事業再構築補助金の「指針」の公表により、「事業再構築」の「類型」と「要件」があきらかになりました。
というわけで。本記事のフローチャートなどを見ながら、自社の取り組みが「どの類型にあてはまるのか?」「満たすべき要件はなにか?」を確認していきましょう。
まずやるべきは類型と要件の確認です。
きょうは 2021年3月19日。つい先日、事業再構築補助金の「指針」が公表されました。これにより、補助金の対象になる「事業再構築」の「類型」と「要件」があきらかになったところです。
「類型」とは、事業再構築の種類のようなものであり、ぜんぶで5つあります。その5つの類型に対して、それぞれ満たすべき「要件」が決められています。
というわけで。事業再構築補助金を検討するのであればまず、自社の取り組みは「5つの類型のうちどれにあてはまるのか?」を確認しましょう。そのうえで、「補助金申請をするのに、どの要件を満たす必要があるのか? 満たすことができるのか?」を確認していく流れになります。
事業再構築補助金の「指針」については「手引き」も公表されているところですが。わたしのほうで、フローチャートにするなど、見やすさをくふうしてみました。
それではこのあと、類型と要件とを確認していきましょう。
事業再構築の5類型をフローチャートで確認する
さっそく、事業再構築の5類型をフローチャートで見てみましょう。こちらです↓
フローチャートのとおり、事業再構築の類型は「事業再編」「業種転換」「事業転換」「新分野展開」「業態転換」の5つです。フローチャートに沿って、説明をしていきます。
組織再編をともなう
自社の取り組みが「組織再編をともなう」場合には、5類型のうち「事業再編」に該当する可能性があります。ちなみに、「組織再編」とは、合併や会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡です。
その組織再編をともない、かつ、このあと説明をする4類型のいずれかを行う場合には、自社の取り組みは「事業再編」の類型にあてはまることになります。
4類型のいずれにあてはまるかは、次以降のフローチャートで確認をしていきましょう。
主たる業種を変更する
組織再編をともなう取り組みではない場合(あるいは、組織再編をともない、かつ、4類型のいずれに該当するかを確認する場合)。自社の取り組みが「主たる業種を変更する」ものであるかを確認します。
ここで言う「業種」とは、「日本標準産業分類の大分類」のことです。自社の事業が大分類のなにに該当するかはネットで検索してみましょう↓
たとえば、ラーメン店だと、大分類は「宿泊業,飲食サービス業」です。
自社の取り組みによって、主たる業種(日本標準産業分類の大分類)が変わるということであれば、「業種転換」の類型にあてはまることになります。
主たる事業を変更する
日本標準産業分類には、前述の大分類の内訳として「中分類・小分類・細分類」があります。それら「中分類・小分類・細分類」が、事業再構築で言うところの「事業」です。
したがって、自社の取り組みによって、主たる事業(日本標準産業分類の中分類・小分類または細分類)が変わるということであれば、「事業転換」の類型にあてはまることになります。自社の事業が中分類・小分類・細分類のなにに該当するかは大分類と同じく、ネットで検索してみましょう↓
たとえば、ラーメン店だと、中分類は「飲食店」、小分類は「専門料理店」、細分類が「ラーメン店」です。
新たな市場に進出する
ここまで見てきた、「主たる業種・主たる事業」にはいずれも変更がない。そのうえで、新たな製品を製造・新たなサービス提供をすることで、新たな市場に進出する場合。その取り組みは、「新分野展開」の類型にあてはまります。
例としては、「航空機用部品を製造していた製造業者が、新たに医療機器部品の製造に着手する場合」が挙げられています。
製造方法を変更する
ここまで見てきた類型にはあてはまらない。そのうえで、自社の取り組みが、製品の新たな製造方法・サービスの新たな提供方法をともなう場合には、「業態転換」の類型にあてはまることになります。
ここで言う「新たな」とは、「相当程度の変更」とされており、小手先の変更ではあてはまらないことに注意が必要です。
従来の製造方法により、製造量を増やすだけ(店舗を増やす)、従来の製造方法にちょっと手を加えただけ(ポイント制度を導入する)、従来の製造方法を組み合わせただけ(すでに別々に手掛けているネット販売とサブスクを組み合わせる)、などではダメだとされています。
5類型それぞれの要件を一覧表で確認する
事業再構築の5類型が分類できたところで、次は、5類型それぞれが満たすべき「要件」を確認していきます。こちらの一覧表にまとめてみました↓
黒丸がついているところが、それぞれの類型が満たすべき要件になります。要件をクリアしていなければ、事業再構築補助金の申請ができませんので、しっかりと確認をしていくようにしましょう。
ぜんぶで5つある要件(一覧表の横軸)について、このあと説明をしていきます。
製品等の新規性要件
以下の4つすべてを満たすこととされています↓
- 過去に製造等した実績がないこと
- 製造等に用いる主要な設備を変更すること
- 競合他社の多くが既に製造等している製品等ではないこと
- 定量的に性能又は効能が異なる
なんのこっちゃ? という感じもありますので、それぞれ補足をすると…
- は、過去に製造したことがないものを製造しなければならないということ。ちなみに、製造業以外の場合には、同じ商品やサービスであっても、「業態転換」として後述の「設備撤去・デジタル要件」を満たすことでクリアできます。
- は、従来からある自社の事業に利用できるような設備投資はダメだ、ということです。それだと、新たな製品をつくっているとは言えないからですね。例として、「これまでケーキを焼いていたオーブンを、新商品のプリンづくりに使用する場合」が挙げられています。
- すでにある競合他社の多くが、すでに取り組んでいるものはダメだ、ということです。例として、「ケーキをつくってきた会社が、すでに競合他社がやっているにもかかわらず、新たにプリンを製造する場合」が挙げられています。実際には、競合他社をリサーチする必要があるでしょう。
- 従来からある製品など(商品やサービス含む)と新たな製品などとを比較しなさい、ということです。強度、耐久性、軽さ、加工性、精度、速度、容量とか。ただし、定量的に計測できない場合には比較できなくてもしかたない、とのこと。
市場の新規性要件
具体的には、以下の2つが挙げられています↓
- 既存製品等と新製品等の代替性が低いこと
- 既存製品等と新製品等の顧客層が異なること(任意要件)
これらも補足をすると…
- は、平たく言うと、取り組みによって新たな製品など(商品やサービス含む)を販売することで、従来の製品などの売上高が減少するようだとダメだ、ということです。むしろ、相乗効果で従来の製品も売上が上がるくらいのものがよいでしょう。ダメな例としては、「アイスクリームを売っていた会社が、かき氷を販売する場合」が挙げられています。
- は、任意要件なので、満たすことができれば審査で有利になるでしょう。新たな製品などによって、新たな顧客層を開拓できるかどうか? ということです。要件を満たす例として、「ウィークリーマンション(地方のビジネスマン向け)を営んでいた会社が、レンタルオフィス業(近隣のビジネスマン向け)をはじめる場合」が挙げられています。
設備撤去・デジタル活用要件
「業態転換」の類型における「非製造業」の場合に満たすべき要件です。
従来の設備の撤去や、従来の店舗の縮小などをともなうもの。または、非対面化、無人化・省力化、自動化、最適化などデジタル技術の活用をともなうものがあてはまります。
例として、「リアル店舗のみでヨガ教室を運営していた会社が、店舗を縮小・設備を撤去。非対面化や無人化、省力化をはかるためにシステムを活用したオンライン専用のヨガ教室をはじめる場合」が挙げられています。
売上構成比要件
「業種転換」「事業転換」の類型では、売上構成比要件が求められています。
これは、3〜5年間の事業計画期間終了後、新たな製品など(商品やサービス含む)の売上高が、全売上高のなかでもっとも高い構成比となる計画にしなさい、ということです。
これは相当に高いハードル、と言ってよいでしょう。
売上10%要件
「新分野展開」「業態転換」の累計では、売上10%要件が求められています。
これは、3〜5年間の事業計画期間終了後、新たな製品など(商品やサービス含む)の売上高が、全売上高の 10%以上となる計画にしなさい、ということです。
この要件については、10%をクリアすればOKというだけではなく、大きな割合であればあるほど、審査では有利になるものと考えておきましょう。
まとめ
事業再構築補助金の「指針」の公表により、「事業再構築」の「類型」と「要件」があきらかになりました。
まずは、自社の取り組みが「どの類型にあてはまるのか?」「満たすべき要件はなにか?」を、本記事のフローチャートなどで確認することからはじめましょう。