳簿を作成する場合、「一致しない」ことになります。

どういうことかというと、お客さま側では「経費」としたその領収書の金額分だけ、手元の現金残高は少なくなります。
現金を実際に支払っていますから当然です。

一方で、税理士側では「経費ではない」ので、現金残高は減らずにそのまま。
これは、お客さまは現金を使っていない、と考えていることになります。
厳密にいうと、「事業用の現金」は使っていない。
その領収書の金額は「プライベートの現金」で支払ったと考えているのです。

「税理士が」「お客さまに」「現金残高を」聞いているかどうか、と上述した理由はここにあります。
合っていないかもしれない、「お客さま側の現金の認識と、税理士側の現金の認識」とを合わせるということです。
いまのケースでいえば、現金残高を合わせることを通じて、その領収書が「経費」なのかそうでないのかについて話が及ぶことになります。

顧問税理士がお客さまに現金残高を伝えず、お客さまもそれをたずねないとして。
3つのリスクが発生するかもしれないことは覚えておきましょう。

1つめは、本来「経費」であるかもしれない金額が経費処理されず、税金が高くなるリスク。
2つめは、会計上の現金残高を適正に保つため、経営者からの貸付金・借入金などが帳簿に記載されるリスク。

ここは念押しですが、お客さまと税理士とのあいだで「意思疎通」できたうえであれば、以上の2つはリスクではありません。
税金が高くなるのも、貸付金・借入金があるのもリスクではなく「事実」です。
リスクになるのは、あくまで「意思疎通」ができていない場合です。

この2つの点については、以前の記事で詳述しています ↓

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3つめは、事実とは異なる「会計帳簿上の現金」の推移を税務調査で指摘されるリスクです。
決算書などを拝見すると、現金残高が「不自然に多額」ということが散見されます。

このような業種・業態で、あるいは事業規模で、「こんなに現金は必要?」というような残高。
わたしが思うのですから、税務署はもっと思うでしょう。
税務調査が行われる可能性が高まる、と言ってもいいでしょう。

少々余談ですが、たまたま決算日現在、手持ち現金が多かったということもあるかもしれません。
いまお話したような税務調査実施リスクを考えれば、あらぬ疑いがかからないように、手持ち現金は銀行に預けておきたいところです。

話を戻します。

税務調査での重要な視点のひとつに「現金管理」があります。
調査のいちばんはじめに、調査官が今現在の手元現金残高を確認することが少なくありません。
それと現金出納帳の現金残高とを突き合せするのです。

現金管理がしっかりしている会社は、税務調査官の心証がよく、その後の調査もスムーズです。
しかし現金管理でつまづくと、「この会社アヤしい?」となってしまいます。
ちっともアヤしくなくても、疑いをかけられるのは明らかに損です。
出さなくても済んだはずの書類を要求されたり、調査時間が長引いたりするのはかないません。

現金管理を軽んじてはいけません。

質問2 「ウチの仕事内容って、知ってる?」

またまたおかしな質問です。
顧問税理士が、お客さまの仕事の内容を知らないって・・・?と思われることでしょう。

ここで言う仕事内容とは、「業種・業態」のことではありません。
ですから「小売業です」とか「パン屋さんです」と答えてほしいわけではないのです。

顧問税理士に答えてほしいのは、一言でいうとお客さまの「ビジネスモデル」。

どのようなお客さまに、どのような商品・サービスを、どのような方法で売るのか。
売るために会社が持たなければいけない設備、従業員、ノウハウとはなにか。
もっと言えば、売る過程で起きている課題や問題はなにか、など。

申告書や決算書に書いてあることだけではわからないことがたくさんあります。
お客さまごとの、お客さま特有の「売るしくみ」がわからなければ、税理士としてのサービスに厚み・深みもでません。

ビジネスモデルを知るからこそできる踏み込んだアドバイスがあります。
また、税額控除などの節税ヒントは「ビジネスモデル」の中にあったりするものです。
顧問税理士と「ビジネスモデル」について話をしたことがないなぁ、というのであれば、なるべく話をするようにした方がよいでしょう。
経理や税金からトクをする顧問税理士とのお付き合いになるはずです。

まとめ

2つの質問を顧問税理士にすることについて、機嫌を損ねたらどうしようと思われるでしょうか?
あまりこういうことは言いたくないのですが、「それで機嫌を損ねるような税理士はやめたほうがいい」かもしれません。

お話した2つの質問は、顧問税理士とお客さまの関係上、とても大事なことだとわたしは考えています。
この点で理解をしあえないのであれば、それは「合わない」ということです。

他方で、お客さま側も「余計な仕事」を顧問税理士に任せないようにしたほうがよいでしょう。
厳しい物言いかもしれませんが、話中にあった「現金出納帳」はお客さまがつけるべきものであり、顧問税理士に任せるには「余計な仕事」です。
現金出納帳などは自分(自社)でつけたうえで、顧問税理士と「現金残高」についてコミュニケーションするのがベストです。

現金出納帳なり、その他の会計帳簿なり、あまりに多くの「経理代行」を顧問税理士に頼めば、残念ながら「税理士本来の専門家サービス」はその影を潜めることになります。
顧問税理士がひとつの顧問先にかけられる時間には限りがあるのです。

ITをうまく活用すれば、経理は思っているほどたいへんなことでもありません。
これを機会に、効率的で正確な経理のやり方を、顧問税理士にたずねてみてはいかがでしょうか。
そもそも手間がかかる現金はなるべく扱わない「キャッシュレス経理」なども教えてくれるはず。

経理で損をしないように、トクする経理を目指しましょう。

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  きょうの執筆後記
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昨日はオフ。
朝のテニスレッスンのあと、家族で江の島散策へ。
電車で江の島に行く方法にはいくつかありますが、ウチは湘南モノレールです。
モノレールは大船始発なら座っていけますし、「空中散歩」は気持ちイイ。
江の島の駅からも、島までの一本道に並ぶいろいろなお店は楽しめます。
少し久しぶりでしたが、あたらしいお店も増えていました。
梅雨とはいえ、天気はまずまず。島内もがっつりと歩いてきました。

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