銀行融資・銀行対応に使えるツールとして、RESASについてお話をしていきます。
だれでも・すぐに・無料で使えるうえに、銀行からの支援が受けやすくもなりますので。ぜひ利用していきましょう、というお話です。
RESAS、知ってる?
銀行融資・銀行対応に使えるツールはいろいろあるけれど。とりわけ、利用度が低いと思われるのが、RESAS(リーサス)でしょう。
もしかすると、RESASってなに? と、思われるかもしれませんが。RESASとは、Regional Economy Society Analyzing Systemの略であり、日本語訳は「地域経済分析システム」になります。
具体的には、各地域の産業構造や人口動態、人の流れなどの官民ビッグデータを集約して、見える化してくれるシステム(WEBサービス)です。経済産業省と内閣官房によって、2015年から提供されています。
ぜんぶで9つのマップと81ものメニューが用意されていて、日本全国各地域におけるさまざまなデータを確認できたり、推移を時系列で見れたり、地域間の比較ができたりと多機能です↓
これほどのツールを、「だれでも・すぐに・無料で使える」のは、RESASの魅力のひとつだと言えるでしょう。このRESASから出力したデータを、銀行への「アピール材料」として利用することができます。
どういうことか、と言うと。
地方銀行や信用金庫・信用組合といった、いわゆる「地域金融機関」が目指しているのは、地域との成長です。つまり、銀行は「地域の会社や人を支援することで地域を活性化しよう、結果として、銀行自身も成長できる」と考えています。
ちなみに、ここで言う「支援」とは。会社に対しては、融資支援と本業支援です。
融資支援とは、事業性評価による融資がメインになります。事業性評価による融資とは、これまでのように、決算書の良し悪しや、担保・保証の有無に依存しない融資。融資先の事業内容や将来性を評価する、言うなれば、銀行員の「目利き」を活かした融資。それが、事業性評価による融資です。
加えて、本業支援とは。融資先の事業支援を言います。具体的には、経営・財務に関するコンサルティングや、ビジネスマッチングなど。おカネを貸すだけが銀行の仕事ではない、ということであり。事業性評価にしても本業支援にしても、銀行は「これまでとは変わろうとしている」とわかるでしょう。
話を戻して、銀行は「地域との成長」を目指しているのでした。
したがって、銀行が支援したい・支援しやすいのは、地域での存在感や貢献度が大きい会社です。あるいは、地域での存在感や貢献度が、これから大きくなるであろう会社です。
というわけで、地域とのかかわりの強さが、銀行の支援姿勢に影響することを理解しておきましょう。ここで、RESASです。地域とのかかわりを裏付ける根拠として、RESASが役立ちます。
RESASから出力できるデータを使って、自社が地域とのかかわりが強いことをアピールしていきましょう。このあと、具体的な利用例を確認していきまます。
地域とのかかわりをアピールする利用例
産業構造マップ→全産業→全産業の構造
各地域における業種別の企業数や従業者数、売上高などを把握することが可能です。たとえば、宿泊業の企業数が多い地域において、お客さまもまた宿泊業を営んでいる場合、地域とのかかわりの強さを示すことになります。銀行へのアピールポイントです。
該当するデータは出力(印刷)して、銀行に渡しましょう。RESASには、画面キャプチャしたあと、PDFファイルでダウンロードする機能がついています。
産業構造マップ→製造業→製造業の構造
各地域における製造業について、製造品別出荷額の推移を時系列で確認できます。自社(製造業)の推移と比較をしたときに、自社の伸びが大きければ、地域貢献をアピールできるところです。
また、今後の市場動向を予測したり、自社の市場シェアを検討するにあたっても、有用な情報になるでしょう。
産業構造マップ→製造業→製造品出荷額等
各地域における製造品出荷額の推移を、製造品の種類別に確認することができます。前述の「製造業の構造」を、さらに細分化したものとして利用できるでしょう。
また、ほかの地域との比較も可能です。出荷額の増減が地域の特殊性によるものなのか、全国的なものなのかを考える材料にすることができます。
産業構造マップ→小売・卸売業→年間商品販売額
各地域における年間商品販売額の推移を、小売・卸売の中分類別に、確認することが可能です。自社(小売・卸売業)の推移と比較をしたときに、自社の伸びが大きければ、地域貢献をアピールできるところです。
また、ほかの地域との比較を確認することも可能です。今後の市場動向を予測したり、製造業の会社であれば、販売先エリア(販売が伸びているエリア)を検討するのに役立ちます。
商品販売額の増減が地域の特殊性によるものなのか、全国的なものなのかを考える材料にすることもできるでしょう。
産業構造マップ→雇用→一人当たり賃金
各地域における一人当たり賃金と、その推移を時系列で把握することができます。地域と比べて、賃金が高いようなら(目安として1割以上)、地域貢献度の高さを銀行にアピールする材料になるでしょう。加えて、業績好調の証にもなるところです。
その他、銀行対応での利用例
RESASは、地域とのかかわりをアピールするだけではなく、ほかの場面でも、銀行対応で利用することができます。
人口マップ→人口構成、人口増減
自社の所在地や営業地域の人口のようすがわかれば、事業の将来性(人口の増減が追い風になるか・逆風になるか)を示す材料になるはずです。自社の取り組みや経営計画書について銀行と話をする際、裏付けとして提示するとよいでしょう。
人口マップ→人口メッシュ、将来人口メッシュ
現在の人口・将来の人口を、1km単位のメッシュで地図上に表示できます。
たとえば、小売店や飲食店などが、簡易の商圏調査として利用することができるでしょう。新規出店場所や広告展開地域の選定などに、役立てることができます。なので、新規出店費用や広告費用の融資を受ける際に、銀行に提示すると説得力が高まるはずです。
なお、より詳細な商圏調査であれば、政府提供のWEBサービス「jSTAT MAP」もおすすめです。
観光マップ→外国人訪問分析
どの国からの訪問が多いかを把握することができます。地域によって、意外と差があるところです
RESASのデータをもとに訪問が多い国にあわせて、「商品メニューの外国語表記」に取り組んだ小売店の例があります。根拠にもとづいた取り組みとして、銀行の納得感をえられるはずです。
まちづくりマップ→流動人口メッシュ
特定地域の流動人口(ある場所に一時的に滞在している人口)を、平日・休日別に、時間帯ごとの推移で把握することができます。地域による違いはもちろん、平日か休日かで人の流れには差が出るものです。
流動人口のデータをもとに、「営業時間の見直し」に取り組んだ飲食店の例があります。やはり、銀行の納得感をえられる取り組みです。
まとめ
銀行融資・銀行対応に使えるツールとして、RESASについてお話をしてきました。
本記事での利用例は、ほんの一例に過ぎません。ほかにもさまざまなメニューがありますし、さまざまな活かしかたがあるはずです。まずは実際に、RESASに触れてみることからはじめてみるとよいでしょう。それだけでも、なにかしらのヒントは得られるはずです。
おおむね直感的に操作できるシステムですが、もし迷うことがあれば、マニュアル(PDFファイル)や動画(YouTube)も利用してみましょう。いずれも、RESASのWEBサイトに用意されいます。