銀行にウソをつけば、融資が受けにくくなってしまいます。ところが、気づかぬうちについているウソというものはあるものです。銀行に対する社長のよくあるウソについて、話をしていきます。
人は気づかぬうちにウソをつく。
銀行から融資を受けている会社の社長が気をつけるべきことに、「ウソ」があります。つまり、社長が銀行に対してウソをつくのはよくないので、気をつけましょうということです。
これを聞いて、「ウソがいけないことくらい、言われずともわかっている」とおもわれるかもしれませんが。意外とうっかり、意外と気がつかないうちに、ウソをついていたりもするので注意が必要です。
結果として、銀行からの信用を失ったり、その後の融資が受けにくくなるのでは困ってしまうことでしょう。
というわけで、本記事では「銀行に対する社長のウソ」のうち、わりとよくあるものを3つ取り上げてみます。具体的には次のとおりです↓
- 預金取引を増やします
- 黒字化します
- 〇年で返済します
こういったことを言っていないか。言うのはよいにしても、そのあときちんと実行しているか。ウソになっていないか。このあと、確認をしていきましょう。
銀行に対する社長のよくあるウソ3選
預金取引を増やします
銀行に対する社長のよくあるウソ、1つめは「預金取引を増やします」です。
ここでいう「預金取引」とは、融資を受ける銀行の「預金残高を増やす」あるいは「口座内の取引数を増やす」ことをいいます。
銀行にとって、融資先の預金残高は「担保」のようなものです。いざとなれば、融資残高との相殺が可能ですから、残高が多ければ多いほど、銀行の「回収不能に対する不安」は小さくなります。
また、銀行は自行の口座内の取引(入金・支払)が増えれば、それにともなう「手数料収入」が増えるのがメリットです。いまは低金利で、融資だけでは稼ぎづらい銀行にとって、手数料収入はだいじな収益源になっています。
なので、銀行に融資を依頼すると「預金取引を増やしてほしい」ということを言われたり(暗に言われることも含めて)もするものです。
このとき、どうしても融資を受けたい社長ほど「はい、預金取引を増やします!(だから、融資をお願いします)」と約束をすることでしょう。とはいえ、口頭ベースの口約束です。
銀行は社長の言葉を信じて融資をしたものの、社長はすっかり忘れてしまっていた… というケースがあります。当然、銀行は覚えていますから「ウソをつかれた」とおもうはずです。
実際に、ある銀行員の方から「そういう社長の会社には、もう融資をしたくないと考えてしまう」と言っているのを聞いたことがあります。
また、銀行から「預金取引を増やしてほしい」と言われずとも、預金取引が交渉材料になることを知っている社長であれば、みずから「預金取引を増やします!(なので、融資をお願いします)」と約束することもあるでしょう。
この場合でも、融資を受けたらそれっきり、約束を忘れてしまうことはありえます。いずれにせよ、約束は守らねばならないのは言うまでもありません。
預金取引を増やすと言ったのであれば、まずは少しでもよいから残高を増やすこと(ほかの銀行から振り替える)、まずは1件でもよいから取引を増やす(売上入金口座をほかの銀行から変更する)ようにしましょう。
この点で、いっぺんにまとめてやろうとして、なかなか実行できない社長がいます。いっぺんにまとめて遅くなるよりは、まず少しでも確実に実行するほうが誠意は伝わるものです。
黒字化します
銀行に対する社長のよくあるウソ、2つめは「黒字化します」です。
いまが赤字の場合、銀行からの融資は受けにくくなります。銀行にとっては「返済原資=利益」であり、赤字ということはすなわち、返済原資がないことを意味するからです。
そこで、赤字でも融資を受けるためには、「いずれ黒字化」することが前提になります。
したがって社長は、黒字化の見込みについて説明をしたり、銀行からの求めがあれば「経営改善計画書」を提出するなどしなければいけません。
ちなみに経営改善計画書とは、現状の問題をあきらかにしたうえで、黒字化までの過程を「行動計画・数値計画」としてまとめた書類です。赤字の会社であれば、銀行から言われずとも作成することをおすすめします。
なんにせよ、社長は銀行に対して「黒字化します」ということを約束することになるわけです。
ところが、約束を破ってしまう社長がいます。黒字化できずに赤字のまま… ということとは別に、やると言ったことをやらないことが「いちばんのウソ」です。
黒字化の見込みを説明するなかで、「〇〇に取り組んでいきます」と言ったのに、実際は取り組んでいなかったとか。経営改善計画書の行動計画に「〇〇を実行します」と書いてあったのに、実際は実行していなかったとか。
ひどい場合には、社長のアタマから「計画書の存在自体」が忘れ去られている… ということもあります。
銀行は、社長が言ったことは記録に残していますし、計画書を忘れることは絶対にありません。ゆえに、社長が言ったこと・計画書に書かれたことの「その後」をモニタリングしています。
黒字化すると言ったのであれば、それを実現するのがいちばんです。けれども、黒字化が難しいこともあるでしょう。黒字化まではもうちょっと時間がかかるということもあるでしょう。
そのときに、言ったことをやっていない・書いてあったことをやっていないのでは「ウソつき」と見られて、銀行からの支援が受けにくくなってしまいます。
会社が厳しいときほど、銀行の支援が必要になるのですから、じゅうぶんに気をつけましょう。
〇年で返済します
銀行に対する社長のよくあるウソ、3つめは「〇年で返済します」です。
銀行から融資を受けるときには、「返済期間」を決めます。借りたおカネを何年で返済するのか、です。その返済期間もまた、銀行に対する約束の1つになります。
ではもし、返済期間5年で融資を受けて、結局、返済ができなくなってしまいました… という場合はどうでしょう? 自社の業績が悪化してしまったときには起こりうるケースです。
対応策としては、リスケジュールがあります。当初の約束を変更して、一時的に返済を猶予してもらうという対応です。当初の約束に対してウソをついたようにも見えますが、ウソとまではいえないでしょう。
なぜなら、リスケジュールは「銀行にきちんとお願い」をしたうえで、「約束を変更」してもらうものだからです。
これに対して、会社が無断で返済をすっぽかしてしまうのは「ウソつき」だといえます。実際に、業績が悪化して返済が厳しくなった会社で起こりうるケースです。
すると当然、銀行からの信用を失いますし、同じことが何回も続けば、返済期限を待たずに一括返済を求められることにもなります(いわゆる、期限の利益の喪失)。
以後の融資にも影響するところですから、無断で返済をすっぽかすことは絶対にしないようにしましょう。
ちなみに、当初の返済期間よりも早く返済する「繰り上げ返済」は、ある意味ではウソつきだといえます。「〇年で返済します」と言っていたのに、そうではなくなるからですね。
この点で、「早く返してもらえるのであれば、銀行だって喜ぶだろう」とおもわれるかもしれませんが。喜ばれるのは、その会社が「返済が危ぶまれるほど業績が悪いとき」に限られます。
そうでなければ、銀行にとってはデメリットです。まず、早く返済されたことによって、その後の「利息収入」がなくなってしまいます。また、貸し出し残高も減ってしまいます。
銀行にも、利息収入や貸し出し残高の「目標(ノルマ)」があるのですから、銀行担当者としても困ってしまうことはあるでしょう。「繰り上げ返済を繰り返している会社には、融資がしづらい」というハナシを、銀行員の方から聞いたことがあります。
繰り上げ返済については、こちらの記事もどうぞ↓
まとめ
銀行にウソをつけば、融資が受けにくくなってしまいます。ところが、気づかぬうちについているウソというものはあるものです。
本記事でとりあげた「銀行に対する社長のよくあるウソ」について、あてはまるものがないかを確認しておきましょう。
- 預金取引を増やします
- 黒字化します
- 〇年で返済します