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銀行融資を受けている会社が含み損を実現するメリットと注意点

銀行融資を受けている会社が含み損を実現するメリットと注意点

自社の貸借対照表には「含み損」がある。これを実現すれば、その損失が明らかになる。銀行融資を考えれば、含み損は隠すべきか否か… というハナシについて。銀行融資を受けている会社が含み損を実現するメリットと注意点をお話ししていきます。

目次

含み損は隠したほうがよいのか?

銀行融資を受けている会社の悩みごとのひとつに「含み損」が挙げられます。

たとえば、不動産。買ったときよりも時価が下がっているものの、貸借対照表では買った金額のままになっている。いまや遊休不動産だし、いっそ売却をしたい。とはいえ、売却をすれば「含み損」が明るみになり(売却損が計上される)、銀行からの評価が下がってしまう… 結果、融資が受けにくくなるのでは困ったことだ。

というわけで、含み損の実現には躊躇するケースはあるでしょう。不動産のほかにも、まだあります。陳腐化していて、売れば二束三文の棚卸資産(在庫)。市場価格が大きく下落した有価証券(株式、投資信託)など。

だったら、含み損のまま隠しておいたほうがよいのか? そんなこともありません。むしろ、含み損は積極的に実現をしたほうが、銀行対応の面でもよいとさえ言えます。

そこで、銀行融資を受けている会社が含み損を実現するメリットについて、確認をしておきましょう。具体的にはこちらです↓

銀行融資を受けている会社が含み損を実現するメリット
  • 節税になる
  • おカネが増える
  • 決算書がクリーンになる

ただし、含み損を実現するにあたっては注意点もありますので、あわせて確認をしていきましょう。

銀行融資を受けている会社が含み損を実現するメリット

節税になる

含み損のままでは、「税金計算上の経費」にすることはできません。税法では、「未実現の損失は経費にあらず」という考え方です。不動産でも、棚卸資産でも、有価証券でも、原則(例外はありますが)、売却して損失が確定しなければ、含み損を経費にすることはできません。

言い換えると、売却をすれば含み損を経費にできるわけです。すると、当然ながら、経費が増えた分だけ利益が減りますから、法人税を減らすことができます。つまり、節税です。

とはいえ、現状が赤字であれば、すでに法人税がゼロではないか?(節税効果はない) と、おもわれるかもしれませんが。税法では赤字を最大10年繰り越すことができて、将来の黒字と相殺できることになっています。なので、現状が赤字であっても、含み損を経費にすることで「将来の法人税」を減らす効果はあるのです。

では、税金が減るとどうなるか? 税金が減った分だけ、会社は手元に残るおカネが多くなります。これが、節税の「本質」です。節税とは、税金を減らすことではなく、おカネを増やすこと。決算間際になって、経費を増やすためにモノを買ったり、飲み食いしたりするのは、ほんとうの節税ではないということでもあります(法人税が減る額よりも、支払った経費の額のほうが大きい)。

それはそれとして、節税によっておカネが増えるとどうなるか? 会社の資金繰りはよくなります。これを銀行は評価することを理解しておきましょう。銀行の商売は、おカネを貸して返してもらうこと(利息をつけて)。だとすれば、おカネを持っている会社が安心・安全です。

ゆえに、会社は銀行に対して、含み損を実現することで「節税になり、資金繰りが改善する」ことをアピールするとよいでしょう。含み損の実現による損失は、ポジティブな損失だということです。

おカネが増える

いましがた、税金が減った分だけ、おカネが増えるという話をしました。実は、おカネが増えるのは、節税分だけではありません。言われてみればあたりまえですが、売却代金分のおカネも増えるのです。

不動産を売却すれば、買ったときよりは損をしたとしても、売却代金分のおカネは増えます。陳腐化した棚卸資産を売却できれば、二束三文だとしても、売却代金分のおカネは増えます。在庫のまま、管理コストを垂れ流しているよりはずっとよいでしょう。有価証券を売却するのも同じことです。

こうして、売却代金によりおカネが増えれば、やはり資金繰りはよくなりますから、銀行からも評価されることにつながります。

したがって、資金繰りが悪くなっている会社ではとくに、含み損のある資産の「積極的な処分」を検討するのがよいでしょう。節税分、売却代金分の「資金調達」と考えることができます。実際に売却するにあたっては銀行に対して、資金繰り表を示すなどして、資金繰り改善の具体的な効果を説明するのがおすすめです。

決算書がクリーンになる

ここまで、含み損実現について2つのメリットをお話ししてきました。とはいえ、含み損を実現すれば、けして小さくはない金額の損失が、損益計算書に計上されてしまうじゃないか。と、心配されるかもしれません。

そのとおりです。損益計算書には損失が計上されるため、その分だけ、最終利益は減ることになります。が、減るのは最終利益であって、「営業利益」や「経常利益」といった、事業本来の利益が影響を受けるものではありません。

つまり、含み損の実現による損失は、損益計算書上、営業利益や経常利益よりも下に位置する「特別損失」として計上しましょう、ということです。そのうえで、銀行に対して、事情や経緯を説明できれば、最終利益だけを見て評価されることはありません。

さらに言えば、含み損について、銀行は「すでに織り込み済み」というケースはあるものです。以前から、銀行が貸借対照表を見て「含み損があるなぁ」と気づいている。というのは、不動産や有価証券の時価はあるていど調べられますから、わかるハナシでしょう。また、棚卸資産についても、同業他社比較や過去からの推移との比較によって、あたりはつけられるものです。

よって、含み損を実現することはむしろ、決算書をより「実態」に近づける行為であり、決算書がクリーンになることは、銀行にとっては望ましいことでもあります。とはいえ、いきなり多額の損失が計上されると、銀行もびっくりすることはありますから、銀行には事前に話をしておくのがおすすめです。

銀行融資を受けている会社が含み損を実現する注意点

ここまで、含み損を実現するメリットについてお話をしてきました。大きなメリットがありますから、基本的には、含み損を積極的に実現していくのがよいでしょう。ただし、注意点がありますよ、というのがここからのお話です。

その注意点とは? 含み損の実現による「債務超過」です。

含み損を実現すると、特別損失が計上されて、最終利益が減ることは話をしました。特別損失によって最終利益が減ること自体には、大きな問題はないという話です。が、問題は、最終利益が減ることで、貸借対照表の「利益剰余金」が減るところにあります。

利益剰余金とは、創業から現在までの「最終利益の累計額」です。ゆえに、特別損失によって最終利益がマイナス(赤字)になると、利益剰余金が減ることになります。利益剰余金が減るとどうなるか?

その減りがあまりに大きいと、資本金を食いつぶして(資本金 < 利益剰余金のマイナス)、貸借対照表の「純資産の部」がマイナスになります。この状態が「債務超過」です。このとき、貸借対照表では、「資産 < 負債」という症状が起きています。

これは、いまある資産をすべて売却して現金化しても、いまある負債を返済することはできない状態です。だとしたら、銀行は「これ以上融資をするなどとんでもない」と考えるでしょう。よって、債務超過の会社は銀行から嫌われ、融資が極端に受けにくくなります。

ですから、含み損を実現する前にいちど、実現することによって「債務超過」にならないかを、確認しておくようにしましょう。このあたりはよくわからなければ、顧問税理士に確認することをおすすめします。

せっかく、含み損を実現しても、債務超過になったのでは、メリットを存分に活かすことはできません。融資が受けにくくなってしまうのでは、逆効果です。じゅうぶんに注意しましょう。

まとめ

自社の貸借対照表には「含み損」がある。これを実現すれば、その損失が明らかになってしまう。だったら、含み損のまま隠しておいたほうがよいのかというと、そんなこともありません。

むしろ、含み損は積極的に実現をしたほうが、銀行対応の面でもよいとさえ言えます。含み損を実現するメリットと、あわせて注意点を理解しておきましょう。

銀行融資を受けている会社が含み損を実現するメリット
  • 節税になる
  • おカネが増える
  • 決算書がクリーンになる
銀行融資を受けている会社が含み損を実現するメリットと注意点

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