融資を受けるにあたって、銀行対応を税理士に任せるのはひとつの方法です。
ところが逆に、融資が受けにくくなったり、受けられなくなったりすることがないように。銀行対応を税理士に任せることの問題と対策について、お話をしていきます。
そうだ、税理士に任せよう。
あぁ、融資を受けたいけれど、銀行対応がわからない。そうだ、顧問税理士に任せよう! というのは、ひとつの方法です。が、そこには「問題」が潜んでいることもあります。
融資を受けやすくするつもりが、融資が受けにくくなってしまったり。あるいは、いずれ融資が受けられなくなってしまったり… ということもありえるハナシです。
そこで、銀行対応を税理士に任せることの問題と、その対策についてお話をしていきます。おもな問題はぜんぶで3つ、次のとおりです↓
- 銀行と敵対関係になる
- 銀行からの評価が下がる
- じぶんが銀行対応できなくなる
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
銀行対応を税理士に任せることの問題と対策
【問題1】銀行と敵対関係になる
税理士が銀行対応に関わることを、嫌う銀行員もいます。ただそれは、税理士が嫌いというよりは、税理士を含む「第三者全般」が嫌いというケースが多いようです。
ではなぜ、銀行員が「第三者が銀行対応に関わること」を嫌うのか。第三者のなかには、「悪徳」な人間もいるからです。粉飾決算を指南して、融資を引き出し、成功報酬をもらってトンズラする。
だから、第三者のかかわりには「警戒」しているんです。というのは、幾人もの銀行員・元銀行員さんから聞いたハナシでもあります。事実、多かれ少なかれ、悪徳な第三者はいまもむかしも存在するそうです。
もっとも、「顧問税理士」となると、顧問先との長期的な関係を前提としていますから、単発で関わるコンサルタントよりは安心感があるものです。ただそれでも、第三者をまるごと嫌う銀行員の方もいます。
こうなると、銀行とは「敵対関係」になる恐れがあるので、銀行対応を税理士に任せるのもデメリットです。
さらに、税理士のほうが銀行員を嫌っているがために、銀行員から税理士が嫌われるケースもあります。どういうわけか銀行に対して「けんか腰」の税理士はいるものです。また、銀行を恐れるあまり、銀行員に対して「高圧的」な言動をする税理士もいます。
そりゃあ、銀行員も税理士を嫌いになるでしょう。という、ケースです。やはり、銀行と敵対関係になる恐れがあります。対策としては、税理士の「銀行員に対する考え方・態度」を観察することです。
銀行と敵対するのは、百害あって一利なし。銀行とは、協力関係を築くことが、なによりも大切になります。その協力関係を築こうという考え方を、税理士が持っているか。銀行対応時の態度にもあらわれているか、を見極めたいところです。
ちなみに、銀行側に協力関係を築こうという姿勢がないこともあります。なかには、腹に据えかねる扱いを受けることはあるので、結果的に敵対してしまう… ということはあるでしょう。ただし、例外であり、レアケースです。
[ad1]【問題2】銀行からの評価が下がる
たとえば、銀行との面談の際、税理士に同席をしてもらう。このとき、税理士は社長を押しのけるように話をしている。だれが社長かわからない、ということだと銀行からの評価が下がります。
銀行が聞きたいのは、社長の話、社長の声です。おカネを貸す相手は、社長の会社であって、税理士の会社ではありません。
社長が話をできないと、銀行からは「じぶんでは話ができない社長だ」と思われるか、「社長の考えがわからない」ということで、評価が下がってしまうわけです。
なので、税理士に同席をしてもらうにしても、メインで話をすべきは社長だと考えておきましょう。具体的には、銀行対応について税理士とは「役割分担」をしておくのがおすすめです。
たとえば、決算報告の面談であれば、まずは社長が「概要」と「自身の考え」について話をする役割。税理士は、社長が言いそびれた場合の「補足」と、だいじな部分はあらためて「強調」する役割。といった、具合です。
これだと、銀行は社長の話を聞けますから、その点で評価が下がることはありません。また、税理士の「サポート」があることに、安心を感じやすくもなるでしょう。
なお、銀行からなにか聞かれたり、頼まれたりしたときに、なんでもかんでも税理士任せにしていると、やはり評価が下がる可能性があります。
たとえば、「決算書にある〇〇費という勘定科目のなかみはどのようなものですか?」と聞かれたときに、「税理士に直接聞いてくれ」と答えるとか。「試算表をください」と頼まれたときに、「税理士に言ってくれ」と答えるとか。
銀行からは、「この社長は、決算書や試算表は見ていないのかな?」と思われてしまいます。言うまでもありませんが、決算書や試算表を見ていない社長を、銀行が良い目で見ることはありません。
たとえ税理士に聞いたり、頼んだりしなければいけないときでも、「〇〇費については、いちど確認してから回答します」や「試算表は準備してお渡しします」と対応することはできるでしょう。
これであれば、税理士任せにするよりは、評価が下がるのを避けられるはずです。
[ad1]【問題3】じぶんが銀行対応できなくなる
銀行対応を税理士に任せることの問題として、社長自身が銀行対応できなくなることが挙げられます。これは、すべてを税理士に任せきりにしていた場合、ということになりますが。
その税理士がいるあいだはよいにしても、いつまでもその税理士がいるかどうかはわかりません。いなくなったときには、銀行対応がまったくわからない… というのでは困ってしまうでしょう。
対策としては、銀行対応を税理士に任せながらも、社長自身が覚えていくことです。
わたしも、銀行対応の支援をしていますが、実際にはわたしが対応しながらも、考え方や方法をできるだけ社長にも覚えていただくようにしています。
ですから、ずっと支援をし続けるというよりは、いつかは支援を必要としなくなるように、との関わり方です。さいごは、社長自身で銀行対応ができるに越したことはありません。
というわけで、税理士に銀行対応を任せるときでも、ぜひ、銀行対応の考え方や方法を教えてもらうようにしましょう。
なお、銀行対応を税理士に任せるときには、「弁護士法違反」に気をつけなければいけません。弁護士法では、弁護士業務を、弁護士以外の人が行うことを禁じています。
のちのち争いごとが起きる可能性があることについて「交渉」する、これは弁護士業務にあたるものです。銀行に対するリスケジュールの交渉は、最たる例になります。
よって、そのような交渉を税理士に任せてしまうと、税理士は弁護士法違反です。なので、税理士に「交渉」を任せることはできません。では、なんだったら税理士に任せられるのか? といえば。
それは、「説明補助」です。決算書や試算表、資金繰り表や経営計画書について、社長に代わって説明をする。というのであれば、OKです。「交渉」と「説明補助」の違いは覚えておきましょう。
まとめ
融資を受けるにあたって、銀行対応を税理士に任せるのはひとつの方法です。
ところが逆に、融資が受けにくくなったり、受けられなくなったりすることがないように。銀行対応を税理士に任せることの問題と対策について、お話をしていきます。
- 銀行と敵対関係になる
- 銀行からの評価が下がる
- じぶんが銀行対応できなくなる