銀行から、「現金預金が多い」と言われたら。社長は、銀行の真意を読み取ったうえで、伝えるべきことがありますよ。という、お話をしていきます。
現金預金が多い、となんだというのか?
融資を受けようとしている銀行から、あるいは、すでに融資を受けている銀行から、「現金預金が多い」と言われたら。つまり、自社の決算書や試算表に記載されている「現金預金」の金額が多い、と言われたら。
社長は、銀行の「真意」を読み取ったうえで、伝えるべきことがあります。それが、こちらの3つです↓
- 現金預金の内訳
- 手元資金を厚くする
- 新規事業を考えている
これらは、銀行融資の受けやすさにも影響するところです。また、コロナ禍で受けた融資によって、現金預金が増えている会社もあることでしょう。
というわけで、このあと「3つの伝えるべきこと」を順番にお話ししていきます。
銀行から「現金預金が多い」と言われたときに社長が伝えるべきこと3選
【伝えるべきこと1】現金預金の内訳
融資をしている銀行は、「預金シェア」を気にしています。もしも、会社の預金が 3,000万円あるとしたら。そのうち、A銀行のシェアは何%か? B銀行は? そして、ウチの銀行は? といった具合です。
でも、なぜ銀行は預金シェアを気にするのでしょうか。
ひとつは、預金シェアが高ければ、安全性が高いからです。預金があれば、貸したおカネを回収しそびれることは少ないだろう、と考えているからです。
また、預金が多いことで、「実質金利」が高まるので銀行はもうかる。預金取引が増えれば、手数料収入も増えるので、やはり銀行はもうかる。という思いもあるでしょう。
ですから、各銀行は「ぜひ、預金はウチの口座においてほしい」と考えているわけです。少なくとも、他の銀行と比べて、不公平がないように預金をしてほしい。そう、考えています。
では、ここで言う「不公平」とは。融資残高シェアに対して、預金シェアが少ないことを言います。
たとえば、自社の借入金残高はぜんぶで 5,000万円だとして。そのうち、A銀行からの借入金残高が 3,000万円、つまり、融資残高シェアが 60%だとしたら。預金も 60%のシェアはほしい、ということです。
にもかかわらず、B銀行の預金シェアのほうが高いとしたら。A銀行は、「ウチがたくさん貸しているのに、B銀行ばかり安全でもうかってズルい」と思うことでしょう。
結果として、A銀行からの融資が受けにくくなります。
というわけで。社長は、「融資残高シェアに応じた預金シェア」を意識しておくことが大切です。預金をテキトーに銀行に預けていると、うまく融資を受けることができません。
銀行には、現金預金と借入金の内訳を提示しつつ(決算書や試算表だけでは内訳はわからないので)、預金シェアに対する考え方を伝えるとよいでしょう。
現状、預金シェアが低い銀行に対しては、「今後、預金シェアを高める」ことが融資交渉の材料にもなるところです。
ちなみに。現金預金の内訳として、「現金残高」が多い場合には気をつけましょう。たとえば、現金残高が 数十万円〜数百万円単位であるとか。
商売にもよりますが、いまどき多額の現金をあつかうところは多くありません。現金があったとしても、多額であれば銀行にあずけることでしょう。
したがって、現金が多いことを知った銀行は、「粉飾決算」を疑うものです。ほんとうは費用にすべきところを、利益を水増しするために現金を持っていることにする、という粉飾です。
そう疑われないように、もしほんとうに現金が多いのであれば、理由や経緯を銀行に伝えるようにしましょう。
[ad1]【伝えるべきこと2】手元資金を厚くする
いざというときに備えて、あらかじめ融資を受けておくことで、手元のおカネを増やしておこう。という考え方があります。
いざというときになって、つまり、会社がピンチになってから融資を受けるのはカンタンではないからです。ピンチの会社におカネを貸しても返済してもらえる可能性が低いので、銀行は融資を躊躇します。
だから、ピンチになる前に、あらかじめ融資を受けておこうというわけです。
このような考えから、自社の現金預金が多くなっているのであれば。銀行に、そう伝えましょう。具体的には、「手元資金を厚くするために現金預金を多く持っています」といった具合です。
銀行は、おカネを持っている会社を好みますので、基本的には好感をえられることでしょう。おカネがあれば、ピンチになったとしても、しばらくのあいだは返済を続けることができます。銀行は安心です。
ゆえに、現金預金が多い会社は融資が受けやすくなります。現金預金が多いところにきて、融資を受けられるのですから、ますます現金預金は多くなります。そしてまた、融資が受けやすくなる… の繰り返しです。
実際、現金預金が多い会社には、融資セールスが多いものです。おカネはあまっているのに、「もっと借りませんか?」と銀行がやってくる。
ところがここで、銀行にはひとつの疑念が生じます。ほんとうに手元におカネを持ったままなんだろうか? そんなことを言いながら実はつかってしまうんじゃないか? という疑念です。
そこで、「現金預金の残高推移」を銀行に提示するとよいでしょう。過去1年ていど、現金預金の残高推移をグラフにしておくのがおすすめです。残高は、会計ソフトからCSVデータで出力するなどしてExcelで加工すれば、それほどの手間ではありません。
こうして、実際に「手元資金を厚くしている」ことが確認できれば、銀行も安心です。安心した銀行からは、融資セールスも期待できることでしょう。
[ad1]【伝えるべきこと3】新規事業を考えている
あらかじめ融資を受けておくことで、手元のおカネを増やすのは、いざというときに備えるためだけではありません。これから新規事業をはじめるときのことも考えている社長もいるでしょう。
とくに、コロナをへてダメージを受けた事業、コロナ後にいたってもダメージを避けられないような事業であれば、新規事業が会社存続のカギになります。
とはいえ、あらたに事業を立ち上げるのにもおカネがかかるわけですから。借りられるときに借りておこう、と考えた社長もいるはずです。結果、新規事業をはじめるまでのあいだは、手元におカネが残っている。
そこへきて、銀行から「現金預金が多い」と言われたら。正直に、新規事業を考えていることを伝えましょう。
事業の内容に成長可能性を感じれば、銀行は「新規事業にもおカネがかかるでしょうから、融資はいかがですか」と融資セールスをするものです。
現状、会社は手元におカネもあるわけですから、銀行には安心感があります。新規事業の立ち上げに少々時間がかかったとしても、返済が滞る可能性は低いだろう、という安心感です。
銀行がおカネを貸したい、と考えることができるように。社長は、「事業計画書」をもって話をするのがベストです。新規事業の計画を、ぜひ書面に落とし込んでおきましょう。
新規事業をはじめるのであれば、対銀行以前に、事業計画書は会社內部でも必要なものですから。それを銀行に提示すれば良い、という話でもあります。
ちなみに。手元におカネがあるのだから、これ以上、おカネを借りる必要があるのか? と考えるのであれば。借りておくほうがいいでしょう。
繰り返しになりますが、新規事業を立ち上げるのにはおカネがかかります。立ち上がるまでに、計画よりも時間がかかることも少なくありませんから、よりおカネがかかります。
そのときのことも考えて、できるだけ手元にはおカネを置いておくようにしましょう。おカネが足りなくなってからでは、融資を受けるのは困難です。
また、新規事業をはじめるにあたり、設備投資をともなう場合には、手元のおカネをつかうことで問題が生じる可能性があります。
たとえば、コロナ禍で「運転資金(設備投資以外につかうおカネ)」として融資を受けていたおカネを、設備投資につかうと、「資金使途違反」と見られてしまうかもしれないからです。
資金使途違反、つまり、当初の使いみちとは違うことにおカネをつかった。約束違反だ! となり、ペナルティ(最悪は一括返済)を受けるのではタイヘンです。
このあたりもふまえて、新規事業につかうおカネはあらためて融資を受けることを検討しましょう。
まとめ
銀行から、「現金預金が多い」と言われたら。社長は、銀行の真意を読み取ったうえで、伝えるべきことがありますよ。という、お話をしていきます。
- 現金預金の内訳
- 手元資金を厚くする
- 新規事業を考えている