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金融庁公表の『地域金融機関情報一覧』を使って取引銀行を比較してみよう

金融庁公表の『地域金融機関情報一覧』を使って取引銀行を比較してみよう

金融庁が公表している「都道府県別の中小・地域金融機関情報一覧」を使って、取引銀行どうしを比較してみましょう。自社に合った銀行を選ぶのに役立ちます。

目次

銀行選びはたいせつだ。

銀行から融資を受けている会社にとって、「銀行選び」は大切です。選んだ銀行によって、融資が受けやすくなったり、受けにくくなったりすることがあります。

では、銀行選びの際に、なにを目安にすればよいのか? そのひとつに挙げられるのが、金融庁がWEBで公表している「都道府県別の中小・地域金融機関情報一覧」です。

その名のとおり、都道府県別に地域金融機関の情報が一覧になっています。ちなみに、地域金融機関とは、「地方銀行・信用金庫・信用組合」のことです。

年間売上高が数十億円未満の中小企業は、基本的に、都市銀行からの融資は「不適」であり、地域金融機関からの融資が適しています。

ですから、「都道府県別の中小・地域金融機関情報一覧」を使うことで、自社の取引銀行の情報を確認してみる。取引銀行を比較してみる。そのうえで、銀行選びに役立てられるとよいでしょう。

というわけで、「都道府県別の中小・地域金融機関情報一覧」の使い方や、銀行選びへの活かし方について、このあと確認をしていきましょう。

「都道府県別の中小・地域金融機関情報一覧」の使い方

使い方といっても、とくにムズカシイことはありません。まずは、「都道府県別の中小・地域金融機関情報一覧(以下、地域金融機関情報一覧)」のページを開いてみましょう。

すると、都道府県名を選択する画面が表示されます。ここで、調べたい銀行の「本店」がある所在地の都道府県をクリックしてみましょう。

「地域銀行(地方銀行)・信用金庫・信用組合」を選択する画面が表示されますので、調べたい銀行の種別をクリックします。PDFまたはExcelのいずれかを選択可能です。

すると、各銀行の情報が表示されます。表示される情報は次のとおりです↓

  • 金融機関名、本店所在地、店舗数
  • 預金、貸出金、自己資本比率、不良債権比率
  • 中小企業等向け貸出残高、中小企業等向け貸出先件数
  • ディスクロージャー(Web)のURL

もしかすると、「たったこれだけ?」と、思われるかもしれませんが。たったこれだけでも、役に立つ情報はあるものです。このあと確認していきましょう。

なお、上記のとおり「ディスクロージャー(Web)のURL」も掲載されていますから、その銀行のことを「もっとくわしく知りたい」のであれば、ディスクロージャーもすぐに見れるのは便利です。

「地域金融機関情報一覧」は、ディスクロージャーの「超要約版」と考えておくとよいでしょう。

「都道府県別の中小・地域金融機関情報一覧」の活かし方

「地域金融機関情報一覧」の使い方を確認したところで、ここからは、銀行選びへの活かし方について見ていきましょう。「地域金融機関情報一覧」に掲載されている情報のなかから、とくに役立つものとして、3つの情報をとりあげます。

預金

文字どおり、各銀行の預金の額を知ることができます。これで、なにを見るのかと言えば、その銀行の規模感です。預金が多いほど大きな銀行、少ないほど小さな銀行。

大きい銀行のほうが良さそうな気もしますが、自社の規模が小さい場合には、あまり親身なお付き合いをしてもらえないケースもあります。

大きな銀行がだいじにするのは、やはり、大きな規模の会社だということは覚えておきましょう。

たとえば、神奈川県の「地域銀行(地方銀行)」を見ると、2つの銀行があります。それぞれの預金の額(令和3年3月末時点)は以下のとおりです↓

  • 横浜銀行 → 16兆2,403億円
  • 神奈川銀行 → 4,799億円

というように、同じ「地域銀行(地方銀行)」でも、これだけの差があります。良いか悪いかの話ではなく、「差がある」というところが重要です。

銀行は、あずかった預金をもとに融資をします。預金が多いと、それだけたくさんの融資ができます。たくさんの融資ができるということは、大きな会社に大きな金額をまとめて融資するほうが、銀行にとっては効率的です。

よって、預金が多い銀行は、大きい会社に融資をしたいと考えます。小さな会社は、あまり親身になってもらえないかも… と考えられるところです。

さきほどの2つの銀行について、「地域金融機関情報一覧」には、貸出金(融資)の額も記載されています↓

  • 横浜銀行 → 12兆1,328億円
  • 神奈川銀行 → 3,834億円

というように、預金の額の大きさによって、貸出金の額に差が出ることもわかるでしょう。

なお、銀行の種別によっても、預金の額には差が出ます。同じく、神奈川県の「信用金庫」について確認をしてみます(8行中3行を抜粋)。

  • 横浜信用金庫 → 2兆121億円
  • かながわ信用金庫 → 1兆2,887億円
  • 平塚信用金庫 → 5,659億円

さきほどの横浜銀行に比べると、神奈川県でいちばん大きな信用金庫である横浜信用金庫でも、その差は歴然です。

いっぱんに、銀行の規模は「地方銀行>信用金庫>信用組合」の順になることも覚えておきましょう。いっぽうで、同じ種別のなかでも差があることは、上記3つの信用金庫を比べてみればわかります。

差があるからこそ、取引銀行どうしを比較してみることが大切です。

預貸率

続いて、「地域金融機関情報一覧」のなかから、預貸率(よたいりつ)を確認していきます。

預貸率とは、「貸出金(融資)/預金」で計算される指標です。つまり、銀行が集めた預金を、どれだけ貸し出し(融資)に回しているか? をあらわすのが預貸率になります。

たとえば。100の預金を集めて、70の貸し出しをしているのであれば。その銀行の預貸率は70%(=70/100)です。

「地域金融機関情報一覧」には、貸出金と預金の情報がありますから、預貸率を計算することができます。でも、その預貸率はなにを意味するのか?

まず、預貸率が低い銀行は「融資に消極的だ」と見ることができます。預貸率が低くなる理由もいくつかありますが、銀行の「業績が悪い」ということがあるでしょう。また、貸し出し能力(目利き力)が不足していて融資に及び腰、ということもあるでしょう。

いずれにせよ、預貸率が低い銀行よりも、預貸率が高い銀行のほうが融資に積極的であり、会社は融資を受けやすいのではないか? と、考えられるところです。

では、なにをもって「預貸率が低い・高い」と考えるのか? それは、「相対的に考える」ということです。つまり、自社の取引銀行それぞれの預貸率を比較してみて、そのなかで低い・高いを考えることになります。

あるいは、まだ取引をしたことはなくても、自社の近くにある銀行と比較をしてみるのもよいでしょう。あらたにお付き合いをはじめるのに、よい銀行が見つかるかもしれません。

なお、参考までに。銀行の種別(地方銀行か信用金庫・信用組合か)によっても、預貸率は変わってきます。地方銀行の預貸率は平均で 70%くらいですが、信用金庫・信用組合となると 50%くらいです。種別の異なる銀行どうしを比べるときには注意しましょう。

また、日本全国で見たときには、地域によっても差があるところです。2021年3月末現在、もっとも預貸率が高いのは愛媛県で 79.4%、もっとも低いのは奈良県で 37.6%です。ちなみに、東京都は第7位で 67.6%になります。

各地域の銀行事情、産業の状況、資金需要などによるものであり、異なる地域どうしの銀行を比べるときには注意を要するところです。

中小企業等向け貸出残高・貸出先件数

「地域金融機関情報一覧」には、「中小企業等向け貸出残高」と「中小企業等向け貸出先件数」についても掲載されています。過去2年分の数字が掲載されていることから、その増減を見ることで、中小企業向に対する融資姿勢の「傾向」をはかることが可能です。

もちろん、取引銀行どうしを比較することで、中小企業はどの銀行が融資を受けやすいかの参考にすることもできます。

自己資本比率

さいごにもうひとつ、「地域金融機関情報一覧」のなかから、自己資本比率を確認しておきましょう。

そもそも、自己資本比率とは「自己資本/総資産」で計算する指標です。その自己資本比率について、銀行には「一定のハードル(自己資本比率規制)」が課せられています。

ハードルを下回ると、その銀行は存続できなくなってしまう。ゆえに、ハードルをクリアすべく、各銀行は自己資本比率を上げようとしています。では、どうしたら自己資本比率を挙げられるのか?

わかりやすく考えるために、銀行における「総資産」は「貸出金(融資)」に、「自己資本」は「利益」に置き換えてみましょう。置き換えることで厳密さは欠きますが、話の本質は変わりません。

まず、自己資本比率(利益/貸出金)を上げるには、「利益」を上げればよいとわかります。ところが、「低金利」や「回収不能による損失」などで、思ったように利益を上げられないこともあるでしょう。

そうなると、自己資本比率を上げるためには、「貸出金(融資)」を減らさなければいけません。「貸出金(融資)」を減らすということは…? いわゆる「貸し渋り・貸し剥がし」です。

結果として、自己資本比率が低い銀行ほど、積極的な融資をのぞめない、ということになります。したがって、会社は「できるだけ自己資本比率が高い銀行を選ぶ」のがよいでしょう。

また、銀行はいま、地方銀行を中心に「再編(提携・統合・合併)」が進行中です。そこには、取り込む側の銀行と、取り込まれる側の銀行とが生じます。

いっぱんに、業績のよい銀行が取り込む側にまわるものです。つまり、自己資本比率が高い銀行が取り込む側、自己資本比率が低い銀行が取り込まれる側になります。

自社の取引銀行が取り込まれる側の銀行であった場合、融資姿勢が大きく変わる可能性があるでしょう。どちらかと言えば、融資を受けにくくなる方向への変化です。

逆に、取り込む側の銀行であれば、そのような変化を避けることができます。そういう意味でも、自己資本比率が高い銀行を選べるとよいでしょう。

まとめ

金融庁が公表している「都道府県別の中小・地域金融機関情報一覧」を使って、取引銀行どうしを比較してみましょう。自社に合った銀行を選ぶのに役立ちます。

金融庁公表の『地域金融機関情報一覧』を使って取引銀行を比較してみよう

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