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決算日が休日の決算書・月末が休日の試算表を銀行に提出するときの注意点

決算日が休日の決算書・月末が休日の試算表を銀行に提出するときの注意点

決算日が休日の決算書、月末が休日の試算表。これらを銀行に提出するときには注意する必要がありますよ、というお話をしていきます。

目次

休日はうれしいな、では済まない。

融資を受けている(あるいは受けようとする)会社が、銀行に提出することがあるのが「決算書」や「試算表」です。それらに関する注意点はいろいろありますが。

なかでも、あまり知られていないことのひとつが、「決算日が休日・月末が休日」のときの注意点です。つまり、決算日が休日の決算書、月末が休日の試算表、これらを銀行に提出するときには注意する必要がありますよ、ということになります。

具体的には、こちらです↓

決算日が休日の決算書・月末が休日の試算表を銀行に提出するときの注意点
  • 売掛金の未入金
  • 買掛金の未払
  • 未払金の未計上

これらを見て、「いったいどういうこと?」とおもわれたかもしれませんが。このあと順番に確認をしていきましょう。

決算日が休日の決算書・月末が休日の試算表を銀行に提出するときの注意点

売掛金の未入金

決算日が休日、月末が休日だと起きることとして、売掛金(売上代金)の未入金があります。ふだんであれば毎月末日に入金されるはずのものが、休日なので入金されなかった(休み明けに入金された)、ということです。

ちなみに、月末が休日の場合には「いつが入金期限なのか?」は、最終的には個々の契約・約束によって異なります。ですから、一律に「月末までに払わないのはダメ」とか「休み明けに払えばOK」というわけではありません。

では、決算日や月末が休日の場合に、入金が休み明けになるとなにが起きるのか? 入金されない分だけ、決算日・月末の売掛金の金額がふだんよりも大きくなります。

これが、銀行の「誤解」を招く可能性があるので注意しましょう。

そもそも、銀行は売掛金の金額に注目をしています。売掛金の金額が「ふつう」であればよいのですが、「ふつうよりも大きい」となると問題が疑われるからです。

その問題のひとつが、「不良債権」になります。売上先の状況が悪くて(場合によっては倒産していて)、売掛金を払ってもらえないというケースです。この場合、売掛金の金額は大きくなります。

もうひとつの問題が、「粉飾」です。自社の状況が悪く、このままだと赤字。そこで、架空の売上を計上して利益を水増しする。このとき、架空の売掛金も計上することになりますが、架空なだけに入金されるアテがなく、売掛金の金額に残ったままとなります。

不良債権も粉飾も、銀行融資の審査上は「マイナス材料」ですから、銀行は売掛金の金額に注目をしているわけです。では、売掛金の金額が「ふつうよりも大きい」とはどういうことなのか?

ここで言う「ふつう」とは、まず、「過去」との比較が挙げられます。会社にはそれぞれ、入金ルール(たとえば、月末締め・翌月末入金)があって、そのルールが守られている限り、売掛金は同じような金額で推移するはずです。

もちろん、売上が増えれば売掛金の「金額」は増えますが、売上に対する売掛金の「比率」は変わりません(入金ルールが変わらない限り)。この比率は「売掛金回転期間(売掛金 ÷ 売上高 / 12ヶ月)」などと呼ばれ、銀行がとくに注視している指標のひとつです。

決算日や月末が休日にあたり、ふだんならば月末に入金されるはずの売掛金の入金がないと、その売掛金回転期間の値が大きくなります。つまり、売掛金が「ふつうよりも大きい」ということになります。

これを、不良債権や粉飾と銀行に誤解をされないように、会社は説明をするようにしましょう。具体的には、「決算書(試算表)の売掛金には、決算日(月末)が休日によって入金が翌期(翌月)になった金額 〇〇円が含まれています」といった説明のしかたです。

もちろん、銀行も決算日や月末が休日による影響はわかっていますが、具体的な金額まではわかりませんから。このような説明をすることが、銀行対応としては有効です。

買掛金の未払

続いての注意点は、買掛金です。仕入代金の未払金額が、買掛金になります。売掛金の逆バージョンですね。と言われれば、注意すべきことについては想像がつくでしょう。

決算日や月末が休日にあたり、ふだんならば月末に支払うはずの買掛金を、翌月になってから支払った。すると、決算書や試算表には、その分の買掛金が残ることになります。

売掛金と同様、「買掛金回転期間(買掛金 ÷ 売上高 / 12ヶ月)」の値が大きくなることに注意が必要です。これを見た銀行が、「資金繰りが悪くなったのか?」と誤解をする可能性があります。

つまり、会社は資金繰りが悪くなれば、支払いが滞る。だとしたら、買掛金が増えている(仕入代金を支払ルールどおりに払えていない)のは、資金繰りが悪くなったことのあらわれではないのか? ということです。

当然、融資審査上は「マイナス材料」になります。そのような誤解を避けるためにも、やはり、会社は銀行に対して説明をすることが大切です。

具体的には、「決算書(試算表)の買掛金には、決算日(月末)が休日によって支払いが翌期(翌月)になった金額 〇〇円が含まれています」といった説明をするのがよいでしょう。

未払金の未計上

決算日や月末が休日の場合の注意点が、もうひとつあります。それは、未払金の未計上です。未払金とは、諸経費の未払金額をいいます。請求書を受け取っていて、すでに債務としては確定しているのだけれど、まだ支払ってはいないのが未払金です。

たとえば、毎月の社会保険料。ふだんであれば、月末に支払いをしていることでしょう。ところが、月末が休日の場合には、その支払いは休み明けとなります。この社会保険料を、月末には「未払金」として計上しているかどうか?

未払金として計上するということは、同時に、費用として計上することを意味しています(簿記的なハナシです)。逆に、未払金を計上しないということは、同時に、費用として計上していないことを意味しています。

したがって、月末が休日の場合に、もしも、その月に社会保険料を未払金として計上しなければ、その月の費用に社会保険料の金額は含まれません。結果として、その月の利益が「過大」になります。

これが、銀行から見た場合には「利益の水増し」にあたり、つまりは「粉飾」と見られかねません。いうまでもなく、「粉飾」は銀行が忌み嫌うものの代表です。度の過ぎた粉飾となると、銀行からの融資が受けられなくなってしまいます。

というわけで、銀行に「粉飾」と誤解をされないように、諸経費について未払金の計上を検討しましょう。あまり小さな金額までを計上する必要はありませんが(会計でいう「重要性の原則」)、大きな金額の経費は、未払金を計上しましょう。

前年同月や前月の数字と比較してみて、未払金として計上しないと「違和感がある」ようなら計上するイメージです。

まとめ

決算日が休日の決算書、月末が休日の試算表。これらを銀行に提出するときには注意する必要がありますよ、というお話をしてきました。

意外と見過ごされている注意点でもあります。対応を怠ると、銀行の「誤解」を招くこともあるので、積極的に対応するようにしましょう。

決算日が休日の決算書・月末が休日の試算表を銀行に提出するときの注意点
  • 売掛金の未入金
  • 買掛金の未払
  • 未払金の未計上
決算日が休日の決算書・月末が休日の試算表を銀行に提出するときの注意点

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