会社が、他行での借り換えに成功。ところが、その後の銀行融資で損をした… という事例についてお話をしていきます。
一文惜しみの百知らず。
会社が銀行から受ける融資について。他行での借り換え、という「借りかた」があります。
たとえば、A銀行から借りていた 3,000万円を、B銀行で同額借りて返済する。というのが、「他行での借り換え」です。どうして、そんなことをするのか?
A銀行の融資条件よりも、B銀行の融資条件のほうが良いからです。B銀行のほうが金利が低ければ、資金調達コストが下がります。B銀行のほうが返済期間が長ければ、毎月の返済額を下げられます。
というわけで、会社はA銀行から借りていた 3,000万円を、B銀行で借り換える。これが無事成功したとしても、その後の銀行融資で損をした… という事例がありますよ。そんなお話が、次の3つです↓
- 赤字のときに借りにくくなった
- 借入総額が減ってしまった
- プロパー融資がなくなってしまった
目先の得ばかりではなく、その先にある損にも目を向けたうえで、借り換えを考える必要があります。そのあたりをふまえて、このあと3つの事例を順番に見ていきましょう。
他行での借り換えに成功→その後の銀行融資で損をした事例3選
【事例1】赤字のときに借りにくくなった
他行で借り換える「デメリット」ととして、よく言われることがあります。それは、借り換えられる銀行との関係が悪くなる、ということです。
たとえば、A銀行の借入をB銀行で借り換える場合。A銀行との関係が悪くなる。A銀行からしたら、お客さまを取られたわけであり、きっかけは「お客さまが裏切った」ところにあるわけですから。関係が悪くなるのも当然でしょう。
この点で。いやいや別に、A銀行にはそれほどの義理もないし。関係が悪くなったってかまわない。そう思われるかもしれませんが。問題は、「その後」にやってくる可能性があります。
ここで言う、「その後」とは。のちのち、赤字になる・赤字が続くなどして、融資が受けにくい状況になったときです。すると、会社は融資を受けたくても、B銀行に断られることもあるでしょう。
それならば… と、他に取引をしているC銀行に相談をしたところ。なんとか融資をしてもらえた、ということはあるでしょう。ですから、取引銀行の数が多いほど「融資の選択肢が多くなる」と言えます。
ところが、C銀行にも断られてしまったとしたらどうでしょう? 以前であれば、A銀行も選択肢のひとつだったのに。関係が悪くなったA銀行が、赤字で厳しい会社に融資をしてくれるとは思えませんよね。
というように、他行での借り換えには成功したけれど。その後、融資の選択肢が少なくなってしまう、融資が受けにくくなってしまう、といった損はあるわけです。
したがって、他行で借り換えをする前には、取引銀行がひとつ減ったとしてもだいじょうぶか? を考えるようにしましょう。
取引銀行を増やすのもカンタンではありませんし、関係を深めるのには時間もかかります。また、そもそも周囲に銀行が少ない環境であれば、取引銀行を増やしたくても増やせません。じゅうぶんに注意すべきところです。
[ad1]【事例2】借入総額が減ってしまった
他行での借り換えによって、借り換えられた銀行とは関係が悪くなる。結果、取引銀行をひとつ失うことになる。というお話をしました。
取引銀行を失うことで、赤字のときなどに「融資の選択肢が減る」ことに加えてもうひとつ。借入総額が減ってしまった… という損もあります。
たとえば、A銀行とB銀行、C銀行の3行と取引をしているときには、借入総額が 7,000万円だったのに。A銀行の借入をB銀行で借り換えたら、いつのまにか借入総額が 5,000万円になっていた。
B銀行とC銀行から融資を受けようとしても、「これ以上はちょっと…」と断られてしまう。というように、他行での借り換えは成功したのに、その後、借入総額が減ってしまう損があります。
どうして、そんなことが起きるのか? それは、各銀行には、「取れるリスクに限りがある」からです。あたりまえですが、銀行も無尽蔵におカネを貸せるわけではありません。
それぞれの銀行ごとに、「貸せるのはここまで」という金額を決めています。その金額の合計が、会社にとっての「借入総額の上限」になります。
よって、取引銀行が減れば、借入総額の上限も減る。いつのまにか借入総額が減ってしまった… というのはありうる話です。借入を必要とする会社であれば、困ったことになるでしょう。
他行での借り換えをするときには、借り換え後の銀行、その他既存の取引銀行に「リスクを取るチカラがあるか」を確認しておくことが重要です。
とくに、大きな銀行から小さな銀行への借り換えの際には、気をつけるようにしましょう。
[ad1]【事例3】プロパー融資がなくなってしまった
民間銀行からの融資には、「信用保証協会の保証付き融資」と「プロパー融資」とがあります。
このうち、信用保証協会の保証付き融資は、会社が返済できないときには信用保証協会が肩代わりをするため、銀行としては貸しやすい融資です。会社としては借りやすい。
ところが、制度上の「上限(一般枠の無担保であれば、最高でも 8,000万円)」があるため、借りやすいからと言って、いくらでも借りられるわけではありません。
したがって、会社は信用保証協会の保証付き融資と並行して、いかにプロパー融資を銀行から引き出すか? を考える必要があります。
とはいえ、プロパー融資は信用保証協会の保証が無い融資。会社が返済できなくなったときには、銀行が 100%の損をかぶりますから、銀行はなかなかプロパー融資をしたがりません。
それでもやっと、A銀行からプロパー融資を受けることができた、という会社があったとして。にもかかわらず、A銀行の借入をB銀行で借り換えたことをきっかけに、プロパー融資がなくなってしまった…
プロパー融資の「価値」がわかっていないと、意外とありがちなケースです。
というように、他行での借り換えには成功したけれど。その後、貴重なプロパー融資がなくなってしまう、といった損があります。
そのような損を避けるためには。借り換えの「条件」に、プロパー融資を入れておくことです。さきほどの例であれば、B銀行にはあらかじめ、プロパー融資の約束を取り付けておくことです。
もちろん、カンタンなことではありませんが。けれども、その借り換えが、B銀行からの提案であったならば、条件をつけやすいはずです。B銀行は借り換えをしたくて提案しているのですから、条件をのんでくれる可能性があります。
借り換えをするときには、そのあたりもふまえて検討するようにしましょう。
まとめ
会社が、他行での借り換えに成功。ところが、その後の銀行融資で損をした… という事例についてお話をしてきました。
目先の得ばかりではなく、その先にある損にも目を向けたうえで、借り換えを考えるようにしましょう。
- 赤字のときに借りにくくなった
- 借入総額が減ってしまった
- プロパー融資がなくなってしまった