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社長の役員報酬を高くしろ!が財務的に間違いである理由

社長の役員報酬を高くしろ!が財務的に間違いである理由

社長の役員報酬はできるだけ高くしよう! みたいなハナシを見聞きすることがあります。

けれども、財務的に見ると間違っていることもある。その理由について、お話をしていきます。

目次

たしかに、ひとつの考え方ではあるけれど。

社長の役員報酬はできるだけ高くしよう! みたいなハナシを見聞きすることがあります。

たしかに、社長の役員報酬を高くすることは、ひとつの考え方です。けれども、社長の役員報酬を高くすることが、必ずしも正しいとは言えない。むしろ、財務的に見ると間違っていることもある。

その理由について、お話をしていきます。具体的には、次の3つです↓

社長の役員報酬を高くしろ!が財務的に間違いである理由
  1. 利益・内部留保が少なくなる
  2. 支払う所得税がもったいない
  3. 生活水準を戻すのがタイヘン

これらを知らずに役員報酬を高くした結果、あとで後悔をすることがないように。3つの理由を、このあと順番に確認しておきましょう。

社長の役員報酬を高くしろ!が財務的に間違いである理由

【理由1】利益・内部留保が少なくなる

社長の役員報酬を高くしろ!が財務的に間違いである理由、1つめ。それは、利益・内部留保が少なくなるからです。

言うまでもありませんが、「役員報酬」は費用です。社長の役員報酬を高くすれば、費用が増えるわけですから、その分だけ、会社の利益は少なくなります。

この点で。会社が銀行融資を受けようとするときに、銀行から見られるのは「利益」です。利益が多いほど融資が受けやすく、利益が少ないほど融資が受けにくくなる。

そう考えると、役員報酬を高くすることで、会社は「融資が受けにくくなる」と言えるでしょう。融資を受けられなければ、会社の資金繰りには悪影響。役員報酬を高くすることが、財務的に間違いだった… となりうるわけです。

もっとも、銀行だって「利益」ばかりを見ているわけではありません。「役員報酬+利益」を、その会社の「稼ぐチカラ」だという見方もしています。

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ただそれでも、まずは「利益」を見られるものだと考えておいたほうがいいでしょう。

また、銀行は融資審査をするにあたり、「利益」とあわせて「内部留保」も見ています。内部留保とは、貸借対照表の「利益剰余金」のことです。

端的に言うと、利益剰余金は「過去の利益の累積」になります。会社が創業してからいままで、合計でどれだけの利益をあげてきたのか? が、利益剰余金です。

その利益剰余金の金額が多いほど、財務基盤が安定していると見られることから、融資は受けやすくなります。逆に、利益剰余金の金額が少ないほど、財務基盤に不安があると見られるため、融資は受けにくくなります。

役員報酬を高くするということは、「利益を減らす」のと同時に、「利益剰余金も減らす」ということです。やはり、銀行からの融資を受けにくくしている。実際に、融資が受けられなくなるようでは、役員報酬を高くしすぎるのも問題だと言えます。

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【理由2】支払う所得税がもったいない

社長の役員報酬を高くしろ!が財務的に間違いである理由、2つめ。それは、支払う所得税がもったいないからです。

中小企業では、資金繰りが厳しくなると、社長が個人のおカネを会社に入れる(役員借入金)ということがよくあります。

この点で。社長の役員報酬を高くすれば、その分だけ、会社の現金預金は少なくなる。ゆえに、資金繰りは厳しくなりやすい、と言っていいでしょう。

では、これを「税金」の視点から見てみると。社長の役員報酬を高くすれば、社長が支払う所得税が増えます。そのうえで、「会社の資金繰りが厳しいから」と、社長が会社におカネを入れるのはどうでしょう?

社長が所得税を支払ってまで、会社におカネを戻したことになります。もし、役員報酬を高くしなければ、会社はおカネを持っていたわけですから、支払わなくても済んだ所得税です。所得税分だけおカネをムダにしたと考えると、財務的には間違いだった… と言えます。

とはいえ、役員報酬を高くすれば会社の利益が減って、法人税が安くなるだろう? と、思われるかもしれません。そのとおりです。けれども、役員報酬が高くなると、法人税率よりも所得税率のほうが高くなります。

するとやっぱり、所得税分だけおカネをムダにした… というケースはあるものです。

会社が支払う法人税を少なくするために、役員報酬を高くしようと考える社長がいます。極端を言えば、会社の利益がゼロになるように、役員報酬を高くする。これだと、法人税はゼロでも、所得税率が高くなり、支払う所得税がグッと多くなります。

会社を活かして節税したいのであれば、法人税を支払うことです。法人税率の低さを活かすことです。

役員報酬を抑えることで、社長個人の所得税率を引き下げる。役員報酬を抑えたことで、会社の利益は増えるけれど、所得税率に比べれば法人税率は低い。会社を活かした節税という点では、「法人税を払ってはじめて節税になる」と考えておきましょう。

なお、役員報酬を抑えたことで会社にたまったおカネは、社長の退職時に「退職金」として受け取ることができます。退職金は役員報酬に比べると、格段に所得税が少なくなるように優遇されているため、これもまた節税です。

ちなみに。役員報酬を高くするあまり、会社の資金繰りが厳しく、社長が会社におカネを入れてばかりいると。当然、役員借入金の金額はふくらんでいきます。役員借入金は、社長の側から見れば「貸付金」です。

その貸付金は、社長に万が一があった場合には「相続財産」になります。つまり、相続税の対象になるということです。残された家族にとって、思わぬ相続税負担が生じることもありますから気をつけましょう。

というように。役員報酬を高くすることで、税金が増える。税金が増えた分だけ、おカネが減る。財務的には間違いになりうる。と、理解しておきましょう。

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【理由3】生活水準を戻すのがタイヘン

社長の役員報酬を高くしろ!が財務的に間違いである理由、3つめ。それは、生活水準を戻すのがタイヘンだからです。

会社を続けていると、良いときもあれば悪いときもあります。悪いときというのは、おカネがないものです。そこで、社長は役員報酬を下げざるをえないことがあります。会社のおカネを減らさないように、役員報酬を下げるわけです。

ところが、それでも役員報酬を下げようとしない社長もいます。いまの生活水準を下げられない社長です。

よく言われるハナシではありますが、いちど上がった生活水準をもとに戻すのは難しい。これは事実です。わたしも、税理士という仕事を通じて、実際にそのようすを目にしてきましたからわかります。

生活水準を上げること自体は悪くありませんが、いざというときに下げられないのは問題です。会社の資金繰りをいっそう悪くしてしまいますし、そこまでして役員報酬をとることに銀行は否定的な見方をします。

状況が悪い会社が銀行融資を受けるときには、「経営改善計画書」の提示が必要です。この計画に、役員報酬の減額を織り込むことは必須だと言っていいでしょう。なぜなら、状況が悪くなった責任を社長が負うべき、責任をとって役員報酬を下げるべきだ、と見られるからです。

それでも役員報酬を下げずに、融資が受けられなければ、会社は資金繰りがもちません。役員報酬を高くしたことで生活水準を下げられないことが、財務的な間違いになることはあるわけです。

また、以前の生活水準を維持するために、カードローンやサラ金などからおカネを借りてしまう社長がいます。同じ「借金」でも、銀行融資に比べて金利がとても高く、返済するのはタイヘンです。

そんなことするわけないだろう、と思われるかもしれませんが。ヒトは、「世間体」を気にするものです。高級なクルマに乗って、高級な服を来て、高級な食事をしていた人が、生活水準を下げるとなれば、他人の目が気になってしまうものです。

したがって、いちど上げた生活水準をもとに戻すのは、容易ではないものと考えておきましょう。世間体を守るために、返せるアテもなく借金をするようでは目も当てられません。

役員報酬を高くするのであれば、そういった「ヒトの特性」まで理解をしておくことが大切です。

まとめ

社長の役員報酬はできるだけ高くしよう! みたいなハナシを見聞きすることがあります。

たしかに、社長の役員報酬を高くすることは、ひとつの考え方です。けれども、社長の役員報酬を高くすることが、必ずしも正しいとは言えません。

むしろ、財務的に見ると間違っていることもあります。その理由を理解しておくようにしましょう。

社長の役員報酬を高くしろ!が財務的に間違いである理由
  1. 利益・内部留保が少なくなる
  2. 支払う所得税がもったいない
  3. 生活水準を戻すのがタイヘン
社長の役員報酬を高くしろ!が財務的に間違いである理由

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