思ったよりも利益が出たゾ。決算賞与で節税するか!
その決算賞与。ほんとうに節税として有効ですか?
決算賞与で思わぬ「落とし穴」にハマらぬように。いまいちど、決算賞与について確認をしておきましょう。
決算賞与 3つの落とし穴
決算賞与を支給しようという時、気を付けるべき「落とし穴」が3つあります。
- 税金の落とし穴
- お金の落とし穴
- 人心の落とし穴
ではさっそく、それぞれの「落とし穴」を確認していきましょう。
税金の落とし穴
節税を理由に支給されることが多い決算賞与。その節税スキームの理解、だいじょうぶですか?
決算賞与を未払計上できる要件
決算賞与が節税として注目されるワケとして。決算間際に未払計上できることが挙げられます。決算日までに支給しなくても経費にできるということ。
でも、大事な要件があったよね。ということで、有名な「決算賞与の3要件」がこちら ↓
イ その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受ける全ての使用人に対して通知をしていること。
ロ イの通知をした金額を当該通知をした全ての使用人に対し当該通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から一月以内に支払つていること。
ハ その支給額につきイの通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること。
《 法人税法施行令 第72条の3 より抜粋 》
上記3要件をすべて満たしてはじめて、決算賞与は未払でも経費にすることができる。と、上記の法律条文には記されています。
法律条文は少々読みづらいので、簡易な表現に変換すると、
イ 決算日までに、賞与支給額を従業員それぞれに通知する
ロ 決算日から1か月以内に、イの賞与をすべて支払う
ハ 決算でイの支給額について未払計上している
イロハそれぞれで、「通知、支払、経理」という3つの要件を満たさなければいけない、ということです。
支払要件の意味
3要件のうち、「落とし穴」になるのは「支払」について。さきほどの「支払要件」を再掲します。
ロ 決算日から1か月以内に、イの賞与をすべて支払う
ポイントは、「通知」した賞与について、「すべて支払い」をするというところ。
これが意味するところは、「賞与支給日までに退職してしまった従業員が居ても通知した賞与は払う」ということです。
フツーの賞与はそんなことありませんよね? 賞与支給日に在籍していることをもって支払われる、というのが一般的であり、慣習でしょう。
ところが、決算賞与を節税に使うには。ひとりの例外も許さず、通知した従業員すべてに賞与を支給しなければいけません。
もしひとりでも支給しない従業員がいれば、他の従業員分も含め、決算賞与の金額全体が経費ではなくなってしまいます。
支払要件の勘違い
うん、わかった。じゃあ、通知した従業員すべてに賞与を支給するゾ。と言っても、実はまだ足りない。
自社の「給与規定(賞与規定)」を確認してください。賞与について、なんて書いてありますか?
もしも、「賞与支給日に在籍していることが要件」になっているようであれば。実際には「通知した従業員すべてに支給」をしたこともアヤシイものになってしまいます。
明文化された給与規定には「在籍が要件」となっている以上。在籍を確認できる支給日を迎えるまでは、支給額は確定できない。
つまり。決算日現在においては、未払計上できないんじゃないんですか?ということです。専門的に言うならば、「債務が確定できない」。これは困ります。
給与規定を改定せよ
そこで、在籍が要件になっている給与規定であれば、そこは改めておきましょう。たとえば、こんなカンジです ↓
《 決算賞与 》
1.決算賞与は、支給額通知を受けた社員に支給する
2.決算賞与は、決算日の翌月末日までに支給する
3.決算賞与は、会社の業績等に応じ、支給額および支給日は変動するものとする
ということで、フツーの賞与、いわゆる「定期賞与(夏・冬のボーナス)」の規定とは別建てで規定をしておくのがよいでしょう。
ちなみに、給与規定自体が無い場合には。これを機会に作成することをおすすめします。給与規定無しで決算賞与の「債務確定」を主張するのには弱さがありますから。
お金の落とし穴
税金を払うくらいなら、という過剰な節税思考だと。税金は減っても、お金はもっと減ることに。って、だいじょうぶ?
目先の利益、目先の税金、目先のお金
利益を圧縮し、税金を減らし、支払は先でもよい。そんな「決算賞与の未払計上」は、すばらしい節税策に思えます。
が、それは諸刃の剣であることを十分に理解しておく必要があります。
目先においてはすばらしいものであっても、少し先の未来においてもすばらしいモノであるとは限りません。
賞与の支給で、たしかに税金は減りますが。それ以上に、手元のお金は無くなっているのです。
確認するまでもない具体例
決算前に今期の利益見込みを確認したところ、利益500万円でしたと仮定して。税率が30%だとすれば、税金は150万円。税金支払い後、手元に残るお金は350万円です。
150万円も税金を払いたくないよ、ということで決算賞与200万円を検討すると。利益は300万円に圧縮、税金は90万円です。
税金は60万円も減ったぞ(150万円-90万円)、しめしめ。ところが、税金支払い後の手元のお金は210万円。
賞与を支給しない場合に比べて、140万円も減ってしまいました(350万円-210万円)。やれやれ。
何のための決算賞与か
もはや言うまでもないことですが。節税ありきの決算賞与、ということではいけません。
決算賞与を支給するのであれば、節税は「結果」であるべきであって、「目的」であってはいけません。
さきほどの例でいえば、500万円の利益を会社内部に溜め込むか、従業員に200万円を還元すべきかという視点で検討するようにしましょう。
それを、税金を150万円払うか、90万円払うかで検討していると。無くなった140万円のお金を、あとで嘆くことになります。
人心の落とし穴
決算賞与で従業員のモチベーションアップ!って、ほんとうに? そのモチベーションって、来年決算賞与が支給できなくてもだいじょうぶ?
一度もらうと次も期待するココロ
「業績がよいので、今年は決算賞与を支給します」と社長。そんな決算賞与をもらった従業員の心理として。当然、次を期待します。
『そうか、会社が儲かると決算賞与がもらえるんだな。よーし、がんばるゾ!』
というのは正常な心理であり、働く動機のひとつとも言えるでしょう。翌年決算を迎え、従業員が考え得ること。それは、
『今年もオレはがんばった!会社の業績は悪くないはずだ。決算賞与がたのしみだゼ』
ところが。新規の投資も検討していることだし、今年の決算賞与は見送ろう。という社長の経営判断がなされるとしたら・・・
「儲かる」とはどういうことだったのか?
決算賞与支給の理由として。「業績がよいので」というのでは不足だということです。
中小零細企業では、決算数値の詳細までを従業員に開示していることはまれであり。従業員にとって、業績良否の判断は「感覚」に頼らざるを得ないところがあります。
去年と同じくらい今年も儲かったはず、という従業員の「感覚」があるのであれば。
『今年は決算賞与が無いの? ないわ~、それはないわぁ。』と、モチベーションはダダ下がりです。
経営サイドにとっての「業績がよい」と、従業員サイドにとっての「業績がよい」の感覚を合わせておかなければいけません。
「儲かる」の基準をつくる
決算賞与をただしく従業員のモチベーションに活かすには。「業績がよい」の「基準」を明確に提示することです。
決算賞与が支給できる「業績の良さ」とは何なのか、をきちんと定義するということ。たとえば、新規投資額も織り込んでの最終利益を基準にする、など。
決算書の最終利益を従業員には見せたくないなぁ、というケースでも。最終利益だけが基準ではありません。
決算賞与を支給できる最終利益から、必要な売上額を逆算することもできます。その売上額を決算賞与支給の基準にすればいいのです。他にもいろいろな基準が考えられるでしょう。
その基準は何にせよ。ブレない基準にもとづく決算賞与こそが、従業員のモチベーションに効果を発揮します。
まとめ
決算賞与 3つの落とし穴についてお話をしてきました。
「過度な節税思考」が根っこにあると、せっかくの決算賞与が台無しです。まずは、決算賞与支給の目的、本質を再確認すること。
次いで、手段としての決算賞与支給に誤りが無いかを確認し、十分な節税効果を受けること。決算賞与はこの順序で考えましょう。
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きょうの執筆後記
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