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銀行融資の残高シェアで確認すべき3つの視点

銀行融資の残高シェアで確認すべき3つの視点

銀行融資の「残高シェア(融資総額に占める、各銀行の融資残高の割合)」について、社長が持つべき視点は3つありますよ、というお話をしていきます。

目次

ひとくちに残高シェアといってもいろいろある。

銀行から融資を受けている会社の社長が考えるべきことの1つに、融資の「残高シェア」があります。つまり、自社の「融資総額に占める、各銀行の融資残高の割合」です。

ひとくちに「残高シェア」と言っても、いくつかの視点があることに気をつけなければいけません。その視点を見落としていると、メインバンクがどこの銀行であるかを見誤ったり、思うように融資が受けられなくなったり… といったことが起きるものです。

では、どのような視点があるのか? 具体的な次の3つです↓

銀行融資の残高シェアで確認すべき3つの視点
  1. 表面の金額
  2. うち無担保・無保証の金額
  3. 預金シェアとの比較

それではこのあと、順番に確認していきましょう。

銀行融資の残高シェアで確認すべき3つの視点

表面の金額

1つめの視点は、「表面の金額」です。なお、ここで言う「表面の金額」とは、各銀行の「融資残高そのもの」をあらわします。いま現在、各銀行に対する融資残高はいくらあるのか? です。

たとえば、4つの銀行から融資を受けている会社があるとします。それぞれの融資残高(表面の金額)は、A銀行 4,000万円、B銀行 3,000万円、C銀行 2,000万円、D銀行 1,000万円です。

冒頭、融資の残高シェアとは、「融資総額に占める、各銀行の融資残高の割合」だと言いました。では、この会社について、「表面の金額」という視点で見た場合の残高シェアはどうなるのか?

次のとおりです↓

表面の金額残高シェア
A銀行4,000万円40%
B銀行3,000万円30%
C銀行2,000万円20%
D銀行1,000万円10%
合計10,000万円

上の表のとおり、残高シェアはA銀行 40%、B銀行 30%、C銀行 20%、D銀行 10%です。この点で、「取引銀行のなかでもっとも融資を受けている銀行」をメインバンクと見る考え方があります。だとすれば、この会社のメインバンクは、残高シェアがもっとも高いA銀行です。

会社がメインバンクを持つことにはメリットがあります。たとえば、中長期的な支援を得られるとか、会社がいざというとき(業績悪化や不測の事態など)にも積極的な支援を期待できるとか。

したがって、社長はメインバンクを「はっきりさせる」ことが大切だと言えます。残高シェアを見たときに、シェアが分散していて「どこも似たりよったり」になると、メインバンクがない会社になってしまいます。

1つの目安として、メインバンクの残高シェアは「50%弱」くらいを目指すのがおすすめです。これよりも大きすぎると、一極集中で足元を見られる可能性があります。

なお、現状では、金融庁が「残高シェアの分散」を問題視していることを覚えておきましょう。かつて、銀行どうしの競争激化から、会社は多くの銀行から融資を受けることになりました。

結果として、会社の規模に対して取引銀行の数が多すぎたり、残高シェアが分散しすぎたりしていることがあります。すると、各銀行の収益力は鈍りますから(利息収入が少なくなるのに、管理に手間がかかる)、これを避けるべしというのが金融庁の考えです。

これを受けて、今後はよりいっそう、銀行側が残高シェアを気にする(メインバンクとしてのシェアを取りにいく)ことが予想されます。

うち無担保・無保証の金額

2つめの視点は、「うち無担保・無保証の金額」です。この「うち」とは、前述した「表面の金額のうち」ということをあらわします。

では、「無担保・無保証の金額」とは? 文字どおり、担保が無い融資、あるいは保証(社長の連帯保証、信用保証協会の保証)が無い融資を言います。言い換えると、プロパー融資です。

それら無担保・無保証の融資とは、銀行から見れば「リスクが高い融資」に当たります。にもかかわらず、無担保・無保証の融資をしてくれるのであれば、それは自社を評価・信用してリスクを取ってくれているということです。

だとすれば、そういった姿勢こそが「メインバンクの証」だとも言えるでしょう。そこで、積極的にリスクを取ってくれている銀行をあきらかにするために、「うち無担保・無保証の金額」に注目します。

たとえば、さきほどの会社の融資について、融資残高のうち、各銀行の無担保・無保証の金額が、A銀行は 600万円、B銀行が 2,100万円、C銀行が 300万円、D銀行がゼロだとしたらどうでしょう? この場合の残高シェアは次のとおりです↓

うち無担保・無保証の金額残高シェア
A銀行600万円20%
B銀行2,100万円70%
C銀行300万円10%
D銀行0万円0%
合計3,000万円

さきほど見た「表面の金額」の残高シェアでは2番手だったB銀行が、「うち無担保・無保証の金額」ではダントツのシェアトップとなりました。

こうしてみると、この会社のメインバンクは「A銀行ではなくて、むしろB銀行なんじゃないの?」という疑問が生まれます。表面の金額だけを見て、メインバンクを考えている社長は気をつけたいところです。

この状況では、A銀行に対して担保や保証を提供しても、プロパー融資を引き出すのは困難かもしれません。それよりも、担保や保証はB銀行に提供することで、さらにプロパー融資を引き出せる可能性があります。

担保や保証には限りがありますから、どうせ提供するのであれば、プロパー融資を引き出せる銀行に提供したいものです。その見極めをするために、「うち無担保・無保証の金額」を確認するようにしましょう。

預金シェアとの比較

3つめの視点は、「預金シェア」との比較です。融資をしている銀行にとって、融資先からの預金は「担保」のようなものであり、リスクをやわらげる効果があります。

よって、各銀行は「(じぶんの銀行に)できるだけ預金をしてほしい」と考えているわけです。さらに言うと、「少なくとも、融資残高シェア分くらいは預金をしてくれなければ不公平だ」とも考えています。

ここで、さきほど見た「表面の金額」の残高シェアを再掲します↓

表面の金額残高シェア
A銀行4,000万円40%
B銀行3,000万円30%
C銀行2,000万円20%
D銀行1,000万円10%
合計10,000万円

この場合、B銀行であれば「預金総額の30%分くらいは預金がほしいな」と考えているということです。たとえば、この会社の預金総額が 5,000万円である場合、「5,000万円 × 30%」で 1,500万円くらいの預金はしてほしい、ということになります。

ところが、この会社は預金のほとんどをA銀行にあずけているとすれば、B銀行は「不公平だ」と考えるはずです。

また、1,500万円の預金をあずけていたとしても、「うち無担保・無保証の金額」による残高シェアから見た場合、「1,500万円でも不公平だ」という見方もあるでしょう。なぜなら、B銀行は 70%ものシェアがあるからです。

したがって、社長は融資の残高シェアを見ながら、預金シェアを考える必要があります。このあたり、あまり無頓着でいると、不公平を感じる銀行が離れていく可能性があるので気をつけなければいけません。

融資の残高シェアは見ていても、預金シェアは見ていない社長が少なくないので注意しましょう。

なお、預金については「会社の預金」ばかりではなく、「社長個人の預金」を活用することもできます。多くの中小企業では「株主=社長」であり、社長は会社と一心同体ですから、銀行は「社長個人の預金」にも注目をしているものです。

社長個人の預金があるのであれば、どの銀行にあずけるかを検討してみましょう。会社が融資を受けるのに、役立てることができます。

まとめ

銀行融資の「残高シェア(融資総額に占める、各銀行の融資残高の割合)」について、社長が持つべき視点は3つありますよ、というお話をしてきました。

それらの視点を見落としていることによって、メインバンクがどこの銀行であるかを見誤ったり、思うように融資が受けられなくなったり… といったことが起きないようにしましょう。

銀行融資の残高シェアで確認すべき3つの視点
  1. 表面の金額
  2. うち無担保・無保証の金額
  3. 預金シェアとの比較
銀行融資の残高シェアで確認すべき3つの視点

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