決算書を銀行に見せたことはありますか?
見せたことがないのであれば。そこには、いくつかの問題があるかもしれません。というお話です。
決算書を1度も銀行に見せたことがない会社には問題がある
突然ですが。自社の決算書を銀行に見せたことはありますか?
もしも「見せたことがない」のであれば。そこにはいくつかの問題がある、というお話をしていきます。
その問題とは、次の3つです ↓
- 銀行からの信用を得られない
- 震災時など不測の事態に危機を招く
- 決算書が税金計算にしか使えない
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
《問題1》銀行からの信用を得られない
会社が銀行から融資を受けようとするときには、決算書を見せる必要があります。
銀行は、融資の可否を判断するにあたって、決算書を重視しているからです。
この点で、「銀行に決算書を見せたことがない」という会社は、「銀行から融資を受けたことがない」ということになります。
銀行から融資を受けたことがない、つまり、無借金の会社と言ってもさまざまで。黒字の会社もあれば、赤字の会社もあります。
どちらが「より危ないか?」と言えば後者、赤字の会社でしょう。
このような会社が、あるとき、「やっぱりこれはキツイ。銀行からおカネを借りよう」と考えたときに問題が起こります。
銀行からはさっそく決算書を求められるわけですが、銀行もはじめてその会社の決算書を見るものですから審査に時間がかかります。
ついでに赤字なので「ほんとうに貸してもだいじょうぶだろうか?」と審査も慎重になるでしょう。
結果、借りることができないかもしれない。借りることができたとしても、時間がかかって手遅れになってしまうかもしれない。これは問題です。
じゃあ、黒字の会社ならだいじょうぶかと言えば、そうでもありません。
やはり、銀行もはじめてその会社の決算書を見るものですから審査には時間がかかります。
そして、銀行はこんなことも考えます。「黒字ではあるけれど、実は融資が受けられない事情があるのではないか?」
たとえば、粉飾決算(利益の水増し)をしているとか、社長個人に多額の借金があるとか。
こららの事情を、実は他の銀行は知っているから貸さない。だからウチの銀行に来たのではないか。怪しい。だったらウチも貸すのはやめておこう、みたいな。
黒字続きの会社ほど、無借金の会社ほど、その怪しさが際立って見えてしまうのが銀行の性(さが)というものです。
さきほど、銀行は融資の可否を判断するにあたって決算書を重視している、という話をしました。
銀行は決算書を起点、あるいは基点にして(決算書だけではありませんが)、会社の信用を評価しています。
したがって、「銀行に決算書を見せたことがない」という会社は、銀行からの信用が得られていない状況にある、と認識をしておきましょう。
《問題2》震災時など不測の事態に危機を招く
いましがた、こんなことを言いました ↓
「銀行に決算書を見せたことがない」という会社は、銀行からの信用が得られていない状況にある。
と言うと、「いやいやウチは当面のおカネもあるし、銀行からの信用が無くてもかまわない」と思われるかもしれません。
ところが、それでも問題が起きるケースがあります。震災など、いわゆる「不測の事態」が発生したときです。
このようなときには、当面のおカネはなんとかなっても、その先のおカネが足りなくなることが考えられます。なにしろ「不測の事態」だからです。
いっぽうで。震災などに対しては、国を中心とした危機対応がとられます。不測の事態で困っている会社を救済・支援しようという対応です。
けれども過去のできごとを見る限り、危機対応が「実行」されるまでには時間がかかります。実際、東日本大震災では半年以上かかっています。
そのあいだ、会社は「自力」でなんとかしなければいけません。
しかしながら、半年以上ものあいだ、不測の事態を自力で耐えるのはなかなか難しいことです。
「それなら銀行から融資を受けようか」となるわけですが。「銀行に決算書を見せたことがない」という会社は、ここで問題が起こります。
もちろん、銀行は銀行で融資をしているわけですが、「優先順位」というものがあります。
不測の事態には融資の依頼が殺到するものであり、銀行はその対応に追われることになる。いっぺんに対応はできないから、順番に対応することになる。
では、「銀行に決算書を見せたことがない」という会社はどうでしょう?
そのような会社には「信用」が無く、審査にも時間がかかることはさきほど話をしたとおりです。当然、優先順位は下がります。後回しです。
順番を待つあいだは、やはり「自力」でなんとかするしかありません。
不測の事態が起きない、などとは誰にも言えないものです。であるならば、「銀行に決算書を見せたことがない」は、不測の事態に危機を招くと認識しておきましょう。
《問題3》決算書が税金計算にしか使えない
会社が支払う税金(法人税)を計算するにあたっては、決算書が元になります。
決算書のなかにある損益計算書の末尾「税引後当期純利益」を元にして、税金を計算するしくみです。
端的に言えば、利益が多いほど税金は高くなり、利益が小さいほど税金は安くなります。赤字になると、税金はありません。
この点で。利益が出てているときには、積極的に経費を増やして利益を圧縮。会社は税金を抑えようとします。
たとえば、減価償却費や引当金を上限額まで経費計上する。また、決算日現在の未払金・未払費用をきちんと計上するなどして経費を増やします。
逆に利益が出ていないとき、とくに赤字のときなどはどうかと言うと。
減価償却費や引当金はあまり計上しない、あるいはまったく計上しない。未払金・未払費用も同じ。あまり計上しないか、まったく計上しないか。
赤字のときには経費を増やしたところで「税金ゼロ」に変わりはなく、ムリに経費を増やす意味もないからです。だから、本来計上すべき経費でも計上しないものがある。
税金が正しく計算されていればOK、という会社の決算書がこうなります。言うなれば、税金計算ありきの決算書です。
ところが。銀行はそのような決算書を良し、とはしません。
経費を計上したりしなかったりでは、まともな利益計算ができないからです。
銀行は融資の可否を判断するにあたり、「返済するのにじゅうぶんな利益があるか」「その利益の計算は正しく行われているか」を見ています。
ゆえに、銀行に決算書を見せるとなると、税金計算ありきの決算書をあらためることになります。
黒字であろうと赤字であろうと、計上すべき経費はきちんと計上する。そういう決算書をつくることになります。
なんだか銀行のために決算書をつくっているような気持ちになるかもしれませんが、それは会社のためでもある。と、気がつくべきところです。
経費を計上したりしなかったりの利益を見ていたのでは、会社自身が自社の状況を見誤ってしまうから、ひいては正しい判断をできなくなってしまうからです。
銀行が見ている「じゅうぶんな利益があるか」「その利益の計算は正しく行われているか」は、会社にこそ必要な視点だと言えるでしょう。
中小企業の場合、第三者(税務署を除く)に見せることもない・見せる必要もないために、税金計算ありきの計算書になちがちだ、という問題があります。
「銀行に決算書を見せたことがない」という会社には、そのような問題があることも認識しておきましょう。
まとめ
決算書を1度も銀行に見せたことがない会社が抱える3つの問題についてお話をしてきました。
銀行に決算書を見せたことがあるというのは、銀行から融資を受けた・受けようとしたことがある会社です。
借金はしないほうがいい、との考えもありますが。融資を受けない、決算書を銀行に見せないことで抱える問題については押さえておきましょう。
- 銀行からの信用を得られない
- 震災時など不測の事態に危機を招く
- 決算書が税金計算にしか使えない