「値引き販売」や「安売り」といった意味が含まれる「セール」。買う側からすると、心躍るものではありますが。売る側はいっしょに喜んでばかりもいられません。
というわけで。セールをしない・するのをおすすめしない3つの理由について、お話をしていきます。
セールで買いたい。でも、セールで売りたくない。
きょうは 2021年1月1日です。年始めというと、あちこちで「初売りセール」を見かけますよね。
この「セール」には、「値引き販売」や「安売り」といった意味が含まれるわけで。買う側からすると、心躍るものではありますが。売る側はいっしょに喜んでばかりもいられません(たくさんお客さまが来る、たくさん売れて喜びがちです)。
わたし自身、じぶんが売る商品・サービスの「セール」をしないし、また、「セール」するのをおすすめもしていない。その理由についてお話をしていきます。ぜんぶで3つ、こちらです↓
- 定価で買ったヒトに申し訳ない
- 定価で買ってもらえなくなる
- セールが売るための方法になる
もちろん、「セールをしたほうがいい」という意見そのものを否定するつもりはありません。売り方はそれぞれ、考え方はそれぞれです。
ただそれでも、3つの理由についていちどは検討してほしい、との意図でお話をしていきます。それではこのあと、順番に見ていきましょう。
セールをしない・するのをおすすめしない3つの理由
定価で買ったヒトに申し訳ない
セール(値引き・安売り)をするからには「定価」があります。たとえば、「定価 10,000円の商品がいまなら3割引」といった具合です。
これは、「定価で買ったヒトもいる」ことをあらわしています。セールがはじまる前、定価 10,000円で買ったヒトが、3割引で買えることを知ったらどうでしょう?
きっと、「なんだか損した気分」になりますよね。
ほしいときに買えたのだから満足している、という考え方もできますが。それでも心のどこかには、「あぁ、3割引きで買えていたらなぁ」との思いだってあるのではないでしょうか。
そう考えると、「せっかく定価で買ってくれたヒトに申し訳ない」というのがセールです。
と、言うと。鮮度が落ちたり、劣化・陳腐化したモノ(あるいはサービス)を売るのだから、セールは妥当だとの意見が出てきます。自社やブランド、商品の認知度を上げるためのセールだとの意見もあるでしょう。
これらは一見すると正しいようで、実はそうとも言い切れません。
そもそも、鮮度が落ちたモノや劣化したモノを売るべきなのかどうなのか? むしろ、鮮度が落ちる前・劣化する前に売り切るべきであり、そのための方法を考えるべきではないのか?
また、各種の認知度を上げるにしても、セール以外の方法はあるはずです。にもかかわらず、なぜセールを選ぶのか? セールがベストな方法だと言えるのか?
と、聞かれると。「う〜ん」と腕組みをしたまま沈黙してしまうケースは少なくありません。
セールは比較的かんたんに実行できる方法であるがゆえに、かんたんに選択をしてしまいやすいのです。いろいろと考えるのがメンドーで、考えることを放棄するためのセールになっていないか。自問してみましょう。
定価で買ってもらえなくなる
さきほど、こんなハナシをしました。定価でモノを買ったヒトが、セールで安くなっているのを見ると、「なんだか損した気分」になる。というハナシです。
こういったヒトたちが、その後に考えることとして「セールになるまで買わない」があります。いずれセールで安くなるまで待ってから買おう、みたいな。
セールが常態化・定期化しているようなモノやサービスであるほど、そのような考え方(セールになるまで待つ)は、より顕著になるでしょう。
結果として、定価が定価ではなくなります。セール価格のほうが定価のようになってしまいます。買う側にとって、定価は買うべき価格ではなく、セール価格が買うべき価格になってしまう。
もちろん、なかには定価で買ってくれるヒトもいるでしょうが、割合としては少なくなるはずです。
すると、当然、売る側の利益は減ってしまいます。本来 10,000円の価値があるモノを3割引で売れば、3,000円の利益が減る。その分、商売は厳しくなることを考えておかなければいけません。
セールで減ってしまった利益を補てんするためには、もっと数を売るとか、もっとコストを減らすなどしなければならないからです。
加えて、自社やブランドのイメージ、商品価値が傷つくことも見逃せません。セールの常態化・定期化によって、「安物」と見られたり、「安かろう悪かろう」と見られることもあるでしょう。
いやいや、ウチは品質に自信がある! と思われるかもしれませんが。セールで減った利益を補てんするために、コストを減らす必要があるのはさきほどお話をしたとおりです。
安売りを繰り返すことで、コスト削減を余儀なくされる。じゅうぶんなコストをかけられないから、品質を落とさざるをえなくなる。まさに、安かろう悪かろうになってしまう。これは、中小企業によく見られるケースです。
大企業であれば、規模や資本力にものを言わせて、「大量生産によるコスト削減」を実現できます。けれども、規模や資本力で劣る中小企業にはそれができません。
安売り戦略は、中小企業になじまないことを理解しておきましょう(大企業もまた、とるべき戦略ではありませんが)。
セールが売るための方法になる
さきほど、セールをすると利益が減ってしまう、というハナシをしました。そんなことはわかっているはずなのに、それでもセールをする理由のひとつに「たくさんお客さまが来る・たくさん売れる」があります。
セールをすると、そのお買い得感から、ふだんよりもたくさんお客さまが来るし、たくさん売れもする。だから、売る側は「商売繁盛」しているように感じてしまう。
ところが、実際にフタを開けて見ると。あんなに売れたわりに、利益はそうでもなかったなぁ… ということは少なくありません。
むしろ、セールしないほうが利益は多かったのではないか? ということさえあります。これでは、骨折り損のくたびれ儲け。貧乏暇なし、です。
たとえば、定価 10,000円、原価 6,000円、つまり利益 4,000円の商品があったとして。セールにつき、3割引の 7,000円で売ったとします。
もし、セールをせずに 10個売れるとしたら。利益は、40,000円です(4,000円×10個)。では、これをセールで売った場合に、同じだけの利益を得るのに何個売ればよいのでしょうか?
まず、セールをした場合の商品1個あたりの利益は 1,000円です(セール価格 7,000円−原価 6,000円)。したがって、40,000円の利益を得るには、40個売る必要があります(40,000÷1,000円)。
セールをしなければ 10個売ればいいのに。セールをすると 40個も売らなければいけない。実に4倍です。
40個も売れると「儲かった気分」にもなるでしょうが、利益は 10個売ったときと同じ。40個売れればいいですが、セールをしても 30個くらいしか売れないかもしれません。
そのときは、フツーに 10個だけ売ったほうがよかった… あんなに一生懸命売ったのに… ということになってしまいます。まさに、骨折り損。まさに、貧乏暇なしです。
こんなことになってしまうのは、「たくさんお客さまが来る・たくさん売れるのがいちばん」との考え方にあります。言い換えると、とにかく売上がいちばん、売上至上主義です。
そうなると、セールが売るための方法になってしまいます。セールをすれば売れる、だからセールを繰り返す。気づいたら、利益が減っているうえに、商品価値が傷ついていたり、品質が落ちていたり…
結果として、売れにくくなる。売れないから、もっとセール(値引き・安売り)をする。完全に悪循環です。セールが売るための方法になっていないか? 考えてみましょう。
まとめ
買う側からすると、心躍るものではありますが。売る側はいっしょに喜んでばかりもいられないのがセールです。
セールをおすすめしない3つの理由について、いちどは確認をしておきましょう。
- 定価で買ったヒトに申し訳ない
- 定価で買ってもらえなくなる
- セールが売るための方法になる