会社が銀行から融資を断られることがあります。このとき、銀行員が融資を断るときの心理について、会社がとるべき対応もふまえて確認をしておきましょう。
決めるのは組織、伝えるのは個人。
会社が銀行に融資の申し込みをした結果、断られる(否決される)ことがあります。
融資の否決を決めるのは、銀行という「組織」ですが、否決を伝えるのは銀行員(おもに自社の担当者)という「個人」です。その銀行員が、融資を断るときにはいくつかの「心理」があると聞きます。具体的には次のとおりです↓
- きちんと決まってから伝えたい
- 他行の融資は勧めにくい
- 否決の理由を言いにくい
これらの心理について、会社側がとるべき対応もふまえてお話ししていきます。
銀行員が融資を断るときの心理と会社がとるべき対応
きちんと決まってから伝えたい
会社が銀行に融資の申し込みをしたのち、銀行では融資審査がおこなわれます。審査には、相応の時間がかかるため、余裕をもって申し込みをしたいところです。
とはいえ、どれくらいの時間がかかるのかはケースバイケース。数日のうちに決まることもあれば、数ヶ月かかることもあります。いずれにせよ、銀行員が考えているのは「きちんと決まってから伝えたい」ということです。
申し込みの段階で融資できる可能性が高いとしても、審査の結果、融資できなくなる可能性もあります。にもかかわらず、申し込みの段階で「融資できます・できそうです」などと伝えていれば、のちのちトラブルになりかねません。
だから、きちんと決まってから伝えたいというのが、銀行員の心理です。
いっぽうで、会社のほうは早く結果を知りたいと考えています。融資してもらえるかどうかを知りたいのはもちろん、融資してもらえらないときにこそ早く知りたい。ダメならダメで、早くほかをあたらなければならないからです。
結果、銀行員と会社とのあいだに「スピード感のズレ」が生じます。
このズレを解消するための対応は、おもに2つ。まずは、銀行に対して「回答期限」を伝えることです。これにより、回答が遅くなるのを防ぐことができます。2週間〜1ヶ月ていど先の期限であれば、銀行も無理なく回答できるケースが多いはずです。
それから、もうひとつ。銀行員(自社の担当者)に対して、「融資できる可能性が低いとわかったら、未確定でもよいので早めに知らせてほしい」と伝えておくようにしましょう。
前述したとおり、「きちんと決まってから伝えたい」のが銀行員の心理です。放っておくと、銀行からの回答がギリギリ… というケースが多くなってしまいます。
他行の融資は勧めにくい
審査の結果、融資をすることはできない、となった場合。銀行員が考えるのは、「他行からの融資を勧める」ことです。融資のお断りをしつつ、「ほかの取引銀行にも、融資の申し込みをしてみてはどうか」との話をします。
とはいえ、本来、「他行の融資は勧めにくい」のが銀行員の心理です。自行で融資ができないという後ろめたさがあり、自行ではなく他行を勧めるという心苦しさもあり…
にもかかわらず、銀行員が他行からの融資を勧めてくるのだとしたら。それは、融資ができそうもないからだといえます。
融資ができないとわかってからでは、会社の資金繰りがもたいないかもしれない。それでは困るので、いまのうちに他行からの融資も検討しておいてほしい。そのように銀行員は考えて、他行の融資を勧めているものと理解しておきましょう。
なお、こういった状況では、自社の業績が悪いケースが多いものです。すると、他の民間金融機関でも融資が受けられないということも多くなります。そこで、選択肢のひとつになるのが、公的金融機関である「日本政策金融公庫」です。
日本政策金融公庫は、民間金融機関に比べると、業績が悪い会社にも柔軟に対応してくれます。なかには、日本政策金融公庫から融資を受けたことがないという会社もありますので、選択肢のひとつとして覚えておくようにしましょう。
ただし、いくら柔軟とはいっても、業績が悪くなってから急に融資を受けたいというのでは、日本政策金融公庫も対応しづらいものです。審査に時間もかかってしまいます。
なので、業績が悪くならないうちに、日本政策金融公庫から融資を受けておき、関係づくりをしておくのがおすすめです。日本政策金融公庫の担当者に顔つなぎをしてくれる銀行もあります。はじめて融資を受けるのであれば、銀行担当者に相談をしてみるのもよいでしょう。
否決の理由を言いにくい
融資を断る際、会社に対して「否決の理由を言いにくい」というのも銀行員の心理です。
否決の理由もいろいろありますが、「ほんとうの理由(売上が減っている、利益が少なすぎる、など)」を伝えることで怒り出す社長もいます。結果、融資先とトラブルを起こすと出世に響くこともあるので、銀行員は社長を怒らせないようにと考えるそうです。
では、銀行員はどうするかというと。「総合的に判断して…(ゴニョゴニョ)」と言葉を濁します。会社がこれをそのまま受け入れるのでは「不利益」だと考えておきましょう。
いうまでもなく、「ほんとうの理由」がわからなければ改善ができないからです。改善をして、次の融資を受けやすくすることができないからです。
そこで、銀行員の「否決の理由を言いにくい」という心理を理解して、言いやすい環境をつくることが大切になります。具体的には、「今後の改善にあたり参考にしたいので、否決の理由を教えてほしい」と建設的な姿勢を伝えるのがよいでしょう。要は、「なにをいわれても怒りませんよ」という姿勢を伝えることです。
ただ、「ふだんの姿勢」も影響します。つまり、ふだんから怒ってばかりいる社長から、急に「怒らないから」といわれても信じることはできませんよね。なので、銀行とはふだんから「温厚」な態度で接することをおすすめします。
なお、否決の理由について、「財務的な理由(売上が減っている、利益が少ない、債務超過、など)」であれば言うことができても、「過去のトラブル」が理由である場合には、銀行員もクチにはしないものです。
過去のトラブルとは、銀行担当者と社長とのあいだで口論になったとか、資金使途違反をしたことがあるとか、社長の個人信用情報に問題があるとか。銀行員から否決の理由を聞けないときには、そういった可能性についても考えてみましょう。
まとめ
会社が銀行から融資を断られることがあります。このとき、銀行員が融資を断るときの心理について、会社がとるべき対応もふまえて理解しておきましょう。理解が不足すると、銀行員とのトラブルが起きたり、以降の融資が受けにくくなったり… につながります。
- きちんと決まってから伝えたい
- 他行の融資は勧めにくい
- 否決の理由を言いにくい