きょうの一冊一言(いっさついちごん)は、
伊賀泰代さん著 『生産性』
この一冊から、きょうの自分に活きる一言を。見つけ出していきます。
内容紹介
著者は、キャリア形成コンサルタントとして活躍する伊賀泰代さん。
2010年末までの17年間、コンサルティングファームのマッキンゼー・アンド・カンパニー ジャパンに在籍。10年以上に渡ってコンサルタントの採用、育成に携わってきた実績をお持ちの方です。
本書では、伊賀さんの豊富な人材育成経験にもとづいた、「組織と人の生産性の上げ方」が記されています。
ただ売上が上がればイイとうことでもない、難しい仕事ができればイイというだけでもない。ましてや、たくさん働けばイイというのもまた違う。
もっといい働き方を追求したい。そんな思いから、わたしが手にした一冊です。
きょうの一冊一言
『生産性』から、わたしが見つけ出したとびきりのひとこと、一冊一言は・・・
こうした「アウトプットを増やしたければ、その分、インプットを増やすべき」という発想には、生産性の概念が完全に欠如しています。
《19ページより引用》
改めて、生産性とはなにか
そもそも、「生産性」という言葉を算式で表すと、
生産性 = アウトプット / インプット
これについて、「分母であるインプットが大きくなれば、生産性は低下する」ということを、先の「一冊一言」では言っているわけです。
これって、当たり前のこと。特に目新しいことはありません。
ところが、続いて著者が挙げた例示を見て。「あぁ、僕は本当はわかってないんだな」と気付かされました。
その例示とは、「企業の採用活動」です。たとえば、10人の新人採用を考えている企業の採用活動。あなたが採用担当者であるならば、どのようなことを考えますか?
もちろん、本書のテーマである「生産性」を加味して、ということです。
ちなみに、わたしは「生産性がわかってない人」なので、「応募者数を増やす」ための算段をしてしまうことになります。だって、母数が多いほうが採用側の選択肢が増えますからね。
さぁ、あなたはどうでしょう?
生産性の意味を忘れた人たち
解答として、著者の伊賀さんは言います。究極的には「10人応募で10人採用」だ、と。「10人応募で10人採用」の実現はともかく、その方向を目指すべきだと言っています。
当社が望む人材を明確に打ち出し、応募に一定のハードルを課し、安易な応募はさせないという採用活動。
わたしのように、「応募者を増やせば、優秀な人材が増えるはず」という採用活動は生産性に逆行します。採用の過程で、試験だ、面接だと「時間」がかかります。
内定を出すのにも時間がかかる。優秀な人材は他に流れる。いままで50人の応募で1人採用できていた企業が、500人の応募で8人しか採用できなかった、となる。
「採用人数」というアウトプットを増やそうとするあまり、「応募者数」というインプット増やし過ぎた結果。生産性を害してしまった、という例です。
「量」の魅惑
採用活動の例が教えてくれるのは、「量より質」という生産性の本質を見失わないように、ということ。
ところが、「見失っている」ことなんて日常茶飯事なわけで。たとえば、
- とにかく売上アップ、が目標
- 徹夜をしてでも仕上げろ、という指示
- 残業を容認する、評価する企業風土
- とりあえず多読
- ブログ運営でPV(ページビュー)ばかり気にする
- 睡眠時間を削ってまでやる自己研鑽
などなど。ビジネスシーンでも、プライベートでも、「量より質」を見失った考え方・行動は枚挙に暇がないほどです。わかっちゃいるのにやめられない、といったところでしょうか。
思うに、
「量」は測りやすいもの、体感しやすいものであり。評価しやすい、満足を得やすい、というところにワナがある。
わかっているのに落ちるワナ。
その他 注目の一言
一冊一言以外に、『生産性』から見つけた気になる一言を。
つまり、生産性を計算するときの分子である成果の価値とは、分母である投入原材料の価値の合計値ではなく、「顧客が評価する価値」のことなのです。
《40ページより引用》
コスト積み上げ型値決めの悪
生産性の算式は、「アウトプット / インプット」だとお話ししました。
これについて製造現場の話として、伊賀さんは「アウトプット=成果」、「インプット=投入原材料」と定義しています。
そのうえで伊賀さんが言うのは、「成果=投入原材料の価値合計」というのは誤り。そうではなくて、「成果=顧客が評価する価値」ですよ、と。
誤った考え方として、「コスト積み上げ型の値決め」について触れています。「コスト積み上げ型の値決め」とはまさしく、「成果=投入原材料の価値合計」の表れです。
実際、多くの供給者がひしめき合う市場では、「原材料費の高騰による値上げ」は消費者の理解を得にくいものがあります。
消費者の商品への関心は、原材料よりも機能だということもあるわけですから。生産性の算式で言うと、値決めにおいて、分子の価値と分母の価値は別ものだということです。
ところがこれもまた、わたしたちが「わかっているようでわかっていない」ことと言えるでしょう。
生産性は無限大
わたしたちはしばしば、投入原材料や投下時間をもとに「値決め」をしています。その考え方自体が誤りということではないにせよ、そこに依り過ぎてしまうことがあります。
そのほうがラクだし、カンタンだから。
「成果=顧客が評価する価値」だと言われても、顧客の本心を知るのは容易ではありません。だから、コストを積み上げてしまう。
コスト積み上げ型の値決めがもたらす最大の欠点は、生産性に限界をつくってしまうことです。
顧客にとっての価値を理解し、それを生み出すことができるなら。その価値に基づくただしい値決めができるなら。生産性の算式における分子に限界はありません。生産性は無限です。
これを机上の空論だと退けるのか、果敢に分子の最大化に挑むのか。各自、各社の「生産性の理解」にかかっています。
《 もっといい働き方を追求したいあなたに、おすすめの1冊です 》
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きょうの執筆後記
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