きょうの名言は、岸見一郎さん・古賀史健さんの「幸せになる勇気」から。
古今東西、世の中はたくさんの名言であふれています。自分にとって「活かせる」名言、みつけてみませんか?
人生を再選択したい、そのときにこそ手にすべき1冊
きょう紹介する「幸せになる勇気」は、言わずと知れたベストセラー「嫌われる勇気」の続編にあたります。アドラー思想をめぐる、哲人(哲学者)と青年の対話が3年ぶりに。という設定です。
かつて哲人から教えを受けた青年は、3年の歳月を経たいま。怒りに身を震わせて哲人を訪ねます。「アドラーの思想はとんだペテン」だと。
というように、激昂したかと思えば、急に落ち込んだり。しおらしくしているかと思いきや、突然に暴言を吐くこの青年。とんでもなく情緒不安定です。
青年の「要治療レベル」の展開に、読中、多くの読者が気をそがれたことと推測します。ですが、そこはベストセラー。しっかりと名言の数々を残してくれました。
ところで。
この本を手にしたのは2016年3月。独立開業した同年4月の直前でした。本の「帯」にあった「人生を再選択せよ!!」の文字を目にし、手に取らずにはいられなかったことを覚えています。
大学卒業から18年間の「勤め人生活」を辞めての、あたらしい人生への挑戦。それはまさに「人生の再選択」。幸せになりたいという、心からの願いによる選択でした。
この本との出会いに、いまでもわたしは感謝しています。そう言える、1冊です。
変われないのは、ほんとうは変わりたくないから
では早速、ひとつ目の名言です。
哲人 『過去が「いま」を決めるのではありません。あなたの「いま」が過去を決めているのです。』
「変わりたい」と思う。ところが、そうカンタンに変わることなんてできない。という、苦い経験はないでしょうか。
ひとは、「いまの自分」を正当化するために、都合よく過去の出来事を理由にします。そんなことを、名言は伝えようとしています。
たとえば。こんなに自分がケチくさいのは、昔、家庭が貧しかったからだ。これは、ケチくさいいまの自分を、過去の家庭を理由に言い訳しているだけです。
でも、これならどうでしょう。いまの自分がお金に苦労しないのは、貧しいながらもしっかりとしたお金の使い方を家庭で教わったからだ。
同じ「貧しい家庭」という過去も、いまの自分しだい。不幸であったはずの過去でさえも、ひとは肯定しうるのです。
哲人 『アドラーの思想は「人間は、いつでも自己を決定できる存在である」という、人間の尊厳と、人間が持つ可能性への強い信頼に基づいています』
いついかなるときでも、ひとは自分を決められる。あたらしい自分を選択できる。アドラーはそう信じています。
それにもかかわらず、「変えられないわたし」が居るのだとすれば。「ほんとうは変わりたくない、そう思っているのではないか?」と哲人は示唆します。
いまなお、変わりたくても変われない部分を持つわたし自身は?ほんとうは変わりたくない?厳しい追及を受けることになった名言です。
これからどうするか、ただその一点を考えよ
それなら、変われないわたしはどうすればいいのか。いつかあたらしい自分を選択できる、などという、きれいごとで済ませるわけにもいきません。
青年もまた、もどかしさで苛立ちます。そして、哲人が口にしたのは、
哲人 『そう、われわれが語り合うべきは、まさにこの一点、「これからどうするか」なのです。「悪いあの人」などいらない。「かわいそうなわたし」も必要ない。あなたがどんなに大きな声でそれを訴えても、わたしは聞き流すだけでしょう』
自身の不幸を語る者、自分を責める者、自分を取り巻く周囲への憎悪を募らせる者。それらは皆、「悪いあの人」と「かわいそうなわたし」のいずれかの話に終始するのだそうです。
「グチる」ということがありますが、その内容は「悪いあの人」と「かわいそうなわたし」そのもの。あ~、グチってるだけだったなぁ・・・とガックリきた部分です。
誰かの悪口を言ったところで、自分を蔑んだところで、いまの自分を肯定などできるわけがありません。ましてや再選択など、言うに及ばず。
結論として。口にすべきは「これからどうするか」ただそれだけ、ということになったわけです。
「変わろう!」と強く決意した独立開業してからも。「周囲の環境」や「不遇な自分」を語ってしまいそうになる瞬間があります。弱さです、依存です。わかってます。
とはいえ。自分を甘やかすようですが、41年間の人生で築かれた心根はそう簡単には変えられません。
だからあきらめず、しぶとく。「いかん、いかん。これからどうするかだぞ」って、自分自身と向き合い続けていくだけです。いま、この瞬間に再選択をするために。
遅すぎることなどひとつもない
さきほども触れましたが、わたしは41歳。いろいろと遅すぎたかな・・・と考えてしまうこともあります。ホント、困った心根ですね(笑)
ですが。アドラーはそんなわたしにさえ、希望を示してくれるようです。
哲人 『ある人から「人間が変わるのに、タイムリミットはあるか?」と質問を受けたアドラーは、「たしかにタイムリミットはある」と答えました。そしていたずらっぽく微笑んで、こう付け加えたのです。「寿命を迎える、その前日までだ」。』
これからどうするか、に目を向けること。これからを考えるのに、遅すぎることなどひとつもないということ。
それが、わたしが「幸せになる勇気」から学び、身につけようと試みている姿勢です。寿命を迎えるその日まで、これからどうするかを考える「いま」であれ!と。
「変わりたい」あなた。「人生を再選択したい」あなたに。手にして欲しい1冊です。
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きょうの執筆後記
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「幸せになる勇気」は、とてもわかりやすい本です。ところが、わかりやすいからと言って、読み手の思考を停止させない本でもあります。
読み手自身に、答えを迫るような内容、ということです。言動が読めない「情緒不安定な青年」の緊迫感が、ひと役買っているのかもしれません・・・とにかく良書です。