会社が創業融資を受けようとする場合、自己資金があるほど融資は受けやすく、自己資金がないほど融資は受けにくくなるものです。
これに関連して。創業融資では銀行から自己資金を求められる3つの理由について、お話をしていきます。
曰く、彼を知り己を知れば百戦殆うからず。
会社が創業融資を受けようとする場合、銀行からは「相応の自己資金」を求められます。つまり、自己資金があるほど融資は受けやすく、自己資金がないほど融資は受けにくくなる。
この点で。創業融資の代表格である「日本政策金融公庫の新創業融資制度」では、創業に必要なおカネのうち、10分の1以上の自己資金を用意しなさいよ、ということになっています。
言い換えると、自己資金の9倍を上限に融資をします、と。けれども、実際に借りられる金額は、「自己資金の2〜4倍くらい」です。いずれにせよ、自己資金があるほど融資は受けやすく、自己資金があるほど多くの融資を受けることができる、と言えるでしょう。
けれども、なぜ銀行は、創業融資で自己資金を求めるのか?
その理由について、お話をしてみます。言うなれば「おカネを貸す側の理屈」であり、ややもすると、借りるほうにしてみれば「関係ない」と思われるかもしれませんが。
彼を知り己を知れば百戦殆うからず、です。スムーズに融資を受けるには、相手(銀行)を知ることが欠かせません。というわけで、創業融資では銀行から自己資金を求められる理由がこちらになります↓
- 潰れにくいから
- 創業の覚悟を見るため
- 潰れたときの返済力を測るため
これら3つの理由について、このあと順番に見ていきましょう。
創業融資では銀行から自己資金を求められる3つの理由
【理由1】潰れにくいから
自己資金(じぶんで貯めたおカネ)を 500万円と、創業融資 500万円を受けて事業をはじめたA社と。自己資金はゼロ、創業融資 500万円を受けて事業をはじめたB社があったとして。
同じ創業融資 500万円でスタートした2社。どちらが、より安心・安全か? と言えば。よりおカネを持ってスタートしたA社でしょう(おカネ以外の要素や条件は、両者まったく同じと仮定します)。
言い換えると、より危険なのはB社だ、ということです。
なにしろ、創業直後は「不安定」であることが少なくありません。思ったようにお客さんが来ない、思ったように商品が売れない、というのはよくある話。軌道に乗るまでには、思った以上に時間がかかるのです。
すると、少ないおカネではじめた会社のほうが、潰れてしまう可能性が高くなります。軌道に乗るまでの時間をかせぐことができずに、あともう少しかもしれないところでチカラ尽きてしまう… これもまた、よくある話です。
だから、銀行は創業融資をするにあたって、自己資金を求めています。同じ 500万円を貸すのでも、自己資金ゼロよりも、自己資金 500万円あるほうが、事業を軌道に乗せられる確率が高い。
そう考えて、自己資金があるA社には創業融資をするけれど。自己資金がないB社に、実際、創業融資をすることはほとんどありません。絶対にない、とは言いませんがレアケース。融資をしてもらえたとしても、きわめて少額… ということもあるでしょう。
銀行はおカネを貸して、回収するのが商売です。貸しておしまい、ではありません。回収できるかどうか・回収できそうかどうかが、融資をするかどうかのポイントになります。
この点で。自己資金があるほど会社は潰れにくく、銀行は「回収できそうだ」と考えることを理解しておきましょう。創業融資をスムーズに受けたいのであれば、できるだけ自己資金を準備しましょう。
【理由2】創業の覚悟を見るため
銀行は、自己資金の多寡を「創業の覚悟」として見ています。創業するんだ! との覚悟が強い人ほど、自己資金をコツコツとたくさん準備しているはずだ、という見方です。
覚悟が強いほうが事業を成長に導ける可能性は高そうだし、コツコツ計画的に準備をできる社長は、やっぱり事業を成長に導けるような気がしますよね。
逆に、場当たり的な起業をする場合には、どうしても自己資金は少なくなります。言うまでもなく、コツコツ準備をする時間がないからです。
銀行からしてみれば、思いつきではじめたような事業がうまくいくんだろうか? コツコツ準備もできない、計画性のない社長がうまくいくんだろうか? と、不安になるのもムリはありません。
また、同じ額のおカネを持っているCさんとDさんでいたとして。事業につかえる自己資金として、持っているおカネの全額を提示できるCさんと。事業にはつかいたくないからと、隠し持っているDさんと。
どちらに「創業の覚悟」があるか? と言えば。もちろん、Cさんのほうですよね。というわけで、創業融資を受けるのであれば、「どれだけの額の自己資金を提示できるか?」がポイントになることを理解しておきましょう。
ちなみに。日本政策金融公庫の新創業融資制度の要件を見ると、制度上は、必ずしも自己資金が必要なわけではありません。自己資金がなくても、たとえば「創業する事業と同事業に6年以上の勤務経験がある」とか、「民間金融機関との協調融資を受けられる」などができればOKとされています。
とはいえ。実際の「現場」を見る限り、自己資金なしに満足のいく創業融資を受けるのは困難です。つまり、銀行はそれくらい自己資金の有無を重視している、ということになります。
制度上の要件をうのみにはせず、できるだけの自己資金を準備するのが、スムーズに創業融資を受けるためのポイントです。
【理由3】潰れたときの返済力を測るため
いくら自己資金があったとしても、いくら綿密な事業計画をねっていたとしても。残念ながら、事業を軌道に乗せることができずに潰れてしまうことはあります。
ではそのときに、残ってしまった借金(創業融資の融資残高)はどうなるのか? 返さなくてもいいですよ、ということにはならず。事業をやめたあとも、可能な範囲で返済し続けることになります。
銀行としては、そうまでしてでも回収をするのが商売です。であるのなら、もし潰れてしまったときに、「どれだけの返済力があるのか?」を測っておく必要があります。
その返済力の目安になるのが、自己資金です。たとえば、自己資金 500万円を用意できるEさんであれば、事業をやめたとしても、また 500万円くらいの自己資金を準備できるチカラがあると見れますよね。
いちどは自己資金 500万円を貯められるだけの「稼ぎ(給与収入)」があったのですから、また同じような稼ぎによって、500万円くらいはおカネを貯めることもできるはず。その 500万円があれば、廃業時の融資残高も回収することができるはず。
銀行はそう考えていますし、そこまで考えて、創業融資の金額を決めています。融資先が潰れてしまうのは困りますが、銀行は潰れてしまうことも織り込み済みで考えているわけです。
だからやっぱり、創業融資では自己資金の金額がモノを言うんだ、と理解しておきましょう。
まとめ
会社が創業融資を受けようとする場合、自己資金があるほど融資は受けやすく、自己資金がないほど融資は受けにくくなるものです。
おカネを貸す側の理屈として、「創業融資では銀行から自己資金を求められる理由」を押さえておきましょう。ひいては、融資の受けやすさにつながります。
- 潰れにくいから
- 創業の覚悟を見るため
- 潰れたときの返済力を測るため