会社が銀行から融資を受けるなら、短期がよいのか・長期がよいのか? できるだけ短期で借りようとする社長もいますが、長期で借りるメリットも理解しておきましょう、というお話です。
デメリットがあれば、メリットもある。
会社が銀行から融資を受けるにあたって、できるだけ「短期」で借りようとする社長がいます。
逆に、長期で借りれば支払う利息の総額が多くなってしまう… と考えるからかもしれません。あるいは、いつまでも借金を抱えているのはイヤだ、そう考えるからかもしれません。
たしかに、長期で借りることにはデメリットもあります。ですが、いっぽうで、長期で借りるメリットもあります。なので、「できるだけ長期で借りる」ことについても、いちどは検討してみるのがおすすめです。
つまり、銀行から融資を受けるときには「できるだけ長期の返済にしてもらう」ようにお願いをする、ということになります。
では、銀行融資を長期で借りるメリットとは? おもなメリットは、こちらになります↓
- 資金繰りがラクになる
- 期限の利益を得られる
それではこのあと、順番に確認していきましょう。
銀行融資を長期で借りるメリット
資金繰りがラクになる
たとえば、360万円の融資を受けるにあたって、返済期間3年で借りる場合の「毎月の返済額」は 10万円です(360万円 ÷ 36ヶ月)。これに対して、返済期間5年で借りる場合の「毎月の返済額」は6万円です(360万円 ÷ 60ヶ月)。
よって、資金繰りを考えるのであれば、毎月の返済額が少ない分、長期のほうがよい。つまり、返済期間5年のほうが望ましい。というのは「あたりまえ」のハナシではありますが。「借金はできるだけしたくない」と考える社長ほど、短期を選びがちだと言えます。
もちろん、それも1つの考え方です。ところが、借入の本質は「おカネ(現金預金)を増やす」ことにあります。にもかかわらず短期を選べば、毎月の返済額の多さによって、本質とは矛盾する結果になることは理解しておきましょう。
この点で、「長期になると、支払う利息がもったいない」というのも矛盾です。そもそも、おカネが必要だから借入をしているのに、利息をケチるばかりに短期で借りて、資金繰り破たんを起こしていたのでは笑うに笑えぬハナシになってしまいます。
そもそも、いまは低金利なのですから、元金返済額に比べれば利息支払額のインパクトはそれほどでもありません。だから、借りるのであればしっかり借りる、できるだけ長く借りる、という選択肢についても検討するようにしましょう。
以前に比べると、「オンライン融資」と呼ばれる融資の利用が増えてきました。その名のとおり、オンラインで申し込みから審査、入金まで済ませることができる融資です。銀行融資に比べて「スピーディー」というメリットもあります。
しかし、ほとんどのオンライン融資は、「短期・少額」なのが現状です。つまり、銀行融資に比べると、返済期間が短い(1年以内、など)、融資金額が少額(500万円以内、など)というデメリットもあります。
銀行融資よりも「お手軽」に借りられるからと、オンライン融資を安易に利用すると、同じ融資でも「長期で借りるメリット」を得られなくなってしまうのが問題です。
また、オンライン融資で借りた金額分だけ、銀行融資を受けられる金額は少なくなります。オンライン融資で借りようが、銀行融資で借りようが「返済余力」は減るからです。
だったら、銀行融資で「長期で借りる」ほうがよい、とも言えます。また、銀行融資であれば、借入実績を積み重ねることで、銀行からの信用が増し、その後の融資では「より長期で借りやすくなる(オンライン融資に比べて)」のもメリットです。
話を銀行融資に戻します。長期で借りておく分には、あとから早く返済することは可能です(いわゆる、繰り上げ返済)。ほんとうにおカネが余ったら、そうすればよいでしょう。
ところが、短期で借りておいて、あとから「やっぱり長期にしてほしい」というわけにはいきません。どうしても…となれば、リスケジュールになってしまいます。銀行融資においては、できれば避けたいものです。
事業を続けていれば、いつなんどき・なにが起きるかはわかりませんから、よほどおカネに余裕がある場合(売上高半年分くらいの現金預金がある)をのぞいては、できるだけ長期で借りることをおすすめします。
期限の利益を得られる
銀行融資に関して、「期限の利益」という用語があります。期限の利益とは、カンタンに言うと「おカネを借りた人は、返済期限が来るまでは返済しなくてもいいですよ」という権利のことです。
したがって、長く借りれば、それだけ長いあいだ返済しなくてもよい、ということになります。
たとえば、360万円を返済期間5年で借りた場合には、毎月きちんと返済を続けている限り、銀行から「もっと早く返して」と言われることはありません(言われても無視できる)。5年にわたり、借り続けることができます。
これに対して、360万円を返済期間3年で借りた場合には、当然、3年で返済をしなければいけません。この「期限の利益」を借りる側から見たときにどちらがよいか? と言えば、当然、期限の利益は長く得られるほうがよいはずです。
社長が長期を嫌う理由として「利息の多さ」を挙げましたが、利息は「期限の利益を長く得るためのコスト」でもありますから、どちらを取るか、よく考えるようにしましょう。
ちなみに、いまの銀行融資のトレンドに「短期継続融資」があります。これは、いわゆる経常運転資金分の融資を受けるにあたり、短期の手形貸付で融資をするものです。詳しくは、こちらの記事も参考にどうぞ↓
短期継続融資は、資金使途が経常運転資金であるために、基本的には、経常運転資金が存在し続ける限りは、融資し続けることを前提にしています。つまり、返済期限が来ても、経常運転資金の状況に変わりがなければ、期限を更新するということです。
結果として、実質的には「返済なしの借りっぱなし」になるのが、短期継続融資のメリットだと言えます。
が、期限の利益を言うのであれば、短期継続融資は会社にとって「不向き」という見方もあるでしょう。実際、短期(1年以内)の期限を迎えた際に、銀行から全額返済を求められるケースがゼロではありません。自社の業績が悪化しているときなどはとくに、です。
とはいえ、全額返済をすることで融資先がつぶれてしまうようなことを、銀行が望んでいるわけでもありません。また、つぶれないにしても、全額返済を求めることで「貸し剥がしだ!」との悪評が立つのも、銀行としては避けたいところです。
よって、そんなにカンタンには全額返済を求められることはない、ということも覚えておくとよいでしょう。仮に全額返済を求められたとしても、銀行との交渉によって「長期の分割返済」に持ち込めるケースが少なくありません。
なにが言いたいかというと、「長期で借りる」ことを目指すのであれば、経常運転資金については「短期継続融資」を受けることで、実質的に長期で借りるのがおすすめです。
まとめ
会社が銀行から融資を受けるなら、短期がよいのか・長期がよいのか?
できるだけ短期で借りようとする社長もいますが、長期で借りるメリットも理解したうえで、それでも短期のほうがよいのかを検討するようにしましょう。短期を選んだばかりに、のちのち後悔をするケースがあります。
- 資金繰りがラクになる
- 期限の利益を得られる