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現金商売(経常運転資金がない)の会社が資金繰りに苦しむのはなぜなのか?

現金商売(経常運転資金がない)の会社が資金繰りに苦しむのはなぜなのか?

すぐに現金を受け取ることができる現金商売、いいじゃないか。と、思われるかもしれませんが。意外にも資金繰りが厳しいのはなぜなのか?

その理由と対策について、お話をしていきます。

目次

おカネがあるようでないのが現金商売。

現金商売とは、商品・サービスの売上代金を、「すぐに・現金で」受け取る事業をいいます。いまは、完全なる現金商売の会社は少ないかもしれませんが、現金商売に近い会社はけして少なくありません。

たとえば、売上代金のいちぶはクレジットカードや電子マネー払いだけれど、ほとんどは現金払いで受け取る飲食店。クレジットカードや電子マネーの分も、ほどなく現金化できるので、現金商売に近い会社だと言えます。

すぐに現金を受け取ることができる現金商売、いいじゃないか。と、思われるかもしれませんが。実際には、意外にも資金繰りに苦しんでいるケースがあります。その理由がこちらです↓

現金商売の会社が資金繰りに苦しむのはなぜなのか?
  • 薄利多売が多いから
  • 融資が受けにくいから
  • ムダ使いをしがちだから
  • 高値仕入になっているから
  • 現金を管理しなければいけないから

これらの理由を確認しつつ、対策についても確認していきましょう。

現金商売の会社が資金繰りに苦しむのはなぜなのか?

薄利多売が多いから

現金商売とは、売上代金を「すぐに・現金で」受け取る事業だといいました。すぐに・現金で払ってもらえるのは、売上代金が比較的「少額」だからだ、とも言えるでしょう。

金額が大きくなるほど、すぐに払うことは難しくなるので、一般的には「掛売り(ツケ)」になります。では、売上代金が少額の商品やサービスの「利益」はいかほどか?

薄利のケースがあります。まずは、単純に「粗利益率(売上総利益率)」が低い。つまり、売上価格に対して、仕入原価が高い。ゆえに、薄利。売上価格が低いと、ありがちなケースです。

また、粗利益率が低いわけではなくても、最終的な利益が少なくなることもあります。商品やサービスひとつひとつの売上価格が小さいほど、多売が必要です。

多売をするには、人件費をはじめコストがかかります。ゆえに、最終的な利益が小さくなるケースです。

いずれにせよ、薄利になれば、当然、なかなかおカネが増えません。薄利多売が成り立つのは、大資本を元手に、大規模な多売ができる会社に限られます。中小企業には不適なのが、薄利多売です。

対策としては、売上価格を上げること、薄利ではなく厚利を目指すことになります。ひとつの方法が「値上げ」になります。周囲や競合を気にするあまり、長らく価格を据え置き(あるいは値下げ)、商品価値を下回る価格設定をしている中小企業は少なくありません。

商品価値を高めて値上げを目指すのはもちろん、いまの商品価値のまま、値上げの余地がないかをいちど検討してみましょう。

融資が受けにくいから

銀行から融資を受けるためには、「資金使途(おカネの使いみち)」が必要です。その資金使途のひとつに「経常運転資金」があります。

経常運転資金とは、算式にすると「売掛金+棚卸資産ー買掛金」です。この金額分だけ、会社はおカネを必要とするため、銀行からおカネを借りる理由になります。

このあたり、くわしくはこちらの記事もどうぞ↓

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では、現金商売の会社の経常運転資金とはいかほどか?

飲食店をイメージして考えてみましょう。売掛金がほとんどないことは、さきほど話をしたとおりです。棚卸資産(在庫)もそれほど多くはないでしょう。消費期限があるモノが多いので。

買掛金とは、掛仕入れ(ツケ)のこと。これは、あるかもしれません。そのうえで、経常運転資金はどうなるか?

売掛金と棚卸資産はあまりない。買掛金はあるかもしれない。とすると、経常運転資金は、ちょっとプラスか、ややもするとマイナスです。マイナスは、経常運転資金としてのおカネが必要ないことをあらわしています。

結果、銀行からは「経常運転資金」の融資が受けにくくなってしまう。融資が受けられれば、もっとラクに資金繰りができるのに… ということになります。

対策としては、融資が受けやすくなる「環境」を整えることです。まずは、きちんと利益を出すこと。利益を出している会社は、資金使途とは別の部分で、融資が受けやすくなるものです。

また、自社の資金繰り状況を、銀行に伝えることも大切です。具体的には、資金繰り表を作成して、銀行に提示・説明をする。これにより、融資の必要性(より資金繰りを安定させる)、返済を含めて資金繰りがまわることを伝えられれば、現金商売といえども融資は受けやすくなります。

ムダ使いをしがちだから

現金商売の場合、売上代金を「すぐに・現金で」受け取ることができることから、おカネがあるように見えてしまいがちです。ところが、ほんとうに使ってもいいおカネかどうかはわかりません。

たとえば、掛仕入れであれば、まもなく仕入代金を支払わなければいけない… ということはあるでしょう。それは、売上代金から仕払うべきものであり、入金されたおカネはとっておかねばなりません。

ところが、先に現金で受け取ってしまうと、おカネがあると勘違いをして、ついつい使ってしまう… というのは、「現金商売あるある」のようです。

似たようなこととして、税金の支払いが挙げられます。税金もまた、入金のあとに支払うべきもののひとつです。したがって、その分のおカネをとっておかなければいけません。

対策としては、向こう1年くらいの資金繰り表をつくって、仕入代金や税金ほか、支払わなけれいけないものを把握しつつ、おカネの動きを管理することです。

また、もしも設備投資をするのであれば、手元のおカネを使うのではなく、銀行融資を受けましょう。「設備資金」を資金使途として、融資を受けることができます。

現金商売が「経常運転資金」の融資を受けにくいことは、すでに話をしたとおりです。借りられる理由があるときには、融資を受けて、手元のおカネを減らさないようにしましょう。

高値仕入になっているから

現金商売の会社では、売上代金の受取りは現金でも、仕入代金の支払いは掛け(ツケ)ということもあります。そんな掛仕入れのメリットは、支払を先延ばしできることです。

それはそれで、資金繰りがラクになっているように見えますが。実は、中長期的に見ると、必ずしもそうとは言えません。なぜなら、掛仕入れは「割高」だからです。

通常、「即払い」と「後日払い」で比べると、即払いのほうが価格が安くなります。おカネを受け取るほう(仕入先)からすれば、早く支払ってもらうほうがありがたいものです。

これに対して、後日払いとなると、おカネを受け取るまでの資金繰りを考えなければいけません。銀行からおカネを借りるとなれば、利息というコストもかかるでしょう。ゆえに、その分のコストも上乗せされて、後日払いの場合には価格が高くなるわけです。

だったら、こちらは「即払い」に切り替える、即払いまではできなくても、支払までの期間(支払いサイト)をできるだけ短くして、仕入価格の値下げ交渉をするのもよいでしょう。

値下げに成功すれば、利益が増えますから、結果としておカネも増えることになります。

が、即払いをするだけのおカネがないんだ。というのであれば、対策は「銀行融資」です。買掛金が減れば「経常運転資金」は増えますから、その分の融資を受けることができます。

もちろん、融資を受ければ、利息を支払わなければいけませんので、「利息以上の値下げ」が前提です。

現金を管理しなければいけないから

現金商売をしていると、当然ながら、「現金の管理」という仕事が発生します。

レジでは、間違えのないようにおカネを受取り、間違えのないように釣り銭を渡す。毎日、レジのなかにある現金に間違えがないかを確認する。現金がたまったら、銀行へ預けにいく。

これらは、手間と時間がかかるものであり、人件費が増えると考えればコストです。また、釣り銭がなくなれば、両替も必要になります。両替するにも手数料がかかりますから、これまたコストです。

さらに、現金となると「盗難」の可能性があります。外部犯もあれば、残念ながら内部犯のケースも、けして少なくはありません。盗難にあえば、おカネは減ってしまいますし、盗難対策にはおカネがかかるものです。

そういったコストの積み重ねが、おカネを減らし、資金繰りを悪くすることにも繋がります。

対策としては、できるだけ「現金」をなくすことです。クレジットカードや電子マネーでの決済を取り入れて、現金をゼロにはできないとしても、できるだけ減らすことを考えましょう。

決済手数料で「おカネ」はかかりますが、「人手」は減らすことができます。人手があれば、その分、別のことに時間を使うことが可能です。

商品開発をして売上を増やす、サービス提供を充実させることで売上単価を増やすなど、いままで現金管理に費やしていた時間を、おカネを増やす時間に充てることができるでしょう。

まとめ

すぐに現金を受け取ることができる現金商売、いいじゃないか。と、思われるかもしれませんが。意外にも資金繰りが厳しいのはなぜなのか?

その理由と対策を、確認しておくようにしましょう。

現金商売の会社が資金繰りに苦しむのはなぜなのか?
  • 薄利多売が多いから
  • 融資が受けにくいから
  • ムダ使いをしがちだから
  • 高値仕入になっているから
  • 現金を管理しなければいけないから
現金商売(経常運転資金がない)の会社が資金繰りに苦しむのはなぜなのか?

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