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創業融資の自己資金は「経緯」がだいじ

創業融資の自己資金は「経緯」がだいじ

創業融資の受けやすさに、大きな影響がある「自己資金」。その自己資金は、おカネをためる「経緯」がだいじ、という話です。疑問と誤解が多いケースについても確認していきます。

目次

自己資金は「経緯」がだいじ。

会社・個人事業者の創業融資について、受けやすさに大きな影響を与えるものの1つが「自己資金」です。自己資金とは、文字どおり「じぶんのおカネ」をいいます。

創業融資の代表格である、日本政策金融公庫の新創業融資制度であれば、「自己資金の2〜4倍」が借りられる金額の目安です。つまり、自己資金が多いほど、借りられる金額が増える。借りやすくもなる、ということです。

その自己資金について、さきほど、「自己資金 = じぶんのおカネ」だといいました。実は、疑問や誤解が多いところでもあります。どこまでが「じぶんのおカネ」といえるのか? それがよくわからずに、間違えているケースがあるのです。

すると、「じぶんでは自己資金だとおもっていたのに、銀行は自己資金と認めらくれなかった…」ということが起こり、結果として、希望していた融資が受けられなくなってしまう。最悪、創業できなくなってしまう。困りますよね。

そこで、創業融資における自己資金を理解する際のポイントをお話していきます。いちばんのポイントは、「経緯」です。言い換えると、「どのようにしてそのおカネをためてきたのか?」。

この点で、銀行からもっとも評価される自己資金は「お給料のなかから、コツコツためてきたおカネ」です。創業する前、会社勤めをしていれば、毎月、銀行口座にお給料が振り込まれます。そこから、生活費の支払いをしたうえで、少しずつでも口座残高が増えていく。

これを見た銀行は、「おカネをためることができる計画的な人、創業に向けておカネをためることができる熱意のある人」だと評価します。

というように、おカネがたまる「経緯」を、銀行が見ていることを覚えておきましょう。「自己資金 = じぶんのおカネ」といっても、「ただただおカネがあればいい」というわけではないのです。

そのあたりをふまえつつ、自己資金に対する疑問と誤解が多いケースについて、このあとお話をしていきます。

自己資金に対する疑問と誤解が多いケース

タンス預金

さきほど、銀行口座にお給料が振り込まれている会社員の話をしました。では、お給料を現金で受け取り、銀行にあずけることなく、いわゆる「タンス預金」にしているケースはどうでしょう?

あるいは、お給料が口座に振り込まれてはいるものの、それを引き出して、やはり「タンス預金」にしているケースはどうでしょう?

結論、タンス預金を自己資金と見てもらうことはできません。なぜなら、そのおカネは「直前に、だれかから借りてきたおカネかもしれないから」です。だとしたら、あすにも返さなければいけないかもしれず、自己資金とはいえません。

いっぽうで、銀行口座のなかでコツコツためたおカネであれば、ためてきた「経緯」があきらかです。だれかから借りてきたおカネではないことがわかります。

なので、もし、いまタンス預金がある… というのであれば、すぐに銀行にあずけましょう。あとは時間がたてばたつほど、だれにも返さなくてよいおカネであることの証明になります。

この点で、銀行口座にあるおカネでも、融資を申し込む直前に入金されたおカネは、銀行から「経緯」を確認されることを覚えておきましょう。友人・知人などから一時的におカネを借りて、自己資金と見せかける、いわゆる「見せガネ」を銀行は疑っています。

定期預金

銀行口座にあずけているおカネでも、定期預金となると、自己資金と見てもらいにくくなることがあります。なぜなら、すぐに使うことができないおカネ(解約が必要)であり、家計で必要になるおカネかもしれないからです。

創業融資における自己資金とは、「すぐに事業に使えるおカネ」ともいえます。この点でも、ただただおカネがあればいいわけではないのです。

したがって、定期預金としているおカネを自己資金としたいのであれば、融資申し込みの間には解約をして普通預金としておくのも1つの方法になります。そのうえで、銀行に対しては、事業に使えるおカネであることを説明するとよいでしょう。

親からの贈与

贈与、つまり、じぶんがもらったおカネは「自己資金」にあたります。

ただし、ほんとうにもらったのかを証明するための書類が必要です。具体的には、贈与契約書や贈与税申告書、贈与者の預金通帳などが挙げられます。実は、贈与ではなく、借りたおカネかもしれないことを銀行は疑っているのです。

なお、贈与による自己資金は、前述した「コツコツためたおカネ」よりも評価としては下がります。じぶんでためたおカネではないため、銀行は、創業者の計画性や熱意をはかることができないからです。

冒頭で、自己資金の2〜4倍くらいが借りられる金額の目安だといいました。イメージでいうと、贈与による自己資金であれば2倍、コツコツためたおカネであれば4倍といった感じです。

同じ自己資金でも「経緯」によって、銀行からの評価が異なることを理解しておきましょう。

不動産・動産、有価証券を売却

たとえば、土地(不動産)を持っている、クルマ(動産)を持っている、株式(有価証券)を持っている。それらの資産を売却したおカネも、自己資金にあたります。

ただし、それらの資産を購入した「経緯」がだいじです。じぶんが稼いでためたおカネで買っていれば、コツコツおカネをためていたのと同じですが、親からの贈与で買っていたのであれば、自己資金としての評価は下がります。

なお、資産を売却して現金化したときには、その事実を銀行が把握できるように、売却を確認できる書類を準備するようにしましょう。

配偶者名義の預金

たとえば、専業主婦である妻名義の預金であれば、創業者がためたおカネとして自己資金とみてもらうことができます。この場合には、妻名義の口座に、夫名義の口座から振込をした「経緯」を確認できるように、通帳を銀行に提示しましょう。

いっぽうで、妻がじぶんで働いてためた妻名義の預金はどうかというと。夫自身のおカネではないものの、自己資金とみてもらえることもあります。妻が、夫の事業におカネを使うことを同意しているケースです。この場合には、銀行に対して「妻の同意」を説明するとともに、妻名義の通帳を提示するようにしましょう。

また、子ども名義の通帳についても、創業者がためたおカネであれば、通帳を提示することで自己資金と見てもらうことができます。

創業者自身のおカネだけでは自己資金に不足がある場合、家族名義の預金で自己資金と見てもらえるものがないか検討してみましょう。

まとめ

創業融資の受けやすさに、大きな影響がある「自己資金」。その自己資金は、おカネをためる「経緯」がだいじ、という話をしてきました。

本記事でとりあげた、疑問と誤解が多いケースについても確認しておきましょう。自己資金を誤解していたがために、希望していた融資が受けられなくなったりしないよう注意が必要です。

創業融資の自己資金は「経緯」がだいじ

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