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勘定合って銭足らず?利益とおカネが一致しない5つの理由

勘定合って銭足らず

利益はあるのに、おカネはない。

というのは、「経営あるある」のひとつです。いったいなぜそんなことが・・・?

その全容解明に向けて、利益とおカネが一致しない5つの理由についてお話をしていきます。

目次

利益とおカネが一致しない5つの理由

唐突ですが、「勘定合って銭足らず」とは?

帳簿の計算は合うが現金が足りない。理論と実際とが一致しないたとえ。算用合って銭足らず。

【 コトバンク より引用 】

転じて、「利益は出ているに、どういうわけかおカネが無い」という場面で使われるのが、「勘定合って銭足らず」の言葉です。

  • 利益が出ているとは、儲かっているということではないのか?
  • 儲かっていれば、おカネは増えるものではないのか?

と、考えたくもなりますが。そうでもないんだな、これが。

ではなぜ、そんなことになってしまうのか? その理由は次の5つです。

  1. 売掛金と買掛金
  2. 在庫
  3. 資産購入と減価償却
  4. 借入とその返済
  5. 税金

ではこのあと、それぞれについて見ていくことにしましょう。

 

《 銭足らずのワケ① 》売掛金と買掛金

利益はあるのにおカネがない理由のひとつめは、売掛金と買掛金です。

いつもニコニコ現金払いはカンタンだ

売掛金・買掛金という会計用語はひとまず横に置き。わかりやすいように具体例で話を進めることにします。

  • 例)あなたはジョーさんに仮面ライダーのフィギュア(タダでもらったもの)を5,000円で売りました。ジョーさんはすぐに現金で5,000円を支払いました。

このとき、あなたの利益とおカネの動きについて考えてみましょう。

まずは利益から。収入は5,000円、収入を得るためにかかった費用はゼロ(もらいものなので)。よって、利益は5,000円です。いいですよね?

では次におカネの動き。ジョーさんは現金払いでしたから、あなたは5,000円のおカネを手にしています。

つまり、利益もおカネも5,000円。ズレはありません。現金払いはカンタンです。

ツケにするからややこしい

それでは具体例を少しいじります。

  • 例)あなたはジョーさんに仮面ライダーのフィギュア(タダでもらったもの)を5,000円で売りました。ジョーさんは「ツケといて」と言いました。

いじったのは後半部分です。ジョーさんは現金払いをやめ、ツケ払いを要求しています。このときの利益とおカネの動きはどうなりますか?

利益はさきほどと変わらず5,000円です。収入は5,000円、収入を得るためにかかった費用はゼロ(もらいものなので)と、なんら変わりはありません。

問題はおカネの動きです。ツケにされてしまったので、おカネは手元にありません。

つまり、利益は5,000円ですが、おカネはゼロ。あらら、勘定合って銭足らずの出来上がり。

売掛金と買掛金で大混乱

というわけで。ツケ払いにされた場合、入金するまでのあいだはその分のおカネが利益よりも少なくなります。

このとき、あなたから見て「ツケ払いにされた金額 5,000円」のことを「売掛金」と言います。

いっぽう、ジョーさんから見て「ツケ払いにした金額 5,000円」のことを「買掛金」と言います。

あなたが商売を続けるならば、商品を売るために仕入もするでしょう。そのとき、ジョーさんのように「ツケ払い(買掛金)」で仕入れると。

売掛金による利益とのズレと、買掛金による利益のズレとで。おカネの動きを把握することが、タイヘン困難な状況に陥ります。利益を見ていても、おカネの動きはわからない。

その把握をするために、世の中には「資金繰り表」というものがあるわけで。

利益を知るには、決算書の「損益計算書」で。おカネを知るには「資金繰り表」で、と使い分けが必要です。

商品以外のことに関するツケについて、「未収金」や「未払金」などといった会計用語がありますが。考え方は売掛金・買掛金と同じことです。 

 

《 銭足らずのワケ② 》在庫

利益はあるのにおカネがない理由のふたつめは、在庫です。

在庫が嫌われ者である理由

またまた具体例でいきましょう。

  • 例)あなたは商品を10,000円分、現金で仕入れました。うち5,000円分をジョーさんに10,000円で販売、代金はすぐに現金で回収。在庫(残っている商品)は5,000円分になりました。

では、このときの利益とおカネの動きを考えてみましょう。

売上は10,000円です。仕入は10,000円、在庫は5,000円です。利益は、「売上10,000-(仕入10,000-在庫5,000)」で5,000円になります。

えっ、なに、なに? となったかもしれませんが。在庫分は、経費として計算できないのですね。まだ売れていないから。

売れたときに、売上と紐づけて経費にしてね。という会計のルールに従って、「在庫は仕入からマイナスする」ことになります。ちょっとムズカシイ。

続いて、おカネの動きはどうでしょう?

10,000円で仕入れて、10,000円で売り上げて。結果、手元のおカネはゼロです。

つまり。利益は5,000円だけど、おカネはない。またしても銭足らず。これが在庫が及ぼす影響です。在庫が増えるほどおカネが足りなくなる。だから、在庫は嫌われます。

 

《 銭足らずのワケ③ 》資産購入と減価償却

利益はあるのにおカネがない理由の3つめは、資産購入と減価償却です。

クルマを買っても経費にならない?

結論から言います。1つあたり10万円(青色申告だと30万円)以上のモノを買っても経費にはなりません。正確に言うと、すぐには経費になりません。

なんで? って言わないで。会計のルールだから。

というのもなんなので、少しだけ理由を話しておくことにします。

300万円のクルマを買うことを想像してみてください。フツーはそれなりの期間、そのクルマを使うことと思います。仮に6年としましょうか。

もしクルマを買った年に、300万円全額を経費にするならば。同じようにクルマを使う残りの5年間と比べてどうでしょう? なんか違和感ありますよね?

同じように毎年クルマを使うのに、1年目は経費300万円。残りの5年間は経費がゼロ。やっぱりヘンだ。

ということで、300万円を6年で割り算して。毎年50万円ずつ経費にしようという考え方が会計にはあります。この考え方を「減価償却」と言います。

ちなみに。減価償却による経費(例で言うと50万円)を「減価償却費」と呼び。減価償却の対象になる資産(例で言うとクルマ)のことを「固定資産」と呼びます。

固定資産を買って銭足らず

クルマの例で説明を続けます。

300万円のクルマを買った年の利益とおカネの動きを考えてみましょう。

まず利益から。さきほどの減価償却のハナシを思い出してください。経費は毎年50万円に分割しよう、ということでした。

よって、利益は「マイナス50万円」です(単純化するために、売上などはないものとします)。

次におカネの動き。300万円のクルマを買ったので、おカネが300万円減りました。数字で表すならば「マイナス300万円」です。

つまり。利益は「マイナス50万円」なのに、おカネは「マイナス300万円」。実に250万円も、おカネは利益よりも少ない。

またしても銭足らず。固定資産を買うと、利益を見ていてもおカネの動きはわからなくなるのです。

クルマのその後

クルマを買った後、2年目から5年目までのハナシもいちおう確認しておきましょう。

利益は「マイナス50万円」。これは1年目と変わりません。減価償却費50万円は毎年同じです。

おカネの動きはどうでしょう? 支払は終わっていますから、びた一文動きません。ゼロです。

つまり。利益とおカネの動きの差は「50万円」。利益よりも、おカネのほうが多くある状態が2年目以降です。1年目に出た250万円の差を回収していくカンジです。

これを、「減価償却による資金回収効果」などと言ったりします。いつか決めゼリフに使ってください。

 

《 銭足らずのワケ④ 》借入とその返済

利益はあるのにおカネがない理由の4つめは、借入とその返済です。

行きはよいよい、帰りはこわい

具体例でどんどん進めます。

  • 例)あなたは銀行からおカネを借りることにしました。100万円を借りて、翌年から毎年20万円ずつ5年で返済します。

おカネを借りた年について。利益とおカネの動きを見てみましょう。

まず利益ですが、これは影響なし。ゼロです。

これも会計のルールとして覚えて欲しいのですが、借入をしても利益になるわけではありません。いずれ返すわけですからね、「預りモノ」みたいなものです。

おカネの動きはというと言わずもがな。100万円のプラスです。

結果、利益とおカネのズレは100万円。利益よりもおカネのほうが100万円多くなる、というのが借り入れをした年の状況です。

支払利息は経費
借入について支払う利息は「経費」です。その分のおカネも減りますので、利益とおカネの動きにズレはありません。本文中の「元金返済」とはベツモノです。

利益が無ければ、返せない

続いて、翌年以降の返済について見ていきましょう。

まず利益はどうでしょう? さきほど触れたとおり、借入自体は預かりモノです。その預かりモノを返していくだけですから、経費にはなりません。

よって利益に与える影響はゼロ。

おカネの動きはどうでしょう? 当然、返済する20万円だけおカネが減ります。

結果、利益とおカネのズレは20万円。利益よりもおカネをほうが20万円だけ少なくなります。これが、返済をしている最中の状況です。

つまり。借入を返済しているあいだは、その分の「銭足らず」が生じているのだということ。これはすごく重要です。

 

《 銭足らずのワケ⑤ 》税金

利益はあるのにおカネがない理由のさいご、5つめは税金です。

経費にはならない税金がある

たとえば利益が100あります。法人税率は30%です、という場合。法人税は30です。

ではでは。この法人税30は経費になるのでしょうか? 答えは、「ならない」。

なぜなら。法人税を経費にしてしまうと、税金の計算はいつまでたっても終わらないということになってしまいます。

利益100-税金30=70。70にまた30%を乗じると・・・終わらない。

何が言いたいかというと。このとき、銭足らずの状況が発生しているということ。

利益は100。でも、おカネはそこから税金の30を払うからその分少なくなる。つまり、おカネは70です。

このときの100を「税引前利益」と呼び、70を「税引後利益」と見るワケですが。

税引「前」利益を見て、「その分のおカネが残っているんだぁ!」と喜んでしまうことが少なくありません。税金をお忘れなく。

利益の分だけおカネがあるわけでもない

「その分のおカネが残っているんだぁ!」がとんだヌカ喜びだとしても。

利益100で税金30ならば、とくに問題はないように思えます。だって、手元に70残るんだから。

ところが。そんなことを言っていては、ここまでのハナシはなんだったのか? ということになってしまいます。

もうだいじょうぶですよね?

利益とおカネの動きは一致しないのです。100%一致しないと言い切っていい。

利益100の分だけ、おカネも100あるわけではありません。その理由は5つ、ここまで説明をしてきたとおりです。

 

 

まとめ

利益とおカネの動きが一致しない5つの理由についてお話をしてきました。

途中でも触れましたが、損益計算書の利益を見ているだけでは、おカネの動きはわかりません。

税金が払えないっ!なんてことがないように、資金繰り表の大切さに気付いてください。

決してカンタンな話ではなく、多くの人や会社が悩んでいるところになります。

ひとつひとつの取引を、利益とおカネの動きとを切り分けて考えるクセをつけるようにしてみましょう。

少しづつでも理解が進む、理解が早まるようになるはずです。

 

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  きょうの執筆後記
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