ここ5年のあいだに銀行員の数は減り、いっぽうで、融資先数は増えています。結果、銀行員は以前よりも忙しくなっているのかもしれません。そんないま、社長が銀行対応で考えるべきことについて、お話をしていきます。
やっぱり銀行員は忙しい。
ここ5年の期間で見たときに、銀行員の数は「およそ3万人」ほど減っています(全国銀行協会の公表値に依る)。割合にすると、およそ 10%です。10%の人手が減ったら、そりゃあタイヘンだろうとおもいますよね。
もちろん、DXだのAIだのというハナシはあるわけですが。すべてをITに置き換えることはできず、ITに置き換えてはいけない業務もあるでしょう。たとえば、社長の「顔色」をうかがうとか。
社長の健康状態や事業への意欲などもまた、融資の審査材料であり、銀行員(ヒト)が社長の顔色をうかがうことでつかめる情報もあるはずです。これをAIが取って代わるには、現状では難しいものがあるでしょう。
それはそれとして。銀行員の数が減っているいっぽうで、銀行の融資先数が「10年で 10万社増えた」というデータがあります(金融庁の公表値に依る)。企業数は減少しているにもかかわらずです。
この点で、銀行の渉外担当者(外回り営業担当者)の1人あたり融資先数は 10社ていど増えているとのこと。銀行員は忙しくなっているのではないか? と推測されるところです。
これらの話を受けて、社長が銀行対応で考えるべきことについてお話をしていきます。具体的にはこちらです↓
- 銀行による選別がはじまる
- 取引銀行を見直す
- 銀行にとってのメリット
それではこのあと、順番に確認をしていきます。
銀行員の数が減っているいま、社長が銀行対応で考えるべきこと
銀行による選別がはじまる
これからの銀行対応を考えるときに、まず社長が考えるべきこと。というか、知っておくべきは「銀行による選別がはじまる」ということです。事実、すでにはじまっています。
前述したとおり、銀行員はますます忙しくなりかねない状況です(IT化や効率化が遅れればいっそう)。だとすれば、優良な融資先に絞り込むのは当然の考えだといえます。
また、コロナや物価上昇の影響もあり、業績・資金繰りが悪化する会社が増えました。コロナ後も改善が難しい会社もあるでしょう。だとすれば、改善が難しい会社への支援は打ち切る、という考え方もあります。
繰り返しになりますが、そういった「選別」はすでにはじまっているのです。受けやすい融資と言われていた信用保証協会の保証付き融資も、以前ほど受けやすくはありません。プロパー融資は以前にも増して受けにくくなりました。
したがって、社長は「以前と同じように融資が受けられる」と考えていると、おもったようには融資が受けられずに困ってしまう… ということが起こりえます。
では、どうしたらよいのか?
端的にいえば、まずは利益を出すことです。いますぐには難しいのであれば、いずれ利益を出せるとの「根拠」をもって銀行に説明することです。
ここでいう「根拠」とは、具体的には「経営計画書(赤字・債務超過の場合には経営改善計画書)」になります。
いま現在、業績・資金繰りが悪いのにもかかわらず、業績改善の見通しが立っていない。業績改善への道筋を描くことができていない会社は、銀行から選ばれなくなるものと考えておきましょう。
いうまでもなく、融資が受けにくくなる・受けられなくなるということです。
取引銀行を見直す
銀行の融資先数は、以前に比べて増えているという話をしました。
これについて、金融庁は「融資先数を絞り込む」ことを、銀行に対して望んでいます。このままでは、銀行員が疲弊してしまい、優秀な人材も流出してしまう可能性が高いからです。
ただし、金融庁もただただ融資先数を減らせと言っているわけではありません。本質的には、「銀行と会社との関係性を見直しましょう」ということを言っています。
つまりは、会社にとってのメインバンクをよりはっきりさせる、ということです。
現状、多くの銀行とお付き合いをしすぎていて、どこがメインバンクからわからなくなっている会社はけして少なくありません。すると、銀行の融資先数も増えてしまいます。
そこで、メインバンクをはっきりさせて、そこに取引を集約していくという考え方です。これは、銀行が考えていることでもありますが、社長が考えるべきことでもあります。
自社に合ったメインバンク探しをしましょう、ということです。
銀行は、融資先を絞ろうと考えてきますから、いま現在、融資金額が少なかったり、コミュニケーションが希薄な会社に対しては、消極的な姿勢に変化していくものとおもわれます。
社長はそこを理解しつつ、取引銀行を見直していくことが大切です。
銀行対応についてよく言われることに、「複数の銀行とお付き合いをしましょう」というものがあります。1つの銀行とだけお付き合いをしていることにはデメリットがあるからです↓
このデメリットは、今後も変わることがありません。ですが、過度に多くの銀行とお付き合いをしている会社については、今後、お付き合いを敬遠される銀行もあるものと考えておきましょう。
社長はそこもふまえて、どの銀行とお付き合い続けるかを考えなければいけません。お付き合いしている銀行が多すぎて、融資金額が少額(目安として1,000万円未満)で分散しているようなら、少しずつ集約をしていくということです。
銀行にとってのメリット
これからは、銀行の選別がはじまるという話をしました。では、銀行から選んでもらうためにはどうすればよいのか? 一番は、利益を出すこと。これはすでに話をしました。
ほかにも、社長が考えるべきことがあります。それは、「銀行にとってのメリット」です。あたりまえのことではありますが、メリットがあれば、銀行も「貸したい」と考えるでしょう。
では、メリットとは具体的にどのようなものなのか?
たとえば、「預金取引」です。融資を受ける銀行に、預金がたくさんあれば、融資をする銀行は安心を感じます。返済が滞るリスクが小さいからです。
また、その銀行の預金口座内で「入出金取引」があれば、銀行は手数料収入を得ることができます。売上入金、給与振込、各種費用の振込などが多いほど、銀行は振込手数料が増えるのがメリットです。
いまは低金利ですから、融資による利息収入だけでは不十分。手数料収入は、銀行にとって重要な収入源になっています。
さらには、入出金取引があれば、銀行はその銀行の「業況」を知ることが可能です。売上は増えているのか減っているのか、おカネは増えているのか減っているのか、という「ナマの情報」を得られるのも銀行にとってはメリットです。
したがって、今後もお付き合いを続けたい銀行に、預金残高や入出金取引を集約することも検討してみましょう。
また、融資を受けるときの利息について、金利交渉を控えることも銀行にとってはメリットです。以前に比べれば、いまはじゅうぶんに金利が低いのですから、「過度に高い金利」でなければ銀行の希望を受け入れることも考えてみましょう。
いつもいつも金利交渉を迫られる会社に比べれば、銀行との良い関係性を築ける材料になるはずです。
まとめ
ここ5年のあいだに銀行員の数は減り、いっぽうで、融資先数は増えています。結果、銀行員は以前よりも忙しくなっているのかもしれません。
そんないま、社長が銀行対応で考えるべきことについて確認をしておきましょう。確認を怠り、気づけば融資が受けにくくなっていた… ということがないように。
- 銀行による選別がはじまる
- 取引銀行を見直す
- 銀行にとってのメリット