いかにして前向き・積極的・肯定的に生きるか? が書かれた本、『折れないこころをつくる言葉(中村天風さん)』をレビューします。
いろいろあるのが人生だからこそ「折れない」
きょう紹介する本は、
『折れないこころをつくる言葉』 中村天風さん(解説・池田光さん)
人生哲学の大家である中村天風さん(1876〜1968)の名言集です。
人間、生きていればいろいろあります。こころが折れそうになることもあれば、折れてしまったということもあるでしょう。
急にどした? と言われそうですが。わたしが人生に対していままさに、こころ折れている。というわけではございませぬ。
そもそも、折れる・折れない以前に。日々いろいろあるなかで、多かれ少なかれ「浮き沈み」くらいはあるものです。
そんな浮き沈みを、とくに「沈み」を放っておくから、「沈み」に無防備だから、こころ折れやすくもなるのではないか?
また、「浮き」にまかせるのもアブナイもので。浮かれすぎてスッテンコロリン、気がつけば「沈み」に落ちていた… ということもありえます。
と、いろいろあるのが人生だからこそ。人生に対する「こころの備え」として、おすすめの1冊です。
中村天風さんの 150の名言それぞれが、見開き1ページに解説付きで掲載されています。
通読する、というよりは。毎日、夜寝る前にでもパラパラとめくって見て、目に飛び込んできた名言を読む。こころに沁みるわぁ… みたいな読み方がおすすめです。
ハードカバーの重厚な装丁がまた、「座右の書」的な存在感を醸し出しております。
このあとは、わたしが本書から選んだ「名言」をご紹介しながらレビューします。
感情をひきずらない
『折れないこころをつくる言葉』から選んだ、中村天風さんのひとつめの名言はこちら ↓
悲しいときに、心まで悲しむ必要はなかろう。
中村天風さんの数ある名言のなかでも、わたしがとくに好きな名言のひとつです。
言葉尻だけを見ていると、「なんとまぁ、非情なことか」と思われるかもしれませんが。
その逆です。
悲しむときには徹底的に悲しむ。じぶん自身が悲しみになりきるまでに悲しむ。
そのようにして、徹底的に悲しんだあとは、その悲しみをひきずらない。悲しみにいつまでもとらわれないように。という名言です。
裏を返せば、悲しむべきときに悲しむことが不十分だから、いつまでも悲しみをひきずってしまうとも言えるでしょう。
悲しみの感情を持つのが人間ですし、人生には悲しみのときも訪れます。いっぽうで、それにとらわれない・ひきずられない。
これは「悲しみ」の感情だけではなく、怒りやら、憂いやら、妬みやらの感情も同じことですね。
ネガティブな感情をいっさい持たない、なんてことはできませんが。ひきずらない、ということであれば心がけることはできる。わたしはそう考えています。
ツイているかいないかは心持ちひとつ
続いての名言はこちら ↓
運命のよくないとき、運命にこだわれば、運命に負けてしまう。
よく「ツイていない」という言葉を見聞きします。わたしもまた、思わず言ってしまったり、思ってしまうことはありますが。
そんなことを言うもんじゃないよ、と中村天風さんはおっしゃっているわけです。
よくない出来事が起きたときに、「ツイていない」と恨みごとを言っていると、運命にこだわることになる。運命に負けたことになる。結果として、なんでも運命に逃げてしまいます。
なので、「ツイていない」とは言わない。むしろ、「こんなもんで済んでよかった」と切り替える。運命にこだわらないようにする。運命に逃げない、運命に負けない。
そう考えると、ツイているもいないも心持ちひとつです。だったら、なにごとも前向きにとらえるクセを身につけたほうがいいですよね。
心持ちひとつ、ということについて。次のような名言もあります ↓
生まれながらこうだと思えば、何でもねぇじゃねぇか。
かつて軍事探偵として満州に潜入した天風さんは敵に捕まり、7日ものあいだ首かせ手かせをはめられて、牢に閉じ込められたそうです。
身体の自由がきかず、精神も苦痛にある状況で、上記の名言を悟ったのだと解説されています。
ともすれば、心折れてしまうような苦境を、心持ちを変えて乗り切ったのです(のちに天風さんは仲間に助け出されます)。
平和に暮らすいまのわたしたちには、そこまでの苦境はなかなかありませんが。ときに苦しい、ときに厳しいと感じる状況はあるはずです。
そんなときにも、それはそれで「そういうもんだ」「あたりまえだ」と心持ちを変えることなら、誰にでもできます。
状況に屈すれば負けやすく、状況を肯定すれば勝ちやすい。天風さんはこうも言っています ↓
いやいやながら持ちゃ、半紙一枚だって荷になる。
たしかに。思えば「半紙一枚」の状況は、日々のなかにも決して少なくありません。心持ちを変えるチャンスはそこかしこです。
欲深く生きる
これまでとはちょっと違った視点の名言がこちら ↓
欲を捨てろなんて、そんな消極的な、できないことは大嫌いだ。
一般に、「欲」はあまりよろしくないもの、と捉えられています。欲を捨てよ、欲深く生きてはいけない。そんなハナシをよく見聞きしますよね。
天風さんは、逆。というのが、この名言です。
人間は欲があるから進化する。「たとえば、向学心という欲求を捨ててしまって、偉い人物になった人はいません。」と解説されています。
また、仮に欲を絶ちたいという修行者がいたとしても、「欲を捨てたいというのが欲じゃないか」と天風さんは指摘をしていたといいます。
そもそも欲を捨てることはかなわず、欲が悪いわけでもない。
ですから、じぶんの欲深さに悩んだり、欲に負けたと落ち込むこともないだろう。むしろ、欲深く生きよ、とわたしは解釈をしています。
この点で、天風さんは「欲は欲でも、高級な欲を持つように」とも言っています。ただ欲を持て、という話ではないわけです。
高級な欲とは、向上につながる欲や、社会・人のためになる欲。対して、低級な欲は、一時的な快楽や、じぶんだけの利益を求める欲を指しています。同じ「欲」でもいろいろあるもので。
それはそれとして。欲は捨てずに、より高級な欲へと上昇させればいい。というのが、天風さんの教えです。
凡人のわたしには「欲を捨てる」ことなどできませんが、いまある欲を、良い欲に上昇させることなら努力ができそうです。
このように「実践可能な哲学」が濃縮された1冊。あなたの「折れないこころをつくる言葉」がきっと見つかるのではないでしょうか。