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債務償還年数はOKでも、債務償還速度はNGかもしれない

債務償還年数はOKでも、債務償還速度はNGかもしれない

債務償還年数はOKでも、債務償還速度がNGだと資金繰りの悪化を招きます。債務償還速度には、なぜ問題が起きるのか? その理由と対応策についてのお話です。

目次

はて、債務償還速度とは?

銀行融資について、「債務償還年数」という指標があります。算式で言うと、次のとおりです↓

債務償還年数の算式

債務償還年数 = 借入金残高 ÷(税引後利益 + 減価償却費)

「税引後利益+減価償却費」を返済原資と見たときに、つまり、いまの利益ペースなら、あと何年で返済できるのか? を示すのが債務償還年数です。

その債務償還年数が「10年以内」というのが、融資を受けられる目安とされています。この点で、債務償還年数はOKなのだけれど、債務償還速度がNGのケースには気をつけなければいけません。

債務償還速度とは、算式で言うと次のとおりです↓

債務償還速度の算式

債務償還速度 = 借入金残高 ÷ 年間返済額

債務償還速度と言われても、耳慣れないかとは思います。わたしが勝手に名付けたものなので。名称はともかく、いまの返済ペースなら、あと何年で返済できるのか? を示すのが債務償還速度です。

では、債務償還年数はOKなのだけれど、債務償還速度がNGとはどういうことなのか? このあと具体例で確認をしていきましょう。放っておくと、資金繰りの悪化を招くところです。


NG事例を確認してみよう

具体例として、「税引後利益 600万円、減価償却費ゼロ」の会社が、あらたに 3,000万円の融資を受けたとします。返済期間は5年(60ヶ月分割返済)です。債務償還年数と債務償還速度は、次のとおりになります↓

3,000万円の融資を受ける
  • 3,000万円の融資の年間返済額 = 3,000万円 × 12/60ヶ月 = 600万円
  • 債務償還年数 = 3,000万円 ÷(600万円+0万円)= 5年
  • 債務償還速度 = 3,000万円 ÷ 600万円= 5年

上記のとおり、債務償還年数は5年ですから、10年以内で問題なし。債務償還速度も、債務償還年数と同じく5年。現状では、「返済原資である税引後利益 600万円」と「年間返済額 600万円」とはイコールですから、債務償還速度にムリがないものとわかります。

では、この会社が2年のあいだ返済を続けたのち、あらたに 1,200万円の融資を受けたとしたらどうでしょう。あらたに受けた融資の返済期間もまた、5年(60ヶ月分割返済)です。なお、税引後利益に変化はないものとします。

債務償還年数と債務償還速度は、次のとおりです↓

あらたに 1,200万円の融資を受ける
  • 当初 3,000万円の融資の残高 = 3,000万円 ー(600万円 × 2年)=1,800万円
  • 1,200万円の融資の年間返済額 = 1,200万円 × 12/60ヶ月 = 240万円
  • 債務償還年数 =(1,800万円 + 1,200万円) ÷(600万円+0万円)= 5年
  • 債務償還速度 =(1,800万円 + 1,200万円) ÷(600万円 + 240万円)= 3.57…年

上記のとおり、債務償還年数は以前と変わらず5年です。問題はありません。いっぽうで、債務償還速度はどうかというと。3.57年と、以前の5年よりもだいぶ速くなりました。

返済原資である税引後利益 600万円に対して、年間返済額が 840万円(600万円 + 240万円)ですから、手元のおカネを 240万円取り崩しながら返済していることがわかります。

これが、「債務償還年数はOKでも、債務償還速度がNG」の状況です。借りているおカネは、以前と変わらず 3,000万円なのにもかかわらず、資金繰りが悪くなっているところに問題があります。

言うまでもなく、当初の融資の返済に加えて、あらたに融資を受けた分の返済が増えたからです。

では、さらに時間を進めてみましょう。この会社が1年のあいだ返済を続けたのち、あらたに 840万円の融資を受けるものとします。あらたに受けた融資の返済期間もまた、5年(60ヶ月分割返済)です。やはり、税引後利益に変化はないものとします。

債務償還年数と債務償還速度は、次のとおりです↓

あらたに 840万円の融資を受ける
  • 当初 3,000万円の融資の残高 = 3,000万円 ー(600万円 × 3年)=1,200万円
  • 当初 1,200万円の融資の残高 = 1,200万円 ー(240万円 × 1年)=960万円
  • 840万円の融資の年間返済額 = 840万円 × 12/60ヶ月 = 168万円
  • 債務償還年数 =(1,200万円 + 960万円 + 840万円) ÷(600万円+0万円)= 5年
  • 債務償還速度 =(1,200万円 + 960万円 + 840万円) ÷(600万円 + 240万円 + 168万円)= 2.97…年

上記のとおり、債務償還年数は相変わらずの5年ですが。債務償還速度のほうは、さらに速くなって 2.97年です。やはり、借りているおカネの合計は 3,000万円のままであるにもかかわらずです。

返済原資である税引後利益 600万円に対して、年間返済額は実に 1,008万円。手元のおカネを 408万円も取り崩さなければ返済ができない事態になっています。

というように、きちんと利益を出し続けている会社であっても、借りている金額が増えているわけではなくても、資金繰りが悪化することはあるのです。これは、意外と「あるある」ですから、気をつけなければいけません。


NG事例の対応策

「債務償還年数はOKでも、債務償還速度がNG」だと、どうして資金繰りが悪くなるのかを理解したところで、ここからは「対応策」を確認していきましょう。

【対応策1】年間返済額分の融資を受ける

1つめの対応策は、「年間返済額分の融資を受ける」ことです。あらかじめ、向こう1年の年間返済額分のおカネがあれば、債務償還速度が上がったとしても、資金繰りの心配はなくなります。

具体的には、毎年の決算がおわったら、向こう1年の年間返済額を計算してみる。そのうえで、決算書を持って、銀行へ「決算報告」をしに行きます。

決算の内容や、今期の見込みなどを伝えつつ、いちばんの目的は「借入計画」を伝えることです。「向こう1年で〇〇万円の資金調達を考えています。良い提案があればお願いします」、と言いましょう。

〇〇万円のなかには、向こう1年で必要になる設備資金(設備購入のためのおカネ)や、運転資金(仕入代金や経費を支払うおカネ)に加えて、向こう1年の年間返済額も織り込みます。

これを、取引銀行(融資を受けている銀行)のすべてに行いましょう。銀行が「貸したい」と考えれば、融資を提案してくれるはずです。計画どおりに借入できれば、資金繰りの心配はなくなります。

が、この対応策の問題点は、ほんとうに融資を受けられるかどうかはわからないところにあります。銀行が融資をするのは、基本的に、会社の業績が良いときです。

もし、会社の業績が悪く、決算書の内容が悪ければ、思いどおりには借入できないこともあるでしょう。結果、資金繰りは厳しいものとなります。

【対応策2】一本化して返済額を圧縮する

資金繰りが厳しいのは、債務償還速度が上がったから。年間返済額が増えたからだ、というのであれば。年間返済額を減らせばよい、との対応策もあります。

一本化、と呼ばれる方法です。さきほどの事例であれば、当初 3,000万円の融資を受けたあと、あらたに 1,200万円の融資を受ける際、別口とするのではなく、一本にまとめて融資を受けます。

つまり、3,000万円をあらたに借りて、当初 3,000万円の融資の残額 1,800万円は完済する。結果として、1,200万円の融資を受けたことになるわけです。

このとき、あらたに借りた 3,000万円の返済期間を5年とすれば、債務償還速度が変わることはありません。これが、一本化による効果になります。

ですから、あらたに融資を受けるときには、既存の融資との一本化を銀行に相談してみましょう。資金繰りが悪化するのを未然に防ぐことができます。

ところが、一本化もまた、業績が悪い会社の場合には、銀行が消極的になることはあるものです。一本化とは、言うなれば、返済の先延ばしでもありますから、返済期間が延びた分だけ回収リスクが高まります。業績が悪い会社であればとくに、です。

したがって、一本化をするにも、基本的には「業績がよいときが狙いめ」になるものと考えておきましょう。

ただし、業績が悪いときにでも、一本化する方法があります。それは、信用保証協会の「借換保証制度」です。対象は、信用保証協会の保証付き融資に限られますが、複数口(一口しかなくてもOK)の融資を一本にまとめて、最長10年まで返済期間を延ばすことが可能です。

保証付き融資であることから、銀行も比較的応じてくれやすい制度になります。いざというときのために、覚えておくとよいでしょう。

【対応策3】手形貸付・当座貸越に切り替える

年間返済額を減らすという点で、前述の一本化とは別にもうひとつ。毎月返済をしている借入を、返済なしの借入に切り替える方法があります。そんなことができるのか?と、思われるかもしれませんが。

具体的には、手形貸付や当座貸越です。

まず、手形貸付とは。返済期限が1年以内の短期融資で使われる融資の方法になります。会社は、金銭消費貸借契約証書の代わりに、銀行に対して約束手形を振り出すので「手形貸付」です。

でも、1年以内に返済をしなければいけないのか? と、いえば。そうではありません。返済期限がきたら、銀行の審査はありますが、基本的には、期限を更新して「借りっぱなし」にすることが可能です。

いっぽうの当座貸越とは。銀行が設定する「極度額(限度額)」の範囲内で、会社は好きなように借りたり返したりができるため、やはり、「借りっぱなし」にすることができます。

ただし、手形貸付も当座貸越も業績が悪い会社は、銀行が取り組みづらい融資です。とくに、当座貸越は、優良会社向けであり、年間売上高数億円ていどの規模感を求められることもあります。

業績がよいときに、取引銀行に相談をしてみるのがよいでしょう。

なお、手形貸付も当座貸越も、融資ですから「利息の支払い」は必要です。当座貸越は、証書貸付(毎月分割返済)に比べると、金利が高くなるケースもあることから、「借りっぱなし」によるコスト高には注意しましょう。


まとめ

債務償還年数はOKでも、債務償還速度がNGだと資金繰りの悪化を招きます。債務償還速度には、なぜ問題が起きるのか? その理由と対応策を押さえておきましょう。

あらたに融資を受けているはずなのに、どんどん資金繰りが悪くなっていく… という事態を避けることができるはずです。

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