睡眠はだいじ、だと言うけれど。実際に、睡眠をだいじにしているかどうかは、また別のハナシです。そこで、ひとり仕事をしているわたしが実践している睡眠術についてお話をしていきます。
たくさん寝ればいい、というハナシではない。
睡眠はだいじ、ということに対して異論はないでしょう。が、「実際に、睡眠をだいじにしているかどうか」は、また別のハナシだといえます。
たくさん寝ればいいということでもなく、高級な寝具を使わなければいけないわけでもありません。同じ時間を寝るのでも、睡眠の「質」は変わります。必ずしも、高価な枕やベッドがなくても、睡眠の「質」を上げることは可能です。
ちなみに、「睡眠の質」と「メンタルの良し悪し」とのあいだには、「相関がある」ことがわかっています。つまり、メンタルが悪い人は、睡眠の質も悪いということです。
そのメンタルについて、日本人には「弱点」があります。遺伝子(セロトニン・トランスポーター)の問題で、メンタルに不調を抱える可能性が高いのです。
具体的に言うと、不安を感じやすい遺伝子を持っている日本人の割合は7〜8割くらい。これに対して、アメリカ人なら5割弱。アフリカ人にいたっては3割弱。日本人がいかに不安に弱いかがわかります。結果として、「メンタル不調 → 睡眠の悪化」が起きやすいのが日本人です。
では、睡眠の質が悪くなり、「睡眠不足」の状態におちいるとどうなるか? 睡眠不足の医師は、そうでない医師に比べて、業務をおえるのに 14%長い時間がかかり、ミスをする確率が 20%以上も高かった… という研究結果があります。おそろしいことです。
というわけで、本記事では、わたしが実践している「睡眠術」についてお話をしていきます。なかでも、「ひとり仕事(独立開業している)」の場合、自由度の高さから、より取り組みやすく、より効果を発揮するであろう内容です。
睡眠の質を上げるにあたって、「朝・昼・夜」のそれぞれの場面でできることをまとめていきます。それではさっそく、確認をしていきましょう。
朝の睡眠術
起床は、睡眠のおわりであると同時に、実は、睡眠のはじまりでもあります。って、どういうこと? と、おもわれるかもしれませんが。要は、「朝の時間帯の過ごしかたで、夜の睡眠も変わりうる」ということです。
起きたらまず、光を浴びよ
太陽の光には、「セロトニン」の生成を促すチカラがあります。セロトニンとは、「体内時計」を調節する神経伝達物質。朝であれば「起きろー!」と心身の目覚めに貢献し、夜になると熟睡を促すホルモンである「メラトニン」の生成を促します。
この「体内時計」が狂ってしまうと、睡眠に影響が出るのは明らかです。朝は太陽の光を浴びて、体内時計をリセットする。セロトニンの生成を促す、これが良質な睡眠につながります。なので、朝起きたらまずカーテンをあけて(レースもあける)、できるだけ光をとりいれるのが、わたしの習慣です。
二度寝はするな
目覚めが悪いと、二度寝をしたくもなるでしょう。ですが、二度寝はおすすめできません。そのまま、数十分以上の眠りに落ちるようだと、ますます起きにくくなるからです。結果として、夜の睡眠に悪影響を及ぼす可能性があります。
朝は眠くても、いちどで起きる。どうしても眠ければ、「昼寝」でカバーしましょう。昼寝については、のちほどあらためてお話しします。
起床時間は固定せよ
休みの日は、平日よりも長く寝る… という人もいるようですが。これも、よくありません。休みの日と平日とで、睡眠時間の差が大きい人ほど、「気力の低下・うつ病になる割合・肥満や体脂肪の増加」が起きやすいことが、研究でわかっています。
これは「体内時計」が狂ってしまうためであり、そのような状態を「社会的時差ボケ(ソーシャル・ジェットラグ)」と呼びます。ですから、休みの日であっても、長く寝るのは1時間くらいまでにしておきましょう。
できれば、起床時間は固定するのがおすすめです。わたしは、平日も休日も関係なく、朝5時前後に起きています(季節によって、多少変えている)。
朝イチのコーヒーは避ける
朝方、体のなかには「コルチゾール」というホルモンが分泌されます。コルチゾールによって、やる気やチカラがもたらされる。コルチゾールは、「目覚めのホルモン」なのです。
ところが、ここへコーヒーなどの「カフェイン」が加わると、コルチゾールの分泌が抑制されてしまうことがわかっています。すると、目が覚めない、スッキリしない… という状態を招いてしまう。
じゃあ、もう一杯コーヒーを飲もうか。みたいなことになれば、カフェインに対する耐性が高まり、カフェインによる覚醒効果が薄れます。
さらに、コルチゾールの分泌が悪くなると、熟睡ホルモンである「メラトニン」の分泌が悪くなるのも問題です。コルチゾールとメラトニンの分泌は「反比例」の関係にあり、コルチゾールが正しいタイミング(朝)で分泌されることで、メラトニンも正しいタイミング(夜)で分泌されることがわかっています。
というわけで、起き抜けのコーヒーは避けるべきです。朝1杯めのコーヒーは、起きてから1〜2時間くらいの時間をあけましょう。
早起きをするかどうか?
早起きは健康によい、と言われますが。早起きできるかどうかは、「体質(クロノタイプ)」によるところが大きい、ということは覚えておいたほうがよいでしょう。いわゆる「朝型か、夜型か」みたいなハナシです。
夜型の人が、がんばって早起きをしても、かえって調子を崩してしまうことになりかねません。クロノタイプ診断を利用してみたり、いろいろ起きる時間を試すなどして、じぶんにあった起床時間を見つけるのがよいでしょう。ムリな早起きはしないことです。
朝、なにをして過ごすか?
早起きに関連して、「朝、なにをして過ごすか」についてもふれておきます。これもまた、体質によるところです。たとえば、朝型の人であれば、朝は論理的・分析的な作業に向いています。いっぽうで、夜型の人は、朝はクリエイティブな作業に向いている。といった、研究結果があります。
なので、「朝起きてなにをするか、早起きしてなにをするか」ということも、じぶんの体質を把握しながら考えてみるとよいでしょう。
昼の睡眠術
昼を迎えると、午前中の疲労が影響してきます。そこで、昼寝を利用して回復をはかりつつ、夜の睡眠の質を上げるために運動をしたり、がおすすめです。
カフェインを上手に使え
朝型、コルチゾールというホルモンが分泌されることは話をしました。そのコルチゾールは、「ストレスホルモン」などとも呼ばれ、悪者扱いされることもありますが。そればかりでもなく、やる気やチカラを高めてくるのもコルチゾールの役割です。
この点で、コルチゾールは午後になると分泌が少なくなることを覚えておきましょう。ここで、カフェインです。カフェインには、コルチゾールの分泌を促す効果があります(コルチゾールの分泌が多い朝には、抑制する効果がありますが)。
昼寝は最高の回復薬
午後は、午前中の疲労もあって、眠気に襲われる… ということはあるでしょう。そんなときには、昼寝がおすすめです。NASAによれば、「20分ていどの昼寝で、認知能力が34%上昇し、注意力も54%上昇した」との研究結果があります。
だとすれば、いちど昼寝をしたほうが、午後を効率的・生産的に過ごすことができるはずです。20分を目安に、昼寝の時間を習慣にするのもよいでしょう。ひとり仕事であれば、昼寝も自由にしやすいはずです。
なお、カラダが疲れている(肉体的疲労)ときや、前の晩の睡眠時間が不足しているときなどは、長めの昼寝がよいとされています。
この場合には、45分〜60分くらいが目安です。というように、昼寝の時間によって「効果」が変わるのは、睡眠には「ステージ」があるからです。浅い睡眠とか深い睡眠とか。これについては後述します。
昼寝+コーヒーが最強
昼寝をする直前に、コーヒーを1杯飲んでおくと、さらに昼寝の効果を高めることができます。そもそも、疲れたり眠くなったりするのは、体内の「アデノシン」が増えて、「アデノシン受容体」とくっつくからです。
そのアデノシンは、昼寝によって減らすことができます。加えて、コーヒーに含まれるカフェインは、アデノシンと似た構造であり、アデノシン受容体とくっついてしまうのがポイントです。
すると、アデノシンが発生してもアデノシン受容体にはくっつくことができず、疲れにくく眠くなりにくくなる、というのが「昼寝+コーヒー(コーヒーナップと呼ばれる)」の効果になります。
なお、カフェインがカラダに吸収されるまでには 20分くらいかかるため、前述したとおり、20分くらいの昼寝がちょうどよい、ということです。
15時にはカフェインを断つ
ここまで、カフェインの効果にもふれてきましたが。カフェインによる覚醒効果が、夜の睡眠には悪影響であることはあきらかです。よって、夜にコーヒーは飲まないほうがいい、というのはよく知られていることでしょう。
では、「夜」とはいつのことなのか? 具体的には、15時くらいにはやめておくのをおすすめします。カフェインが体内から減少するまでには時間がかかります。その時間が、だいたい6〜8時間くらいです。よって、就寝時間から逆算すると 15時くらいかなぁ、ということになります。
ですから、15時以降はコーヒーなどのカフェイン飲料を飲まない。わたしは、15時以降は、デカフェ(カフェインレス)のコーヒーに切り替えています。
運動で睡眠を改善せよ
運動が睡眠の質を改善することが、研究でわかっています。たとえば、寝付きがよくなる、睡眠中の覚醒が減る、睡眠時間が増える、といった改善です。ただし、このような睡眠の効果を得るためには、運動の「習慣」が前提だともいわれています。
したがって、日常的に運動をする時間をスケジュールすることも大切です。このあたりも、ひとり仕事であれば、比較的取り組みやすいところでしょう。わたしは、基本的に毎日、HIIT(高強度インターバルトレーニング)と筋トレ、週末のランニングを習慣にしています。
運動は夕方までに
睡眠の質を改善するためにも、運動はしたほうがよいのですが。運動をする「時間帯」に注意しましょう。夜に運動をすると、かえって睡眠の質が下がるという研究結果があります。
これは、夜の運動によって「深部体温(脳や臓器など体の内部の温度)」が上がることが原因です。良い睡眠は、深部体温が下がることで得られることを覚えておきましょう。このあたりは、後述します。
また、激しい運動をすれば、交感神経が優位(リラックスできず、緊張状態)になることも、夜に運動を控えるべき理由のひとつです。運動をするのであれば夕方まで、と考えておきましょう。
夜の睡眠術
夜は、睡眠の準備を整える時間です。にもかかわらず、「間違えた準備」をしていないか確認をしておきましょう。
スマホを見てはいけない
最近ではよく言われていることですが、ブルーライトが睡眠の質を下げます。具体的には、ブルーライトのような「強い光」によって、熟睡ホルモンであるメラトニンの分泌を抑制してしまうからです。
よって、夕方以降(本来、暗くなる時間帯)は、スマホやパソコン、タブレットなどの利用はできるだけ控えるようにしましょう。
また、スマホの利用によって、興奮物質である「ドーパミン」の分泌が促されるのも問題です。SNSにしても、ゲームアプリにしても、ニュースアプリにしても。ドーパミンの分泌によって、睡眠時間が短くなることがわかっています。
じゃあ、なにをすればいいのか? おすすめは、読書です。わたしも、夜は読書をする時間に決めています。睡眠の質を改善するのと同時に、読書の習慣もできて一石二鳥です。
部屋は暗めに調光せよ
光の話に関連して、部屋のあかりも「明るすぎ」ないようにしましょう。そもそも、大昔はこれほど明るい光はなかったのですから、現代の明るさは「異常」です。
最近では「調光」できる照明も多くなっています。そういったものを利用して、夕方以降は、部屋は暗めにするのがおすすめです。わたしも、そのようにして過ごしています。
なお、夜に「コンビニへ買い物」というのはよろしくありません。コンビニ内は「めちゃくちゃ明るい」ので、メラトニンが一気に抑制される場所だと心得ておきましょう。
食事は就寝 2〜3時間前までに
夜寝る前に食事をすると、睡眠中もなお、胃腸は消化活動を続けなければならず、眠りが浅くなってしまいます。胃腸の活動中は、前述した「深部体温」が下がらないからです。
これをふまえて、夜寝る前に、がっつり食事をするようなことはやめておきましょう。就寝の2〜3時間前までには食事をおえることです。
ちなみに、夜遅くの食事で、太りやすくなることもわかっています。とくに22時以降は、体内のBMAL1(ビーマルワン)というホルモンが増えるからです。
BMAL1には、体内リズムを調整する、体内に脂肪を蓄積する働きがあります。そのBMAL1が増える時間帯(22時〜明け方)に食事をすると、脂肪がつきやすくなるというわけです。こわいですね。
風呂は就寝 90分〜120分前までに
夜寝る直前に長風呂をする、という習慣がある人は気をつけましょう。なかなか寝付けないのは、そのお風呂が原因かもしれません。
そもそも、人の体温には「皮膚体温」と「深部体温」とがあります。このうち「深部体温」が下がることで、眠気がおとずれ、睡眠後はカラダやアタマがじゅうぶんな回復を得ることができるのです。
では、深部体温を下げるにはどうしたらいいか? というと。「就寝 90分〜120分前に、38〜40℃くらいのぬるめの風呂)に 15分〜30分くらいつかる」のがおすすめです。
いったんお風呂で、深部体温を上げることによって、その1時間半後(寝る時間)に、深部体温をじゅうぶんに下げられます。結果、寝付きがよくなるわけです。
ちなみに、熱々のお風呂だと、深部体温が下がるのに倍以上の時間がかかります。また、交感神経が優位になって、脳が覚醒する点にも注意が必要です。
というわけで、寝る直前に長風呂をすると、すぐには深部体温を下げられないために、寝付きが悪くなります。寝る直前であれば、軽くシャワーくらいがよいということです。
22時〜2時のあいだにたくさん眠る
睡眠の「ゴールデンタイム」という話があります。この時間に眠っていると、睡眠の効果が最大に高まる! といわれる時間帯です。それが、22時〜2時のあいだになります。
ですから、22時〜2時のあいだにたくさん眠れるような睡眠習慣をつくりましょう。要は、22時には寝る、ということです。わたしも、21時過ぎには寝る準備をはじめて、22時には消灯しています。
なお、ゴールデンタイムに眠ることで、メラトニンや成長ホルモンの分泌が最大になるとのこと。メラトニンによって睡眠の質は高まり、成長ホルモンによって細胞の再生も高まり、若さを保つこともできるようになります。
90分サイクルを考慮する
睡眠には、一定のサイクルがあります。大きく分けると、「浅い睡眠、深い睡眠、レム睡眠」というステージがあって、これらのステージを「1サイクル 90分」で繰り返すのがポイントです。
90分というのは目安なので、個人差はあります。いずれにしても、サイクルはあるので、じぶんのサイクルにあわせて睡眠時間を考慮するようにしましょう。そうしないと、深い睡眠のところで起床を迎えることになり、「眠くてしかたない…」みたいなことが起きてしまいます。
この点で、寝る前にアルコールを摂りすぎると、サイクルがぶっ壊れるので注意しなければいけません。具体的には、就寝直後に通常よりもさらに深い睡眠に入り、その後は、通常よりも浅い睡眠を繰り返すことになります。当然、睡眠の質は「最悪」です。
睡眠の質を高めるには、1サイクルを構成する各ステージを、バランスよくとることが大切になります。各ステージには、それぞれ異なる睡眠の効果があるからです。浅い睡眠ばかりでもよくないし、深い睡眠ばかりでもよくありません。
ゆえに、サイクルを考慮して睡眠時間(就寝時刻・起床時刻)を決める。睡眠時間が短くなったり、時間が少ないステージがあれば、昼寝でおぎなうのもよいでしょう。
まとめ
睡眠はだいじ、だと言うけれど。実際に、睡眠をだいじにしているかどうかは、また別のハナシです。そこで、ひとり仕事をしているわたしが実践している睡眠術についてお話をしてきました。
すべてを取り入れることはできないとしても、できることをひとつでも、取り入れてみてはいかがでしょうか。睡眠の質を改善するきっかけにできるはずです。