決算書を見ていると、コロナを経て役員借入金が増えた会社があります。その役員借入金を、意外と銀行は気にしているものです。
というわけで。コロナ禍で増えた役員借入金を銀行に説明するポイントについて、お話をしていきます。
気にする銀行、気にしない社長。
新型コロナを経て、決算書を見ていると。役員借入金(社長や親族からの借入金)の金額が「急増」している会社があります。
この点で。銀行は役員借入金について「意外と気にしている」ことを理解しておきましょう。ではいったい、どんなことを気にしているのか? 具体的にはこちらです↓
- 銀行から借りなかった理由
- 役員借入金の出どころ
- おカネの使いみち
決算書を銀行に提示するときには、これらのポイントについて説明できるとよいでしょう。説明できずにいると、「不審」に思われてしまう可能性がありますので。
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
コロナ禍で増えた役員借入金を銀行に説明するポイント
【ポイント1】銀行から借りなかった理由
会社の資金調達については、「銀行借入」という手段があります。にもかかわらず、役員から借入をしたのはなぜなのか? と銀行は考えています。
これを聞いて、「別に役員から借入をしたっていいだろう」と思われるかもしれませんが。銀行が気にしているのは、「銀行から借入をしようとしたが断られたのではないか?」ということです。
コロナを経て、たくさんの会社の業績が悪化しました。救済措置として、大規模かつ緊急の融資が実行されたものの。あまりに状況が悪く、融資を断られる会社もあります。
そういった会社にしてみれば、資金調達の手段は「役員借入金しかなかった」ということはあるわけです。
だとしたら、銀行はおおいに警戒しなければいけません。この先、会社は返済できなくなることが考えられます。担保や保証の確保はもちろん、新規の融資は控えるべきところです。
というわけで。社長は銀行に対して、「銀行から借りられなかったのか、それとも、借りなかったのか」を明らかにするようにしましょう。
借りられなかったのであれば、リスケ(返済猶予)を検討すべき状況にあると言えます。借りられなかったことは隠して、新規融資の相談をすることも1つの方法ですが。「その場しのぎ」になることは少なくありません。
いっぽうで、借りなかったのであれば、その理由まで説明するようにしましょう。たとえば、「一時的に、急いでいたので、個人のおカネで対応した」とか。
いま現在は返済しているのであれば、その旨も。返済の予定が決まっているのであれば、その旨もあわせて伝えるのがベストです。まさに「一時的」であったことの説明がつきます。
【ポイント2】役員借入金の出どころ
銀行は役員借入金について、その「出どころ」を気にしています。役員借入金を、しばらくは返済できそうもない… という場合にはとくにです。
決算書には「役員借入金」となっていても、実は、ノンバンクあるいはヤミ金などからおカネを借りてきた可能性もゼロではありません。銀行は、そこを心配しているのです。
ノンバンクやヤミ金から高い利息を払ってまでおカネを借りるのは、その会社が「銀行からは借入できないほど状況が悪い」ことをあらわしています。
だとしたら、やはり銀行は警戒しなければいかず、役員借入金の出どころを気にしているのです。
というわけで。社長は銀行に対して、「役員借入金の出どころはじぶんのおカネ」であることを説明するようにしましょう。
役員報酬の金額が相応に高ければ、社長個人に貯金があることを想像できます。その貯金が出どころだ、と銀行が想像できることもあるでしょう。
とはいえ、確証が持てるものでもありません(その銀行の預金口座におカネがない限り)。そこで、社長の個人通帳を提示して、たしかにじぶんのおカネであることを説明するのも1つの方法です。
そこまでするのか? と、思われるかもしれませんが。役員借入金の金額が大きいときには、そこまでするのがベストです。銀行に気にされたり、余計な警戒されてよいことはありませんので。
なお、ノンバンクからの借入は、銀行が社長の「個人信用情報」を取得することで、把握できる場合があります。
銀行が個人信用情報を取得するにあたっては、社長の同意を取るものですが、その同意を拒むのは得策ではありません。隠さなくてはいけないような事情があるのか? と疑われるだけだからです。
疑われた時点で、融資は受けにくくなることは覚えておきましょう。
【ポイント3】おカネの使いみち
会社がおカネを借りるからには、「使いみち」があるものです。銀行からの借入であれば、「ひとまず借りられるときに借りて、使わずに置いておこう」ということはあるかもしれませんが。
社長からおカネを借りておきながら、それを使わずに置いておく。という会社は、ないはずです。したがって、役員借入金については、借りた「おカネの使いみち」を銀行に説明するようにしましょう。
とはいえ、そんなの決算書を見りゃわかるだろう? と、思われるかもしれません。たしかに、わかりそうではありますが、必ずしも事実がわかるわけでもありません。
なぜなら、粉飾決算(事実とは異なる決算)をする会社もあるからです。
たとえば、コロナの影響で資金繰りが大幅に悪化。仕入先に対して、支払いが遅れている。すると、買掛金の金額が通常よりも膨らみます。このままだと、銀行から警戒されるのは明らかです。
そこで、買掛金を役員借入金に振り替える、というテクニック(?)があります。簿記(仕訳)を理解している人であれば、思いつくことでしょう。これによって、見た目の買掛金を減らすことができます。
では、増えた役員借入金はどうか? と言うと。すぐに返済するつもりがない役員借入金については、「資本とみなす」という銀行の見方があります。
社長からの借入金は、社長さえ良ければ返済せずとも問題はありません。会社がおカネを借りっぱなしなのであれば、それは資本金と同じようなものだろう。それに、会社と社長は一体だ。
という銀行の見方を知っていて、「買掛金が増えるよりは役員借入金が増えるほうがマシ」と、考えている社長もいるわけです。ところが、銀行も粉飾決算の可能性があることはわかっていますから。役員借入金の使いみちを気にしているものです。
というわけで、増えた役員借入金については、そのおカネをなにに使ったのか? 銀行に説明するようにしましょう。このとき、資金繰り実績表もあわせて提示できるとベストです。
資金繰り実績表があれば、より明確に、おカネの使いみちを説明することができます。
まとめ
決算書を見ていると、コロナを経て役員借入金が増えた会社があります。その役員借入金を、意外と銀行は気にしているものです。
というわけで。コロナ禍で増えた役員借入金を銀行に説明するポイントを、押さえておきましょう。
- 銀行から借りなかった理由
- 役員借入金の出どころ
- おカネの使いみち