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銀行に対して「他行の金利を隠すべきか否か」について

銀行に対して「他行の金利を隠すべきか否か」について

銀行融資に関する社長のよくある質問に、「他行の金利を隠すべきか否か?」があります。というわけで、その答えと理由についてお話をしていきます。

目次

隠すな、危険。

融資を受けている会社の社長からいただく、よくある質問のひとつに「銀行に対して、他行(ほかの取引銀行)の金利は隠したほうがよいのか?」というものがあります。

つまり、他行の金利とは「仕入値」のようなものであり、それがバレてしまうと、銀行からは足元を見られるのではないか? いま現在の金利が高ければ、その水準に足並みをそろえられてしまうのではないか? そういった思いから生じる質問です。

たしかに、そういった一面を完全に否定することはできません。が、結論として、「他行の金利を隠すべきではない」というのが、わたしの考えになります。

えっ、なんで? と思われるでしょうから。このあと、その理由についてお話をしていきます。なお、おもな理由は次のとおりです↓

銀行に対して、他行の金利を隠すべきではない理由
  • おおまかにバレている
  • 黙っていれば誤解を招く
  • 隠せば怪しくなるばかり

これらの理由について、このあと順番に見ていきましょう。

銀行に対して、他行の金利を隠すべきではない理由

おおまかにバレている

他行の金利を隠していたとしても、銀行にはおおまかにバレています。なぜなら、各銀行は、融資先から提示された決算書をもとに、金利を「推定」しているからです。

その方法は、「平均金利」の算出になります。平均金利とは、算式であらわすと、次のとおりです↓

平均金利の算式

平均金利 = 支払利息 ÷ 借入金残高

算式中の「支払利息」は、決算書のうち「損益計算書」を見ればわかります。「借入金残高」も、決算書のうち「貸借対照表」を見ればわかります。

ちなみに、「借入金残高」については、より精度を高めるために「(前期末の借入金残高+当期末の借入金残高)÷2」をもちいるのが通例です。いずれにせよ、決算書を見ればわかります。

この平均金利によって、銀行はその融資先が「おおまかどれくらいの金利で借りているか」は推定できるわけです。そのうえで、「自行の金利は、平均金利よりも高いのかな?低いのかな?」という見方をしています。

また、決算書(税務申告書)に付随している、「勘定科目内訳明細書」も確認をしてみましょう。勘定科目内訳明細書のなかには、「借入金及び支払利子の内訳書」という書類があります。期中に支払った利息額や金利について、銀行ごとに記載をする書類です。

わたしの経験上、金利を記載しているケースは「少数派」でしょう。とはいえ、多くの会社が、勘定科目内訳明細書の作成を税理士に依頼しているはずですから、金利が記載されているか否かを確認しておく必要があります。

銀行は必ず、勘定科目内訳明細書をチェックしていますから、そこに金利(あるいは利息額)が記載されていれば、聞くまでもなく「丸わかり」だということです。社長としては、銀行に金利を隠していたつもりでも、実は丸わかりでした… というケースもありますので、そこは注意をしておきましょう。

少々、ハナシが横道にそれましたが。勘定科目内訳明細書に記載がなくとも、決算書があれば、金利はおおまかにバレている。ゆえに、あまり隠してもしかたがないかもしれませんよ。という、お話でした。

黙っていれば誤解を招く

では、決算書から算出した「平均金利」が高かったとして。それも「自行の金利と比べると高いぞ」という場合に、銀行はまず、なにを考えるのか? といえば。

もしかして、自行で考えている以上に、この会社の状況は悪いのか…? ということでしょう。つまり、他行は自行が知らないような情報も持っていて、そのなかには、決算書にあらわれないような「悪い情報」もある。だから、金利が高くなっている、みたいな。

だとすれば、自行も金利を上げたほうがいいかも。もっと言えば、もう融資は控えたほうがいいかも。と、考えるのがふつうですよね。

ですが、実はそんなことはない。悪い状況などなくて、むしろ状況はよくなっているんだ。というケースはあるものです。具体的には、だいぶ前に借りた融資の金利は高いが、最近になって借りた融資の金利は低くなってきている。業績が改善傾向にある会社で見られるケースになります。

この場合には、「すべての銀行・すべての融資の金利」に関する情報をオープンにしたほうが、銀行は会社の状況を正しく把握できるようになるはずです。

結果として、「業績は改善しているし、最近は他行が金利を下げている。だったら自行も金利を下げよう」ということにもなるでしょう。逆に、金利に関する情報を隠していれば、業績が改善傾向にあること、金利が低下傾向にあることは、銀行に伝わりません。

またもし、業績は改善傾向にありながらも、まだ金利が高止まりしているような場合。金利に関する情報をオープンにしていれば、それを見た取引銀行のいずれかが、積極的に融資セールスをかけてくる可能性もあります。

他行が金利を下げていないのなら、自行の金利を下げて、一気に融資を奪ってしまおうということです。銀行どうしの「競争」はありますから、その競争が起きる「環境をつくる」ために、金利を隠さずオープンにすることも考えてみましょう。

隠せば怪しくなるばかり

とはいえ、それでも金利が総じて高ければ、やっぱり足元を見られるのではないか? と、思われるかもしれません。そのとおりです。冒頭でもふれたとおり、そういった一面を完全に否定することはできません。

ですが、なにごとも隠せば怪しくなることは理解しておきましょう。銀行に聞かれたことに答えず、隠そうとすれば、その銀行は「なんかアヤしいかも…」との疑念を抱くものです。

この点で、金利に限らず、業務上の守秘義務に反するものでない限り、銀行に対して隠しごとをするのは得策ではありません。怪しんだ銀行は、融資を控えればよいだけだからです。当然、会社としては不利益でしょう。

たとえば、赤字の会社が、なんとか融資を受けようとして、「悪い情報」についてはクチにせず、隠そう隠そうとするケースがあります。隠したうえに、「ウソ」をついてしまうこともあります(事実とは異なる、良い情報を伝えるとか)。

海千山千の銀行ですから、隠しごとをしている会社はわかるものです(と、銀行員の方は言われますよね)。銀行でなくとも、隠しごととはいつかバレる命運にある、とも言えるでしょう。

いずれにせよ、そういった隠しごとをする会社と、銀行が「信頼関係を築けるか?」といえば。築けるはずがありません。いっぽうで、融資とは「信頼関係の上に成り立つ取引」です。

したがって、よりスムーズに融資を受けたい、よりよい条件で融資を受けたいと考えるのであれば。信頼関係の構築は必然であり、「隠しごとなどしないほうがよい」とわかります。

なので、たとえいま現在は金利が高くても、金利を隠すのはやめておきましょう。と、わたしはおすすめをしています。それよりなにより、金利が高い現状と、その原因を理解することです。

多くの原因は、現在の業績にあります。端的に言えば、銀行から見たときの「決算書の内容が悪い」のです。そこでまずは、決算書をよくすることからはじめましょう。

これまた端的に言えば、利益を出すことです。細かいことを言わずとも、利益を出すことができれば、決算書は「必ず」よくなります(言うまでもありませんが、粉飾による利益はアウト)。

そんなこと言ったって、結果がすぐに出れば苦労はしないんだ。と、思われるかもしれません。それは、銀行だってわかっています。だからこそ、実際に「取り組んでいるかどうか」が大切です。

いま業績が悪くても、業績を改善できるように取り組んでいるか。具体的に、だれが、いつ、なにに、どのくらい、どのように取り組んでいるのか。これを伝えるために必要なのが「経営計画書」です。

経営計画書をつくるのもカンタンではありません。つくったあとに管理・運用するのは、もっとカンタンではありません。やはり、銀行はそれを知っています。だからこそ、経営計画書をつくり、日々、進捗管理できる会社は、銀行から一目置かれることを理解しておきましょう。

すると、銀行との信頼関係も築きやすくなるものです。たとえ赤字だとしても、銀行から積極的に支援をしてもらえる会社には、そのような「特徴」があります。

まとめ

銀行融資に関する社長のよくある質問に、「他行の金利を隠すべきか否か?」があります。というわけで、その答えと理由についてお話をしてきました。

結論、他行の金利を隠すべきではありません。隠すことによってえられるかもしれないメリット(足元を見られずにすむかも)はありますが、隠すことによるデメリットのほうが大きいからです。

それでも、金利を隠すかどうか。金利を隠したときのデメリットを理解したうえで、考えるようにしましょう。

銀行に対して、他行の金利を隠すべきではない理由
  • おおまかにバレている
  • 黙っていれば誤解を招く
  • 隠せば怪しくなるばかり
銀行に対して「他行の金利を隠すべきか否か」について

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