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「中小企業がメガバンクで借入するのはやめておけ」は本当か?

「中小企業がメガバンクで借入するのはやめておけ」は本当か?

ちまたには、「中小企業がメガバンクで借入するのはやめておけ」というハナシがありますが。それは本当なのか? についてのお話です。

目次

中小企業だってメガバンクから借入できる。

中小企業の銀行借入について。メガバンクから借入をするのはやめておきましょう、というハナシがあります。ちなみに、ここでいう「メガバンク」とは、三菱UFJ、三井住友、みずほの3行です。

それらメガバンクは大企業向けの銀行であり、中小企業はターゲットではない。口座をつくるにしても、借入をするにしても審査が厳しいし、やめておいたほうがいい。代わりに、地方銀行や信用金庫・信用組合から借りたほうがいい。そんなハナシです。

では、絶対に借りられないのか? といえば、そうでもありません。中小企業がメガバンクから借入できることはありますし、借りてはいけないわけでもありません。むしろ、メガバンクから借りたほうがいい・借りるしかないケースもあります(後述)。

ただそれでも、中小企業がメガバンクから借入をすることのデメリットはありますので、そこは理解をしておきましょう。おもなデメリットはこちらです↓

中小企業がメガバンクから借入をするデメリット
  • プロパー融資が借りにくい
  • いざというときの対応がシビア
  • 関係性を築きにくい

それではこのあと、順番に確認していきましょう。

中小企業がメガバンクから借入をするデメリット

プロパー融資が借りにくい

メガバンクの審査が厳しいことは前述しました。なぜ、厳しいのか? メガバンクには、大企業をはじめ、優良な会社(=業績が良い会社・信用力がある会社)が集まりやすいからです。

だとすれば、メガバンクは優良な会社から順に融資をすればよいことになります。結果として、業績や信用面では大企業に劣る中小企業は、融資が受けにくくなるわけです。

とはいえ、メガバンクが中小企業に対してまったく融資をしないかといえば、そんなこともありません。中小企業がメガバンクから借入できることはある、という話は前述しました。

ただし、ほとんどの場合、その借入は「信用保証協会の保証付き融資(以下、保証付き融資)」になります。保証付き融資は、会社が返済できなくなった場合には、信用保証協会が肩代わりをしてくれるため、銀行にとってはリスクが小さい融資です。

これに対して、リスクが高いのが「プロパー融資」になります。信用保証協会の保証がないため、会社が返済できなくなったときには、銀行が 100%の損をかぶる融資です。

では、メガバンクはどうするか? 基本的には、優良な会社にのみ融資をしていれば商売は成り立つのですから、わざわざリスクをとって中小企業にプロパー融資をする理由がありません。なので、「中小企業には保証付き融資」となるわけです。

それでも借入できるならいいじゃないか、と考えるのであれば気をつけましょう。保証付き融資には、制度上の「上限」があるからです。

本来、保証付き融資を受けている銀行からは、あわせてプロパー融資を引き出すのがセオリーになります。保証付き融資によって銀行のリスクを下げつつ、その分、リスクをとってプロパー融資をしてもらおうという考えです。

ところが、メガバンクには中小企業に対してリスクをとる理由がありませんから、いくら保証付き融資を受けたところで、プロパー融資を引き出せない… ということが起こります。

にもかかわらず、メガバンクからばかり保証付き融資を受けて上限に達してしまえば、地方銀行や信用金庫・信用組合から保証付き融資を受けることができません。

すると、リスクを下げられなくなるので、地方銀行や信用金庫・信用組合からもプロパー融資を引き出せなくなってしまうのは大きなデメリットです。

保証付き融資は、いずれプロパー融資も引き出せる銀行から受けるものと考えておきましょう。保証付き融資だけを受けていたのでは、じゅうぶんな資金調達ができなくなってしまいます。

いざというときの対応がシビア

メガバンクは、会社がいざというとき(=業績悪化・資金繰り悪化)の対応がシビアだというハナシがあります。これは事実です。

地方銀行や信用金庫・信用組合に比べると、メガバンクは「貸し渋り・貸し剥がし」と呼べる場面が多くなります。繰り返しになりますが、メガバンクの審査は厳しいからです。

とはいえ、業績悪化や資金繰り悪化となれば、やはり、地方銀行や信用金庫・信用組合などからも借入できなくなるのではないか…? といえば、そのとおりです。

ただし、メガバンクよりも「広い視点」で審査をするという一面があります。数字(=決算書)ばかりではなく、決算書にはあらわれない・あらわれにくいところも評価をするということです。

たとえば、これまでの取引実績や、経営者の資質や個人資産、商品力や事業の将来性など。なにか、数字以外のところで補えるものはないか? という見方があります。

もちろん、メガバンクにもそういった見方はあるわけですが、メガバンクの中小企業に対する姿勢は「効率重視」です。メガバンクの主要顧客は大企業であって、中小企業ではありません。ですから、手間をかけてまで「広い視点」で見るという姿勢は弱いものと理解しておきましょう。

いっぽうで、とくに信用組合・信用金庫などは、数字だけを見ていたのでは融資先がなくなってしまいます。もともとが中小企業向けの金融機関であり、業績や信用面に問題を抱える会社が少なくないからです。

結果として、会社がいざというときにも、メガバンクほど「貸し渋り・貸し剥がし」はしづらい傾向があります。

また、地方銀行や信用金庫・信用組合は、いずれも「地域に根ざした商売(=営業エリアが限られている)」です。「貸し渋り・貸し剥がし」によって、地域に「悪評」が立つようだと、たちまち商売に悪影響が出る可能性があります。だから、いざというときにもシビアな対応をしづらいという事情もあるわけです。

事業を続けていれば、良いときもあれば悪いときもあるでしょう。社長は、いざというときのことも考えて、銀行選びをすることが大切です。

関係性を築きにくい

さきほど、メガバンクの中小企業に対する姿勢は「効率重視」だといいました。ふだんのお付き合いも効率重視です。なので、地方銀行や信用金庫・信用組合ほど、担当者が会社には来てくれない… というケースが多くなるでしょう。

銀行との関係性は、コミュニケーションの頻度・量によるところがありますから、担当者が会社に来てくれないとなると、どうしても関係性は築きづらくなるものです。

それでもなお、メガバンク中心の借入を続けていると、「メインバンクがない会社」になってしまう可能性があります。メインバンクとは、融資先のことを取引銀行のなかでも一番に理解し、積極的に支援をしてくれる銀行です。

この点で、「借入残高が一番多いから」と、社長はメガバンクがメインバンクだと考えているケースがありますが。メガバンクのほうは、メインバンクなどとはおもっていない、というのは「あるある」です。

結果として、いざというときにもメガバンクからは積極的な支援を受けられず、ほかの取引銀行からも支援を受けられず… というのでは困ってしまうでしょう。

社長は、いざというときに備えるという意味でも、メインバンクをつくっておく必要があります。メインバンクは一朝一夕につくれるものではありません。ふだんのお付き合いを重ねることで、つくれるものです。

担当者が会社に来てくれて、コミュニケーションの頻度・量を確保しやすい、地方銀行や信用金庫・信用組合のなかから、自社に合ったメインバンクづくりをしましょう。

いまでは、地方銀行や信用金庫・信用組合でも「効率化」が課題になっています。支店の統廃合や、外回り担当者の削減などが少なくありません。いっぽうで、あえて外回りを増やして、コミュニケーションを深めようとしている金融機関もあります。

それぞれの金融機関の方針や動向に注目しながら、銀行選びをするのがよいでしょう。

まとめ

ちまたには、「中小企業がメガバンクで借入するのはやめておけ」というハナシがありますが。それは本当なのか? について話をしてきました。

基本的には、中小企業がメガバンクから借入をするのにはデメリットがあるので、おすすめできません。代わりに、地方銀行や信用金庫・信用組合から借りたほうがいいでしょう。

とはいえ、自社の周囲にメガバンクしかないケースはやむをえませんし、全国展開や海外展開を考えている会社であれば、広域展開のメガバンクが適しているケースもあります。

したがって、絶対にメガバンクから借入してはいけないわけではなく、メガバンクから借りたほうがいい・借りるしかないケースがあることも理解しておきましょう。

中小企業がメガバンクから借入をするデメリット
  • プロパー融資が借りにくい
  • いざというときの対応がシビア
  • 関係性を築きにくい
「中小企業がメガバンクで借入するのはやめておけ」は本当か?

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