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銀行の言動からわかる、架空在庫・不良在庫を疑われているのはこんなとき

銀行の言動からわかる、架空在庫・不良在庫を疑われているのはこんなとき

在庫について、銀行から「架空・不良」を疑われると、融資が受けられなくなるかもしれません。

そこで。銀行の言動からわかる、架空在庫・不良在庫を疑われているのはこんなとき、についてお話をしていきます。

目次

疑われる命運にある在庫。

古今東西、在庫は「架空・不良」を疑われる命運にあります。常に在庫を抱えるような商売をしている会社はとくに、です。ではいったい、だれに疑われるというのか?

銀行です。ほかにも疑う者はいるでしょうが、本記事では「銀行から疑われる」ことに注目をしていきます。なぜなら、融資が受けられなくなるかもしれない。それは、会社にとって致命的だからです。

もちろん、実際に「架空・不良」があるのなら、疑われるのもしかたがないことでしょう。問題は、架空や不良なんてないのに、銀行から疑われてしまうケースです。

そこで。銀行の言動からわかる、架空在庫・不良在庫を疑われているのはこんなとき、についてお話をしていきます。具体的には、次のようなときです↓

銀行の言動からわかる、架空在庫・不良在庫を疑われているのはこんなとき
  • 在庫の状況をヒアリングされる
  • 決算書の数字について質問される
  • 現場・現物を見せてほしい、と言われる
  • ABLの提案をされる

それではこのあと、順番に見ていきましょう。

銀行の言動からわかる、架空在庫・不良在庫を疑われているのはこんなとき

在庫の状況をヒアリングされる

ほんとうは在庫がないのに、あるものとして経理処理されるのが架空在庫です。もう売れそうもないので処分すべきなのに、売れるものとして経理処理されるのが不良在庫です。

いずれも、利益を「水増し」することとなるため、なんとしてでも銀行から融資を受けたい会社では、よくおこなわれる経理処理だと言ってよいでしょう。

銀行もそれを知っています。だから、架空・不良の疑いがあると、まずはヒアリングでようすを探ろうとするケースが少なくありません。たとえば、

「試算表を見ると在庫が増えているようですが、いつごろ売れそうですか?」

といった具合です。これに対して、社長が「11月には売れるはずです」と回答したとします。ところがまだ、銀行の疑いは晴れていません。11月を過ぎると銀行は、ほんとうに売れたのかを確認します。

まずは試算表で確認をして、もし、在庫が減っていなければ、ふたたびヒアリングです。「社長、11月には売れるはずでしたよね」と。

銀行は、社長がいちどクチにしたことは「必ず覚えている」と考えておきましょう。にもかかわらず、「どうせ忘れてしまっているだろう」と、安易に考えている社長もいます。結果、ヒアリングに対して、その場しのぎの回答をしてしまう… これはよくありません。

ほかにも、架空在庫・不良在庫を疑うヒアリングは、次のようなものが考えられます↓

  • 試算表では在庫がだいぶ増えているようですが、保管スペースは足りているのですか?
  • 試算表では在庫がだいぶ増えているようですが、適正在庫量はどう考えていますか?

こういったヒアリングに対して、社長が「単純に現場・現状を理解していない」というケースもあります。回答があやふやになると、あらぬ疑いをかけられることもありますので注意しなければいけません。

決算書の数字について質問される

銀行は、会社から提出された決算書の数字を見て、架空在庫・不良在庫を疑うことがあります。具体的には、「同業他社と比べて在庫が多い」というケースです。

この点で、よく使われる財務指標が「棚卸資産回転期間」になります。算式であらわすと、「棚卸資産÷(年間売上高÷12ヶ月)」です。つまり、在庫(棚卸資産)が売上高の何ヶ月分あるか?

同じ業種の会社どうしであれば、おおむね同じくらいの棚卸資産回転期間になるだろう、と銀行は考えています。そこで、同業他社の棚卸資産回転期間と比べているわけです。

そのうえで、同業他社の棚卸資産回転期間よりも、自社の棚卸資産回転期間のほうが「だいぶ長い」となると、架空在庫・不良在庫を疑われることになります。

もうひとつ、比較対象になるのは、過去の棚卸資産回転期間です。商売に大きな変化がない限り、同じ会社の棚卸資産回転期間は、毎年おおむね同じくらいになるだろう、と銀行は考えています。

そこで、過去数年分の棚卸資産回転期間を並べてみて、急に長くなっているようなことがあれば、架空在庫・粉飾在庫を疑ってみるわけです。

他社比較にせよ、過去比較にせよ。疑いが生じると、銀行は事実確認のために質問をおこないます。「決算書を見ると在庫が多いようですが、どうしてでしょうか?」といった具合です。

これに対して、社長が「よくわからない…」みたいなことだと、やはり粉飾に対する疑いを強めてしまいます。ですから、社長もまた、他社比較・過去比較をして、状況を把握しておくようにしましょう。

他社比較については、中小企業基盤整備機構がWEBで提供している「経営自己診断システム」がおすすめです。決算書のデータを入力すると、同業他社との比較分析ができます。

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現場・現物を見せてほしい、と言われる

銀行から、「倉庫を見せてほしい」「在庫の保管状況を確認させてほしい」などと言われることがあります。これらは、架空在庫・不良在庫を疑われている可能性があるものと考えておきましょう。

このように、現場(倉庫)や現物(在庫)を見せるとなると、会社にとっては手間ですから、銀行としては「言いづらい」ことではあります。それでも言うのであれば、相当疑われている可能性はあるわけです。

とはいえ、銀行員が現場・現物を見て、架空在庫や不良在庫を見抜くことはできるのか? と思われるかもしれません。たしかに、見抜くのは難しいでしょう。

在庫のひとつひとつを数えるわけにもいきませんし、どれが不良在庫なのかを特定することもカンタンではないはずです。ではなぜ、現場・現物を見せてほしいなどと言うのか。

ひとつは、「会社の反応を見るため」です。実際に、架空在庫や不良在庫がある会社は、現場・現物を見られるのをかたくなに拒否するケースがあります。バレたら困ると考えるためです。

いっぽうで、なんの後ろめたさもなければ、それほどの拒否はしないものでしょう。そういった反応の差を、銀行は確認しようとしているのです。

したがって、銀行から見せてほしいと言われたら、少々メンドーでも見せることをおすすめします。あらぬ疑いをかけられずにすむはずです。

また、銀行は「整理整頓」の状況から、架空在庫や不良在庫の可能性を探ろうともしています。倉庫内がグチャグチャだったり、在庫がほこりをかぶっていたりしないか? であれば、ぱっと見てわかることです。

整理整頓ができていない会社は、在庫管理が甘く、不良在庫が生じやすい。そういう「イイ加減」な会社は、架空在庫に手を染める可能性が低くはない。というのが、銀行の見方です。

現場・現物の整理整頓には、日ごろから気をつけておきましょう。商売に影響することはもちろん、融資にも影響してしまいます。

ABLの提案をされる

ABL(Asset Based Lending)と呼ばれる融資があります。「動産担保融資」と訳されるものです。ここで言う「動産」のなかには、在庫が含まれ、ほかには売掛金や設備なども含まれます。したがって、ABLは「動産担保融資」の文字どおり、それらの動産を担保にした融資です。

在庫にしても売掛金にしても、日々変動しますから、銀行は管理がタイヘンになります。会社もまた、情報開示や報告がメンドーです。ゆえに、中小企業にはあまり浸透している融資だとは言えません。

それでも、銀行があえてABLのハナシをしてくることがあります。「在庫を担保に融資をすることができます。在庫の管理・把握にご協力いただければ…」といった具合です。

もし、架空在庫や不良在庫がある会社であれば、事実が明るみに出てしまいますから、ABLはお断りをしなければいけません。その断り方・断るようすに、銀行は注目をしているかもしれないことを覚えておきましょう。

ちなみに。架空在庫や不良在庫がない会社が、ABLを利用すべきかどうか? わたしは、そこまでしなくてもいいのではないか、と考えます。

そもそも、在庫を含む運転資金については、融資が受けられるわけですし。借りかたとしては、短期継続融資もあります。ABLのメリットのひとつに、銀行との関係性強化(在庫の管理・把握を通じて)が挙げられますが、それなら短期継続融資でもできることです。

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いずれにせよ、在庫について銀行に情報開示するのは大切であることに違いはありません。

まとめ

銀行の言動からわかる、架空在庫・不良在庫を疑われているのはこんなとき、についてお話をしてきました。

銀行から「架空・不良」を疑われると、融資が受けられなくなるかもしれません。あらぬ疑いをかけられたままにならないように、銀行の言動には注目をしておきましょう。

銀行の言動からわかる、架空在庫・不良在庫を疑われているのはこんなとき
  • 在庫の状況をヒアリングされる
  • 決算書の数字について質問される
  • 現場・現物を見せてほしい、と言われる
  • ABLの提案をされる
銀行の言動からわかる、架空在庫・不良在庫を疑われているのはこんなとき

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