銀行融資を受けている会社の社長であれば、「金利の常識」は理解している。と、思われるかもしれませんが。
間違い・勘違いもありえますから、再確認をしておきましょう。という、お話をしていきます。
常識であれば知っている、という非常識。
銀行融資を受けている会社の社長にとって、「金利」は関心ごとのひとつでしょう。その「金利」について、常識を再確認しておきましょう。という、お話をしていきます。
これを聞いて、「常識であれば知っている」と思われるかもしれませんが。わたしが、銀行融資のご相談を受けているなかで感じることは、間違い・勘違いをされている社長もいらっしゃる、ということです。
本記事にて、再確認をしていただければと思います。具体的には、次のとおりです↓
- 金利は上がっていく
- 引き下げ交渉はほどほどに
- あえて金利を上げる
- 規模が違う銀行とは比べない
- 利息を払ってでも借りる
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
銀行融資を受けている社長が再確認すべき「金利の常識」
金利は上がっていく
いまは低金利の時代です。借入金利が1%を切ることも、けしてめずらしくはありません。が、これからは、これまでほど金利は低くならない。金利は上がっていく、と考えておきましょう。理由は次の3つです↓
- 銀行の再編による競争緩和
- 信用保証協会の保証付き融資の減少
- 高リスクゾーンへの融資増加
銀行業界では、「再編」が進んでいます。具体的には、複数の銀行による経営統合や業務提携、吸収合併です。これからしばらくは、再編が進んでいくでしょう。
すると、銀行の数は減りますから。これまで起きていた「銀行どうしの競争→顧客獲得のための低金利合戦」は少なくなっていくはずです。結果、金利は上がります。というのが、1つめの理由です。
また、コロナ禍では、ものすごい件数・ものすごい金額の「信用保証協会の保証付き融資」が実行されました。この反動で、保証付き融資の実行が激減しています。
すると、銀行には「プロパー融資(信用保証協会の保証が無い融資)」しかありません。そのプロパー融資は、銀行にとってリスクが高い融資ですから、金利は高くなります。というのが、2つめの理由です。
さらに、2019年末の金融検査マニュアル廃止を受けて、各銀行は「独自性」を打ち出し、従来よりも高リスクの会社にも、相応の金利をとって融資を展開していくものと考えられます。
すると、決算書の内容が良くはない会社であっても、銀行融資を受けられる機会が増える。これは、会社にとってメリットですが、いっぽうで金利は高くなる。というのが、3つめの理由です。
引き下げ交渉はほどほどに
現状、低金利であることはお話をしたとおりです。にもかかわらず、金利の引き下げ交渉を「やりすぎる」のは得策とは言えません。その理由は、おもに2つあります↓
- コスパが悪い
- 銀行に嫌われる
徹底的に交渉することで、金利が0.1%下がったとします。借りている金額が 1,000万円であれば、金利引き下げによる効果は、年間1万円です(1,000万円×0.1%)。ひと月あたりだと 833円。
社長が、交渉する手間と時間を考えると、それほどコスパが良い効果とは言えないでしょう。というのが、1つめの理由です。
また、交渉が行き過ぎると、銀行からは嫌われます。ただでさえ低金利で融資をしているのに、そのうえさらに金利を引き下げたのでは、銀行にメリットがありません。
メリットがない会社に対しては、これ以上、融資をしたいとは考えないでしょうし、銀行担当者の足も遠のくものです。会社にとっては、大きなデメリットになります。というのが、2つめの理由です。
[ad1]あえて金利を上げる
金利は下げるもの、と考えるばかりではいけません。あえて金利を上げることも考えておきましょう。などと言うと、「そんなバカな!」と思われるかもしれませんが。
金利が上がったとしても、それ以上のメリットがあるのなら、あえて金利を上げることに意味はあります。たとえば、プロパー融資を受けられたり、経営者保証や担保を外すことができたり。
そこで、銀行に対して「多少、金利が上がってもいいから」と交渉するのは、ひとつの方法になります。つまり、金利の引き上げと引き換えに、他の融資条件改善を求めるわけです。
交渉成立の可能性を高める方法として、覚えておくとよいでしょう。
なお、リスケジュール(返済猶予)を銀行に依頼する際、銀行から金利の引き上げを要求されることがあります。リスケジュールを受け入れてもらうためにはやむをない…
とは、考えないようにしましょう。ただでさえ苦しい状況なのに、金利を引き上げられたら、リスケジュールをする意味がありません。結果、潰れてしまえば、銀行だって困るはずです。
さらに、リスケジュールにあたっては、「全銀行一律同条件」というルールがあります。取引銀行のうち、どこかの銀行だけが「有利な条件(金利・担保・返済金額など)」はダメだ、というルールです。
だから、「御行だけに特別な対応はできません」と、金利の引き上げはお断りしましょう。
規模が違う銀行とは比べない
金利の引き下げ交渉をする際、取引銀行どうしの金利を競わせるのはセオリーです。ところが、競わせるのであれば、規模が同じ銀行どうしにしておきましょう。
極端な例で言えば、都市銀行の金利と、信用金庫の金利とを競わせることはできません。現状、都市銀行の平均金利は 0.7%弱、信用金庫は 1.4%強です(日本銀行公表の貸出約定平均金利より)。
これを見てもわかるとおり、信用金庫に対して、都市銀行並みの金利を求めるのはムリがあります。
ではなぜ、都市銀行の金利は低いのか? ネームバリューを活かして、低コストで大量の預金を集めることができるから。その預金を原資に、安全な会社(=大企業)にたくさんの金額を融資できるからです。
いっぽう、信用金庫となると、都市銀行ほど預金を集められません。限られた預金を原資に、少々リスクがある会社(=中小企業)に対して、少量ずつ融資をすることになります。少量でも儲けるためには、金利を高くするしかありません。
このあたりの理屈を、押さえておくようにしましょう。都市銀行には都市銀行の基準があるし、信用金庫には信用金庫の基準がある。同様に、地方銀行にも地方銀行の基準があります。
その基準を無視した金利交渉にはムリがある、ということです。
利息を払ってでも借りる
利息はできれば払いたくないものでしょう。とはいえ、銀行から融資を受けるためには、もっと言うと、資金繰りを安定させるためには、利息は「必要なコスト」だと言えます。
もしも、利息を嫌い過ぎるあまり、まったく融資を受けずにいれば。手元のおカネは、利益でまかなわなければなりません。けれども、いつもいつも利益が出るときばかりではないでしょう。
そこで、赤字になってしまったから… と、銀行に飛び込むのでは遅すぎます。赤字の会社が融資を受けにくいことはご存知のとおりです。
だから、利息を払ってでも、あらかじめ借りておく。借りてでも、手元におカネを置いておくことが、資金繰りを安定させるためには必要です。これは、繰り上げ返済についても同じことだと言えます。
利息を嫌って、できるだけ繰り上げ返済しようとすると。手元のおカネは、やはり少なくなってしまいます。さらには、完済すると、銀行との関係性も切れてしまうのがデメリットです。
コロナ禍では、ふだん、銀行との関係性が無い・薄い会社は、融資を受けるのに苦労しました。いざというときにも、資金調達の道を残せるように。利息は必要コスト、と考えておきましょう。
まとめ
銀行融資を受けている会社の社長であれば、「金利の常識」は理解している。と、思われるかもしれませんが。
間違い・勘違いもありえます。本記事にて、あらためて確認をしておきましょう。
- 金利が上がっていく
- 引き下げ交渉はほどほどに
- あえて金利を上げる
- 規模が違う銀行とは比べない
- 利息を払ってでも借りる