創業融資について気をつけるべきことはさまざまありますが。創業前後それぞれの「タイミング」で気をつけるべきことについて、お話をしていきます。
そのときにしかできないことがある。
起業をするときの資金調達手段に「創業融資」があります。
そもそも資金調達手段が限られる中小企業にとっては、とくに重要な手段だと言ってよいでしょう。なかでも、公的金融機関である日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は、ぜひとも利用を検討したい創業融資です。
そんな創業融資を受けるにあたっては、さまざま気をつけるべきことはありますが。本記事では「創業前〜創業後」まで、それぞれのタイミングごとに気をつけるべきことをお話ししていきます。
つまり、「そのタイミングでしかできないことがある、そのときにしかできないことがある」ということです。それではさっそく、確認をしていきましょう。
創業融資について創業前後それぞれのタイミングで気をつけるべきこと
創業前(創業融資を受ける前)
起業を考えているのであれば、「創業前の段階(創業融資を受ける前の段階)」で気をつけるべきことがあります。それは、「自己資金の準備」と「経歴の整理」です。
まず、自己資金の準備について。創業融資の審査では、自己資金の有無が大きく影響します。端的に言えば、自己資金が多いほど融資が受けやすく、より多くの額の融資を受けやすくなります。
ちなみに、自己資金とは「誰にも返さなくてよいおカネ」のことであり、典型例は「給与のなかからコツコツ貯めたおカネ」です。いっぽうで、創業直前に友人から借りたおカネなどは、自己資金とはなりません。
日本政策金融公庫の新創業融資制度で借りることができる金額は、おおむね「自己資金の2〜4倍」が目安です。じぶんが希望する借入金額に対して、それくらいの自己資金を準備できるようにしましょう。
自己資金について、詳しくはこちらの記事もどうぞ↓
それから、もう1つ。経歴の整理とは、文字どおり、じぶんの経歴の整理をしておきましょう、ということです。創業融資の審査では、必要書類として経歴を提出することになります。
では、銀行は経歴のなにを見ているのか? というと、「これから始める事業と関係がある経歴があるのかどうか」です。極端なハナシ、会社で経理の仕事しかしてこなかった人が、急に「ラーメン屋を始めます!」というのでは違和感があるでしょう。
ラーメン屋を始めるのであれば、飲食店で働いたことがあるとか、それもラーメン屋で働いたことがある、といった経歴があるほうが「自然」です。
とはいえ、ラーメン屋の経歴がまったくないからと言って、絶対に創業融資が受けられないかといえば、実はそうでもありません。ラーメン屋で働かなくても、ラーメン屋の経営に役立つ経歴もあるからです。
たとえば、食材の流通に関わるような仕事をしていたとか、管理職でマネジメント業務のノウハウを身につけていたとか、趣味でラーメンを食べ歩き、じぶんでもラーメンをつくっていたとか。
いずれにせよ、じぶんがどのような経歴でアピールできるのかを、事前に整理しておきましょう。不足がありそうなら、あらたな経歴をつくれる仕事を経験するのも1つの方法です。
経歴について、詳しくはこちらの記事もどうぞ↓
創業時(創業融資の申込時)
続いて、創業時のタイミングで気をつけるべきこと。まずは、「創業融資を受けること」です。創業時に、「できるだけ自己資金でがんばる」と考える人は少なくありません。
もちろん、それはそれで悪くはないのですが、あとになって「借りておけばよかった…」と後悔する人が、けして少なくはないことを覚えておきましょう。わたしは税理士として、その光景をなんども見てきました。
なので、いまでは「とりあえず創業融資を受けておく」ことをおすすめしています。とりあえずだなんて、人の借金を気軽に言うな! と叱られるかもしれませんが。
創業融資は「借りやすい融資(創業後の融資に比べて)」でありながら、創業時のタイミングでしか利用できないものでもありますから、選択肢の1つとしておすすめをしているしだいです。
ただし、借りやすいとは言っても、気をつけるべきことがあります。それは、「納得感のある創業計画書」です。
創業融資を受けるにあたっては、銀行に対して、創業計画書の提出が必要になります。その計画書について、銀行の納得がえられなければ、創業融資を受けることはできません。
では、銀行の納得をえるためのポイントとは? 端的に言えば、「慎重な売上計画」と「慎重な資金繰り計画」です。これとは逆に、楽観的に過ぎる売上計画や資金繰り計画では、銀行の納得をえられません。
このあたり、詳しくは別の記事で解説をしています↓
よくある「間違い」は、たいした根拠もないのに、開業直後から右肩上がりの売上計画です。すでに、受注(見込みも含めて)がある、お客さまが付いているなら別ですが、そうでもなければ、開業から半年くらいは売上が伸び悩むことが多くなります。
したがって、開業後6ヶ月くらいで軌道に乗ることを前提に、最終的にはどのくらいの売上が見込めるのか? その根拠(同業他社のリサーチ、市場調査など)をできるだけ準備しましょう。
創業後(創業融資を受けたあと)
さいごに、創業後のタイミングで気をつけるべきことについて確認していきます。ちなみに、創業時には創業融資を受けた、という前提です。
で、創業後は「さらなる融資」を狙いましょう。事業を続けている限り、「おカネ」を欠かすことはできません。おカネが尽きれば、会社はつぶれてしまいます。
だったら、じぶんで稼いでおカネを貯めればいい、というのは正論です。が、稼いで貯められるおカネが、それほど多くないことにまもなく気づくでしょう。
たとえば、年間売上高 3,000万円の会社が、税引前利益 300万円を稼いだとしても、税引後(税率 30%として)に手元に残るおカネは 210万円です。さらにそこから、創業融資の返済(元金分)をしなければなりません。
税引前利益率 10%(300万円 ÷ 3,000万円)は、どちらかといえば優秀な会社ですが、それでも稼いで貯められるおカネは、それほど多くはないのです。
だとすれば、借りてでもおカネを持つことが選択肢の1つになるでしょう。ここでポイントが、創業融資で借りたおカネの預け先です。
創業融資のなかでも、もっとも借りやすいのが、前述した日本政策金融公庫の新創業融資制度になります。その日本政策金融公庫には、預金機能がありません。ですから、日本政策金融公庫で借りたおカネは、どこか別の金融機関に預ける必要があります。
このとき、次の融資を受ける金融機関をイメージして預けるようにしましょう。
結論として、都市銀行に預けることはおすすめできません。なぜなら、中小企業が都市銀行から融資を受ける難易度は高いからです。それよりも、地方銀行や信用金庫・信用組合のほうが、融資が受けやすくなります。
銀行は、預金をあずけてもらえば、融資をしても回収しそびれるリスクが減りますから、融資がしやすくなることを覚えておきましょう。なので、日本政策金融公庫から借りたおカネは、次に融資を受けようと考えている銀行にあずけるのです。
そのうえで、創業後1度めの決算書ができたあたりで、融資の依頼をしてみるとよいでしょう。なお、当初の創業計画どおり、あるいはそれよりも好調であれば、融資が受けやすくなります。
いっぽうで、創業計画を下回る業績だと、融資が受けにくくなります。ここでも、右肩上がりの計画書だと、問題が生じることを理解しておきましょう。
まとめ
創業融資について気をつけるべきことはさまざまありますが。創業前後それぞれの「タイミング」で気をつけるべきことについて、お話をしてきました。
創業融資を受ける、創業融資を活かすにあたり、「そのタイミングでしかできないことがある、そのときにしかできないことがある」ということを覚えておきましょう。
あとになってからでは、どうにもできないことがあります。