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銀行に「今期はV字回復」を納得させるには根拠が必要

銀行に「今期はV字回復」を納得させるには根拠が必要

これまでは赤字… でも、今期はV字回復します! だから融資をお願いします。と言って、銀行を納得させるには「根拠」が必要です。その根拠とは?について、お話をしていきます。

目次

ほんとうにV字回復できるのか?

社長であれば、銀行から融資を受けるためには「黒字」が大事であることを理解しているでしょう。この点で、これまで赤字だった会社は「V字回復」を目指すことになります。

では、社長が「今期はV字回復します!」と言えば、銀行が信じてくれるのか。銀行が積極的に融資をしてくれるようになるのかと言えば、そんなことはありません。

言うまでもなく、「ほんとうにV字回復できるのか?」を疑っているからです。それでも社長が銀行に納得をしてもらうためには、「根拠」が必要になります。具体的にはこちらです↓

銀行に「今期はV字回復」を納得させるための根拠
  • 受注書・受注リスト
  • 赤字原因の特定
  • 数値計画と行動計画

それではこのあと、それぞれの内容について確認をしていきましょう。

銀行に「今期はV字回復」を納得させるための根拠

受注書・受注リスト

赤字が売上の減少によるものであれば、売上の回復が必要になります。この場合、V字回復のキモもまた、売上の回復です。

では社長が「売上は増えます、売上は増やします」と宣言をすればよいかと言うと、もちろん、それだけでは足りません。銀行としては、口先だけの言葉を信じるわけにはいかないからです。

ここで、根拠が必要になります。もっとも強力な根拠は、「受注書」や「受注契約書」です。実際に「受注」があり、売上が増えることを証明する証拠資料になります。

よって、社長が銀行に「V字回復」を語るときには、受注書や受注契約書を提示するのがよいでしょう。守秘義務の兼ね合いなどで「すべてを見せる」ことができないケースはあるかもしれませんが、どうしても見せられない部分は「マスキング」するなどしてでも、できるだけ提示することをおすすめします。融資を必要とする会社であれば、とくにです。

なお、受注書や受注契約書を提示できるところにまではいたっていない… という場合。つまり、「受注見込みがある」くらいの状況である場合には、「受注リスト」を作成して銀行に提出するのがよいでしょう。

受注見込み先を一覧に記載したうえで、それぞれの見込み先について、受注活動(商談)の進捗状況や受注見込みの高さ(高い順にA、B、Cなど)、受注見込み額などの情報も記載します。

受注できるかどうかは「未定」とはいえ、なんの根拠もないよりは、銀行に対する説得力は増すものです。銀行担当者も稟議書を作成する際の「参考情報」にすることができます。

いっぽうで、こういった根拠がないと、銀行は「過去の数字」で検討をするしかありません。過去の数字とは、つまり、決算書です。その決算書の内容は「赤字」なのですから、銀行からの積極的な支援は受けられないことになってしまいます。

「銀行はちっとも言うことを信じてくれない」と嘆く社長がいますが、聞けば、「根拠」の提示が不十分であることが少なくありません。

実際に、根拠がないのであればともかく、根拠があるにもかかわらず「用意するのがメンドーだから」とか、「銀行には情報を明かしたくない」といった理由から、根拠を提示しないのはもったいないハナシです。

社長みずから、融資を受けにくくしているのであることを理解しておきましょう。

赤字原因の特定

さきほど、「赤字が売上の減少によるものであれば、売上の回復が必要になる」という話をしました。では、赤字の原因が「売上の減少」なのかと言えば、それは違います。

売上の減少は、赤字における現象の1つに過ぎません。したがって、赤字の原因を言うのであれば、「なぜ、売上が減少したのか?」を特定する必要があります。

赤字の特定ができていない状況では、たとえ前述した「受注書」や「受注リスト」があっても、銀行は「また赤字になるかもしれない…」と考えるでしょう。保守的・悲観的に考えるのが、銀行の姿勢だからです。

当然、融資は受けにくくなりますから、社長が「V字回復」を語るのであれば、「赤字原因」とセットだということを覚えておきましょう。

ではなぜ、売上が減少したのか? この点で、「景気が悪いから」や「新型コロナのせい」、「原材料価格の高騰」など、「外部要因」を挙げる社長がいます。

たしかに、それらも「原因の1つ」ではありますが、「原因のすべて」ではありません。なぜなら、景気が悪くても、新型コロナがあっても、原材料価格が高騰しても、業績が良い会社はあるからです。

だとすれば、ほんとうの原因は「内部要因」にあると言えます。ほんとうの原因は、会社の外にあるのではなく、会社の中にあるということです。

たとえば、「ここ10年、主力商品が変わっていない」のであれば、時代の変化に対応できるだけの商品開発力が不足していたことが、売上が減少の一因だと言えるでしょう。

ほかにも、中長期的な視点での人材採用・育成が不十分であったり、設備投資が不十分であったり、といった原因も考えられます。いずれにしても、会社の中にある「原因」に目を向けてみましょう。

外部要因は、会社にはどうしようもできないことばかりですが、内部要因であれば、会社自身でどうにかすることができます。内部要因を特定して、それを解決するための「策」を立てられるのであれば、銀行に対する説得力も増すはずです。

ちなみに、赤字の決算について、「過去の膿を出した(だからV字回復できる)」という説明をする社長がいます。ですが、これだけでは、銀行は不安に感じるものです。

もうおわかりのこととおもいますが、膿が溜まることととなった「原因」があきらかではないからです。原因がわからなければ、いくらいま膿を出したところで、また溜まるかもしれません。膿もまた「現象」に過ぎません。原因を追求しましょう。

数値計画と行動計画

さきほど、「内部要因を特定して、それを解決するための「策」を立てられるのであれば、銀行に対する説得力も増す」という話をしました。

ここで言う「策」の詳細にあたるものが、「数値計画」と「行動計画」です。このうち「数値計画」は「どれくらいV字回復するのか?」を示し、「行動計画」は「どうやってV字回復するのか?」を示します。

どちらかいっぽうでも欠けると、根拠として不十分になることを理解しておきましょう。また、数値計画と行動計画の前提になるものが、前述した「赤字の原因」です。

赤字の原因も特定できないままつくられた数値計画や行動計画を、別名「絵に描いたモチ」と言います。銀行は、絵に描いたモチ的な計画を信用しません。

ですから、「計画」と「赤字の原因」もまたセットで語る必要があります。赤字の原因が抜け落ちた計画はほんとうに多いですから、気をつけるようにしましょう。いきなり計画書をつくりはじめてはいけない、ということです。

なお、数値計画については「80%以上達成できるかどうか」を基準にして、つくるようにしましょう。逆に、計画の80%を下回るようだと、銀行からは「アテにならない計画」だと見られてしまいます。

結果として、以後つくる数値計画のすべてが否定的に見られてしまうと、結局、過去の数字(決算書)でしか評価してもらえないことになるのは問題です。そう考えると、数値計画は保守的なくらいがちょうどよい、とも言えます。

また、行動計画は「実行確認」を必ずするようにしましょう。数値計画は毎月、計画と実績の比較をしていても、行動計画は放置している会社があります。

数字が良いにしても悪いにしても、その過程にあるのが「行動」です。数字が良かったのであれば、それは「計画的な行動」によるものなのか、それとも「たまたまの行動」によるものなのか? それがわかれば、社長は「再現性」を高めることができます。

いっぽうで、数字が悪かったのであれば、「行動計画は実行されたのか」の検証が大切です。行動もせずに数字が悪いのはあたりまえですが、その検証もなされないままに「次はがんばれ!」と精神論で済ませる社長を、銀行は「管理能力がない社長」と評価します。

まとめ

これまでは赤字… でも、今期はV字回復します! だから融資をお願いします。と言って、銀行を納得させるには「根拠」が必要です。その根拠とは?について、お話をしてきました。

根拠を示せなければ、「V字回復など絵空事」と見られかねません。銀行融資以前に、V字回復自体の確度を上げるものが「根拠」でもあります。まずは社長が、根拠の確認からはじめましょう。

銀行に「今期はV字回復」を納得させるための根拠
  • 受注書・受注リスト
  • 赤字原因の特定
  • 数値計画と行動計画
銀行に「今期はV字回復」を納得させるには根拠が必要

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