各銀行の融資残高に合わせて、会社が調整すべきことがあります。
それができていないと、融資が受けにくくなったり、融資条件が悪くなったりすることがあるので気をつけましょう。というお話です。
各銀行の融資残高を把握してるいるだけではダメ。
会社が銀行から融資を受けるうえで注意すべきものに、「融資残高」があります。
複数の銀行から融資を受けている場合に、それぞれの銀行に対する融資残高はいくらなのか? これに注意が必要です。
ではなぜ、注意が必要なのか。その理由は、各銀行の融資残高に合わせて、会社が調整をすべきことがあるからです。具体的にはこちらの3つになります↓
- 預金残高
- 振込手数料
- 折り返し融資
これらのことを、各銀行の融資残高に合わせて調整をしていないと、融資が受けにくくなったり、融資条件が悪くなったりすることがあります。
そのようなことを避けるためにも、各銀行の融資残高の把握と、上記3つの調整を検討するようにしましょう。
それではこのあと、順番に見ていきます。
各銀行の融資残高に合わせて会社が調整をすべき3つのこと
【調整1】預金残高
各銀行の融資残高に合わせて会社が調整をすべき3つのこと。まず1つめは、「預金残高」です。たとえば、次のような融資残高の会社があったとします↓
- A銀行の融資残高 … 5,000万円(融資残高の割合 50%)
- B銀行の融資残高 … 3,000万円(融資残高の割合 30%)
- C銀行の融資残高 … 2,000万円(融資残高の割合 20%)
上記のとおり。各銀行の融資残高がそれぞれ、A銀行が 5,000万円、B銀行が 3,000万円、C銀行が 2,000万円。融資残高は合計で1億円という会社になります。
したがって、ぜんぶで1億円の融資残高に対する、各銀行の融資残高の割合は、A銀行が 50%、B銀行が 30%、C銀行が 20%です。
ではもし、この会社にぜんぶで 3,000万円の預金があるとしたら。次のように預金残高を調整しましょう、ということになります↓
- A銀行 … 1,500万円(預金 3,000万円 × 融資残高の割合 50%)
- B銀行 … 900万円(預金 3,000万円 × 融資残高の割合 30%)
- C銀行 … 600万円(預金 3,000万円 × 融資残高の割合 20%)
さきほど、A銀行の融資残高の割合は50%であることを確認しました。その融資残高の割合を、おカネ 3,000万円に掛け算します。その結果である 1,500万円をA銀行に預ける。
同じように考えて、B銀行には 900万円、C銀行には 600万円のおカネを預けましょう。これが、融資残高に合わせて預金残高を調整する、ということです。
ではなぜ、こんなことをするのか?
理由はいくつかありますが、大きなものをひとつ挙げるとすれば。それは、銀行が「保全」を考えているからです。
銀行が融資をするときには、必ず「保全」を考えています。保全、つまり、貸したおカネの安全を守るためにどうするか、ということです。
この点で。預金口座におカネがあれば、その銀行は「安心だ」と考えることができます。
実際に、預金を担保にまでとらなくても、そこにおカネがあるわけですから。そのおカネで返済をしてもらえる、だから安心だ。銀行はそう考えます。
逆に、その銀行の預金口座におカネが無ければどうでしょう?
どこかにおカネがあるのか無いのかもよくわかりませんし、貸したおカネを返してもらえるかもわからず不安になりますよね。
ですから、銀行は「預金があれば安心だ」と考える。銀行が安心できれば、融資をしやすくもなる。これを覚えておきましょう。
安心をするために、どの銀行も預金を欲しがっているのですから。どの銀行に対しても公平になるように、融資残高に合わせて預金を調整する、ということになります。
もちろん、さきほどの例のように、融資残高に合わせてキレイにピッタリ預金を調整することは現実的ではありません。ただそれでも、できるだけ合わせるようにするところに意味がある。そう考えておきましょう。
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【調整2】振込手数料
各銀行の融資残高に合わせて会社が調整をすべき3つのこと。2つめは、「振込手数料」です。
銀行は、会社におカネを貸して、利息収入を得ることを商売にしています。とはいえ、おカネを貸すことは、銀行の商売のひとつに過ぎません。
銀行には利息収入のほかにも、収入はあるわけで。そのひとつが、振込手数料です。預金口座内の決済取引(売上代金の入金や仕入代金・経費の支払など)が多いほど、銀行は振込手数料を稼ぐことができます。
たとえば、月に1万円の振込手数料を支払っている会社があったとして。銀行に支払う振込手数料は、年間で 12万円です。
いっぽうで、1,200万円のおカネを金利1%で貸したときに、銀行が受け取る利息収入は年間でおおよぞ 12万円になります(返済が進むと減っていきます)。
銀行にとっては、どちらも同じ 12万円の収入です。けれども、その12万円の収入を得るための「コスト」を考えるとどうでしょう?
おカネを貸すためには、銀行員が会社に足を運ばなければいけません。そのうえで必要な書類を準備して、審査もしなければいけません。融資をしたらしたで、その後に回収できなくるリスクもある。
これに対して、振込手数料はどうでしょう。おカネを貸すことに比べたら、ほとんどコストはかからないと言えます。だから、銀行は振込手数料が欲しいのです。
当然、どこの銀行も同じように欲しいわけなので、融資残高に応じて振込手数料を調整するのがよい、ということになります。つまり、決済取引する口座を融資残高に合わせて調整する。
振込手数料が多い銀行であれば、銀行にとっては「お得意さん」ですから、融資を検討しやすくなります。融資が受けにくい赤字のときにでも、検討してもらえる可能性が高くなることを覚えておきましょう。
また、お得意さんなのであれば、会社はその銀行に対して、金利その他の融資条件を交渉しやすくもなります。支払っている振込手数料の金額も見ながら、銀行交渉も考えてみるとよいでしょう。
【調整3】折り返し融資
各銀行の融資残高に合わせて会社が調整をすべき3つのこと。3つめは、「折り返し融資」です。折り返し融資とは、当初借りていた金額まで借り直す融資を言います。
当初 1,000万円借りて、そのあと毎月返済を続けて 600万円まで残高が減った。そこで、400万円を借りて、もういちど残高を 1,000万円に戻す。これが、折り返し融資です。
借りた実績がある金額までの融資であることから、比較的受けやすいのが折り返し融資の特徴になります。返済を続けていれば、会社は手元のおカネが目減りしていくので、定期的に折り返し融資を受けるのがセオリーです。
この点で。折り返し融資の順番には気をつけなければいけません。次のような会社の例で考えてみましょう↓
- A銀行の融資残高 … 5,000万円(融資残高の割合 50%)
- B銀行の融資残高 … 3,500万円(融資残高の割合 35%)
- C銀行の融資残高 … 1,500万円(融資残高の割合 15%)
銀行は「融資残高の割合」を気にしています。ほかの銀行には負けたくない、という思いで融資残高の割合を常にチェックしています。
では、この会社がB銀行で折り返し融資を受けて、B銀行の融資残高が 5,500万円になった場合はどうでしょう。いままで融資残高の割合が一番だったA銀行は一番でなくなってしまいます。
A銀行に「ウチが一番だ(≒メインバンクだ)」との自覚があれば、これはおもしろくないでしょう。とくに、このような状態のまま決算日を迎えてしまうと、決算書(勘定科目内訳明細書)にも記録が残ってしまいます。
銀行の機嫌を損ねるのもよいことではありませんから、気をつけるべきところです。
したがって、折り返し融資を受けるのであれば、融資残高の割合が大きいところから順番に進めていくようにしましょう。折り返し融資がしやすいところから進めていくと、思わぬトラブルになりかねません。
似たようなことで言うと、借り換えにも注意が必要です。B銀行がC銀行の融資もまとめて融資をしてくれる。いわゆる借り換えによって、これまで一番だったA銀行の融資残高をB銀行が抜いてしまう… これもA銀行にとっては、おもしろくないことに当たります。
まとめ
各銀行の融資残高に合わせて、会社が調整すべきことがあります。
それができていないと、融資が受けにくくなったり、融資条件が悪くなったりすることがあるので気をつけましょう。
- 預金残高
- 振込手数料
- 折り返し融資