”あれ、お客さまからの売上入金が多すぎる”あるいは”少なすぎる”という場合。
帳簿つけ(経理)の「仕訳」はどうしたらよいのか? 6つのパターンについてお話をしていきます。
売上代金の入金が多すぎた・少なすぎたときの対応は6パターン
商売をしていれば付いて回るのが「売上代金の入金」です。
売り上げたら請求をして、請求をしたら入金があって。ということの繰り返しです。
では、その「売上代金の入金」について。請求金額より入金が多すぎる、あるいは、少なすぎるという場合。つまり、売上代金の入金間違いがある場合。
帳簿つけ(経理)をするときの仕訳はどうしたらよいのか、お話をしていきます。
入金間違いへの「対応」によって、6つのパターンに分かれます。下図のとおりです ↓
それでは、順番に見ていきましょう。
売上代金の入金が多すぎた場合の仕訳
まずは、売上代金の入金が「多すぎた」場合について。その対応別に、3つのパターンを見ていきます。
下図のうち、赤色部分です ↓
次回に相殺する
売上代金の入金が「多すぎた」場合。継続的に取引をしているお客さまであれば、「次回に相殺」をする。という対応があります。
このときの仕訳について、売上時から順を追って見ていきましょう。はじめに、「売上時(請求時)」から ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | 摘要 | |
【売上時・1回め】 | 売掛金 | 50,000 | 売上高 | 50,000 | 〇〇商事 売上 |
続いて、「入金時」。入金が、5,000円多すぎたという例で ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | 摘要 | |
【入金時・1回め】 | 普通預金 | 55,000 | 売掛金 | 55,000 | 〇〇商事 入金(5,000円過入金) |
この時点で、「売掛金」の残高はマイナス 5,000円ですが保留します。続いて、次の「売上時(請求時)」 ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | 摘要 | |
【売上時・2回め】 | 売掛金 | 70,000 | 売上高 | 70,000 | 〇〇商事 売上 |
本来であれば、70,000円の入金をいただくところですが、すでに 5,000円を多く入金されていますから、65,000円を入金してもらいます ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | 摘要 | |
【入金時・2回め】 | 普通預金 | 65,000 | 売掛金 | 65,000 | 〇〇商事 入金(5,000円過入金分相殺) |
これで、〇〇商事の入金が「多すぎた」は解消します。
上記の例で、「売掛金」の残高はマイナス 5,000円の状態で決算日を迎えた場合。マイナスの残高はよろしくありませんので、次のような仕訳をしておくとよいでしょう ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | 摘要 | |
【決算日】 | 売掛金 | 5,000 | 預り金 | 5,000 | 〇〇商事 過入金分・科目振替 |
決算日が明けたら(期首)には、決算日とは逆の仕訳をして、元に戻しておきましょう ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | 摘要 | |
【期首】 | 預り金 | 5,000 | 売掛金 | 5,000 | 〇〇商事 過入金分・科目振替 |
返金する
売上代金の入金が「多すぎた」場合。継続的に取引をしているお客さまではない、あるいは、多すぎた金額が大きいときには「返金」する。という対応があります。
このときの仕訳について、売上時から順を追って見ていきましょう。はじめに、「売上時(請求時)」から ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | 摘要 | |
【売上時】 | 売掛金 | 50,000 | 売上高 | 50,000 | 〇〇商事 売上 |
これに対して、まさかのケタ違い入金… 実務ではときどきありますね、はい。 ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | 摘要 | |
【入金時】 | 普通預金 | 500,000 | 売掛金 | 500,000 | 〇〇商事 入金(450,000円過入金) |
この時点で、「売掛金」の残高はマイナス 450,000円になりますが。多すぎた分をすぐに返金します ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | 摘要 | |
【返金時】 | 売掛金 | 450,000 | 普通預金 | 450,000 | 〇〇商事 過入金分返金 |
これで、〇〇商事の入金が「多すぎた」は解消します。
ちなみに、上記の「返金時」の仕訳は、返金する際の振込手数料をお客さま負担にするケースです(お客さまが間違えたのですから、負担をしてもらうのがスジでしょう)。
振込手数料分も合わせて、多すぎた 450,000円を返金すると、上記のような仕訳になります。
もしも、こちらが負担をするというのであれば、仕訳は次のとおりです。ご参考まで ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | 摘要 | |
【返金時】 | 売掛金 | 450,000 | 普通預金 | 450,000 | 〇〇商事 過入金分返金 |
支払手数料 | 864 | 普通預金 | 864 | 振込手数料 |
頂戴する
売上代金の入金が「多すぎた」場合。継続的に取引をしているお客さまではない、かつ、多すぎた金額が少額であるようなときには、そのまま「頂戴」する。という対応があります。
このときの仕訳について、売上時から順を追って見ていきましょう。はじめに、「売上時(請求時)」から ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | 摘要 | |
【売上時】 | 売掛金 | 49,900 | 売上高 | 49,900 | 〇〇商事 売上 |
お客さまが請求金額を見間違えて、90円多く入金してきたというケース ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | 摘要 | |
【入金時】 | 普通預金 | 49,990 | 売掛金 | 49,990 | 〇〇商事 入金(90円過入金) |
この時点で、「売掛金」の残高はマイナス 90円になりますが。多すぎた金額を「頂戴する」ということで決着したのであれば ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | 摘要 | |
【売上時】 | 売掛金 | 90 | 雑収入(あるいは売上高) | 90 | 〇〇商事 過入金分・科目振替 |
これで、〇〇商事の入金が「多すぎた」は解消します。
売上代金の入金が少なすぎた場合の仕訳
まずは、売上代金の入金が「少なすぎた」場合について。その対応別に、3つのパターンを見ていきます。
下図のうち、赤色部分です ↓
次回に合算する
売上代金の入金が「少なすぎた」場合。継続的に取引をしているお客さまであれば、「次回に合算」をしてもらう。という対応があります。
このときの仕訳について、売上時から順を追って見ていきましょう。はじめに、「売上時(請求時)」から ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | 摘要 | |
【売上時・1回め】 | 売掛金 | 55,000 | 売上高 | 55,000 | 〇〇商事 売上 |
続いて、「入金時」。入金が、5,000円少なすぎたという例で ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | 摘要 | |
【入金時・1回め】 | 普通預金 | 50,000 | 売掛金 | 50,000 | 〇〇商事 入金(5,000円不足) |
この時点で、「売掛金」の残高は 5,000円ですが保留します。続いて、次の「売上時(請求時)」 ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | 摘要 | |
【売上時・2回め】 | 売掛金 | 70,000 | 売上高 | 70,000 | 〇〇商事 売上 |
本来であれば、70,000円の入金をいただくところですが、5,000円の不足がありますから、75,000円を入金してもらいます ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | 摘要 | |
【入金時・2回め】 | 普通預金 | 75,000 | 売掛金 | 75,000 | 〇〇商事 入金(5,000円不足分含む) |
これで、〇〇商事の入金が「少なすぎた」は解消します。
督促する
売上代金の入金が「少なすぎた」場合。継続的に取引をしているお客さまではない、あるいは、少なすぎた金額が大きいときには「督促」する。という対応があります。
このときの仕訳について、売上時から順を追って見ていきましょう。はじめに、「売上時(請求時)」から ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | 摘要 | |
【売上時】 | 売掛金 | 500,000 | 売上高 | 500,000 | 〇〇商事 売上 |
これに対して、またしてもケタ違い入金… やはり実務ではときどきあります ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | 摘要 | |
【入金時】 | 普通預金 | 50,000 | 売掛金 | 50,000 | 〇〇商事 入金(450,000円不足) |
この時点で、「売掛金」の残高 450,000円。少なすぎた分をすぐに督促して、入金してもらいます ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | 摘要 | |
【督促後に入金時】 | 普通預金 | 450,000 | 売掛金 | 450,000 | 〇〇商事 不足分入金 |
これで、〇〇商事の入金が「少なすぎた」は解消します。
負ける
売上代金の入金が「少なすぎた」場合。継続的に取引をしているお客さまではない、かつ、少なすぎた金額が少額であるようなときには、そのまま「負ける」。という対応があります。
このときの仕訳について、売上時から順を追って見ていきましょう。はじめに、「売上時(請求時)」から ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | 摘要 | |
【売上時】 | 売掛金 | 49,990 | 売上高 | 49,990 | 〇〇商事 売上 |
お客さまが請求金額を見間違えて、90円少なく入金してきたというケース ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | 摘要 | |
【入金時】 | 普通預金 | 49,900 | 売掛金 | 49,900 | 〇〇商事 入金(90円不足) |
この時点で、「売掛金」の残高は 90円になりますが。少なすぎた金額を、こちらが「負ける」ということで決着したのであれば ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 | 摘要 | |
【売上時】 | 雑損失(あるいは売上高) | 90 | 売掛金 | 90 | 〇〇商事 入金不足分・科目振替 |
これで、〇〇商事の入金が「少なすぎた」は解消します。
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まとめ
売上代金の入金が多すぎたとき・少なすぎたときの仕訳、についてお話をしてきました。
商売を続けていると、「入金間違い」はときどき起こります。
ときどき、であるために、仕訳に迷うところでもありますが。こちらの記事で、パターンに応じて確認をしてみましょう。