自社に関係会社があると、銀行から融資を受けにくくなることがあります。その理由と対応策を押さえておきましょう。関係会社があること自体が問題なのではありません。
関係会社自体が問題なのではない
会社が銀行から融資を受けにくくなるケース、というのもいろいろありますが。そのなかのひとつに挙げられるのが「関係会社があるケース」です。
ここで言う「関係会社」とは、いわゆる「子会社(自社や社長が議決権の過半数を持っている、などの会社)」や「関連会社(議決権の20%以上を持っている、などの会社)」だけではなく、社長の親兄弟といった親族が経営しているような会社も含みます。
自社について、そういった関係会社があると、自社が銀行から融資を受けにくくなるケースがある、ということです。とはいえ、「関係会社があること自体」が問題なのではありません。関係会社がある場合に、銀行に対して「じゅうぶんな情報提供・説明ができていない」ところに問題があります。
そのあたりに問題があると、銀行は「疑わしきは融資せず」の姿勢になってしまうものです。とはいえ、銀行はいったいなにを疑っているのか?
というわけで本記事では、関係会社があると融資が受けにくくなる理由と、会社がとるべき対応策についてお話をしていきます。それではさっそく、確認をしていきましょう。
関係会社があると銀行融資が受けにくくなる理由
まずは、関係会社があると銀行融資が受けにくくなる理由から。さきほど、会社が銀行に対して「じゅうぶんな情報提供・説明ができていない」と、銀行に疑われるという話をしました。
では、具体的になにを疑われるというのか? ひとつは、「又貸し」です。自社が銀行から借りたおカネを、関係会社に又貸しをしていないかどうか。これを、銀行は疑っています。
銀行が自社に融資をするのは、自社が使う分のおカネだけです。関係会社に又貸しするのであれば、銀行は自社におカネを貸すことはありません。関係会社がおカネを必要とするのであれば、関係会社自身が、銀行から融資を受ければよいからです。
が、関係会社の業績が悪いなどで、みずから融資を受けられない… となると。自社が又貸しをする、ということはあるでしょう。その結果、結局、関係会社の業績が回復しなければ、自社は関係会社に貸したおカネを回収できず。銀行は、自社からおカネを回収できず。
銀行はそれがイヤなので、又貸しの疑いがあると融資をしない、ということになります。
それから、もうひとつ。関係会社があると銀行融資が受けにくくなる理由、それは、「飛ばし」です。ここで言う「飛ばし」とは、自社の赤字を関係会社に付け替えることをいいます。
自社が銀行から融資を受けたい。でも、自社の業績が悪いと融資が受けられなくなる。だったら、関係会社に商品をバンバン売って、自社を黒字にすればいい。カンタンに言うと、そんな感じです。
ところが、自社の業績が「本質的」に改善するわけではありませんから。結局、銀行から借りたおカネを返済できなくなってしまうことはあるでしょう。当然、銀行としては困ります。ゆえに、飛ばしの疑いがあれば融資をしない、となるのです。
関係会社がある自社が融資を受けるときの対応策
おもに、3つの対応策があります。順番に確認をしていきましょう。
関係会社の業績をあきらかにする
さきほど、「銀行は関係会社への又貸しを疑っている」という話をしました。その前提には、関係会社の業績が悪いのではないか? との疑いがあります。
そこでの対応策は、銀行に対して、関係会社の業績をあきらかにすることです。つまり、関係会社の業績に問題はなく、自社からの又貸しを必要とするような状況にない、と示すこと。
具体的にはまず、関係会社の決算書を銀行に提示します。ですが、これだけでは不十分です。いくら利益が出ていたとしても、おカネが足りているかどうかは別になります。
そこで、関係会社の「資金繰り表」もあわせて、銀行に提示するようにしましょう。書式としては、「実績3ヶ月+予測1年分」の資金繰り表がおすすめです。1年ていど先まで見えていれば、銀行としても安心であり、実績があると予測の妥当性をはかりやすくもなります。
その資金繰り表のなかで、自社からの又貸しもなく、おカネが回っていることがわかれば、銀行の疑いも晴れるでしょう。
なお、又貸しとは言っても、必ずしも銀行から借りたおカネを貸したとは限らない。もともと自社が持っていたおカネを貸しただけだ。と、おもわれるかもしれませんが。おカネに色はないのですから、銀行が「又貸し」だと見れば、それは又貸しになってしまいます。
なので、自社から関係会社におカネを貸すのは、避けたほうがよいでしょう。
自社の業績をあきらかにする
さきほど、「銀行は飛ばしを疑っている」という話をしました。その前提には、自社の業績が悪いのではないか? との疑いがあります。
そこでの対応策は、銀行に対して、自社の業績をあきらかにすることです。とはいえ、銀行には「決算書を見せている」とおもわれるかもしれません。が、それだけでは不十分だと言えるのが、自社から関係会社に売上があるようなケースです。
極端を言えば、自社から関係会社にバンバン売り上げれば、自社の業績はよく見えるようになります。だとすれば、「自社から関係会社への売上はいくらあるの?」と、銀行が考えるのは当然です。
したがって、決算書を提示するのとあわせて、「自社と関係会社との取引内容・取引金額」を説明するようにしましょう。
なお、「自社と関係会社とのあいだに取引があること自体」が問題になるわけではありません。自社から関係会社に売上があったとしても、合理的な理由(関係会社では直接仕入れできない商品とか)があって、適正価格(他社に対する販売単価と同じ)であれば、それはそれです。
これが、合理的な理由もなく、販売単価が他社に対するよりも高いなどとなると、「飛ばし」ということになってしまいます。
自社と関係会社をあわせた業績をあきらかにする
さいごに、もうひとつ。自社と関係会社をあわせた業績をあきらかにする、という対応策があります。これは、銀行が「自社と関係会社をあわせて1つの会社」と見ているからです。
自社に関係会社がある場合、適正か不適正かに関わらず、いろいろなカタチで両者間の取引が行われていたり、行われる可能性があります。だとすれば、銀行が「自社と関係会社とは一体」と見るのも当然でしょう。
ですから、銀行が「自社と関係会社とを一体として評価」しやすいように、こちらから情報提供をすることが対応策になります。具体的には、「自社と関係会社の決算書を合算した決算書」を作成・提示することです。
くわしいことは、顧問税理士などに確認をするとして。ここでは、作成方法・手順の「概要」にふれておきます。
(1)まずは合算
まずは単純に、自社の貸借対照表と関係会社の貸借対照表を合算、自社の損益計算書と関係会社の損益計算書とを合算しましょう。各勘定科目の数字を足し算するだけです。
(2)資本取引を相殺
自社と関係会社との資本取引を相殺します。たとえば、自社が関係会社に出資をしているケースです。この場合には、自社の貸借対照表に掲載されている「投資有価証券」と、関係会社の貸借対照表に掲載されている「資本金」とを相殺することになります。
仕訳でいうと、次のとおりです ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 |
---|---|---|---|
資本金 | ××× | 投資有価証券 | ××× |
(3)債権債務を相殺
自社と関係会社とのあいだの取引について、債権債務を相殺します。たとえば、自社から関係会社への売上があるケースです。この場合には、自社の貸借対照表に掲載されている「売掛金(債権)」と、関係会社の貸借対照表に掲載されている「買掛金(債務)」とを相殺することになります。
仕訳でいうと、次のとおりです ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 |
---|---|---|---|
買掛金 | ××× | 売掛金 | ××× |
(4)損益を相殺
自社と関係会社とのあいだの取引について、損益を相殺します。たとえば、自社から関係会社への売上があるケースです。この場合には、自社の損益計算書に掲載されている「売上高」と、関係会社の損益計算書に掲載されている「売上原価」とを相殺することになります。
仕訳でいうと、次のとおりです ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 |
---|---|---|---|
売上高 | ××× | 売上原価 | ××× |
(5)未実現利益を消去
ここは、ちょっとわかりづらいかもですが。たとえば、自社が 10で仕入れた商品を、関係会社に15で売り上げたして。その商品が、関係会社にはまだ在庫で残っていたとします(外部に売り上げていない)。
このとき、自社と関係会社の損益計算書を合算するだけだと、自社の損益計算書に計上された利益5(売上15 ー 仕入10)が残ってしまうのが問題です。この利益は、自社と関係会社との取引で生じた「見せかけの利益」に過ぎず、これを「未実現利益」呼びます。
そこで、未実現利益を消去するために、次のような仕訳が必要です↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 |
---|---|---|---|
売上原価 | ××× | 棚卸資産 | ××× |
まとめ
自社に関係会社があると、銀行から融資を受けにくくなることがあります。というわけで、その理由と対応策についてお話をしてきました。
「関係会社があること自体」が問題なのではありません。関係会社がある場合に、銀行に対して「じゅうぶんな情報提供・説明ができていない」ところに問題がある。そこを理解しておきましょう。