逆粉飾する会社に起きるデメリット

逆粉飾する会社に起きるデメリット

実際よりも利益を多く見せる「粉飾」に対して、実際よりも利益を少なく見せる「逆粉飾」があります。税金嫌いの社長がやりがちな「逆粉飾」によって、会社に起きるデメリットとは?

目次

粉飾には2種類ある。

会社の決算について、実際よりも利益を多く見せることを「粉飾」と呼びます。逆に、実際よりも利益を少なく見せることを「逆粉飾」と呼びます。

前者の「粉飾」が多いのは、どちらかと言えば大企業です。大企業には、株主に対して業績をよく見せたいとの動機があります。なお、中小企業でも、銀行融資を受けるために粉飾するケースもあります。

いっぽうで、後者の「逆粉飾」が多いのは、中小企業です。税金嫌いの社長が、支払う税金を少なくするために、利益を少なく見せようとすることがあります。多くの中小企業は「社長=株主」ですから、利益を少なくしても株主から責められることもありません。

では、その「逆粉飾」について。やってはいけないのはもちろんですが、もしやってしまった場合には、どのようなデメリットが起きるのか? おもなところでは、次の3つが挙げられます↓

逆粉飾する会社に起きるデメリット
  1. 利益過小で融資が受けにくくなる
  2. 脱税を疑われて融資が受けにくくなる
  3. ペナルティによって資金繰りに支障をきたす

いずれも、けして小さくはないデメリットです。税金嫌いもほどほどに… という戒めとして確認をしておきましょう。

逆粉飾する会社に起きるデメリット

利益過小で融資が受けにくくなる

逆粉飾とは、「実際よりも利益を少なく見せること」だと前述しました。この点で、「利益を少なく保守的に見ることは、利害関係者にとって、よいことなのではないか?」と言い訳する社長がいます。

たしかにそのとおりですが、「保守的に見ること」と「実際よりも少なく見せること」とは同じではありません。保守的とは、実際の範囲内での話であるのに対して、逆粉飾となれば実際の範囲外での話になってしまいます。

では、実際の範囲を超えて、実際よりも利益を少なく見せようとした場合にはどうなるのか? たとえば、今期の売上を来期の売上に付け替えるとか、来期の経費を今期の経費として付け替えるといったケースです。

当然、実際よりも利益が少なくなります。利益が少なくなると、悪影響が生じるのが「銀行融資」です。銀行は「利益=返済原資」と見ていますから、利益が多い会社には融資をしやすく、利益が少ない会社には融資をしにくい、と考えています。

ですから、逆粉飾によって利益が少なくなれば、銀行からは「利益過少」と見られ、融資が受けにくくなることを理解しておかなければいけません。

多くの中小企業は、銀行融資なしに資金繰りは成り立たないものであり、銀行融資が受けにくくなるというデメリットは大きなものです。

そこで、社長は銀行に対して「ほんとうはもっと利益を出せる」と言い訳をすることがあります。が、そんな言い訳は銀行に通用しません。なぜなら、銀行は「決算書」で評価をするしかないからです。

決算書が、法律でも認められた「公式の書類」である以上、「ほんとうはもっと利益を出せる」などという「口先だけの言葉」を信用するわけにはいきません。

なお、利益が少なくなると、自己資本もまた少なくなります。自己資本を構成する「利益剰余金」は、過去の利益の累積だからです。実際よりも利益を少なく見せれば、自己資本もまた少なくなることを覚えておきましょう。

銀行は、自己資本が多い会社を「安全」だと見ています。逆に、自己資本が少ない会社は「危険」と見て、融資を躊躇します。利益を少なく見せれば、やはり銀行融資が受けにくくなるのです。

脱税を疑われて融資が受けにくくなる

逆粉飾をすることによって、利益過少となり、銀行融資が受けにくくなるという話をしました。もう1つ、別な理由から銀行融資が受けにくくなることがあります。

その理由とは、「脱税を疑われるから」です。つまり、税金を減らすために、実際よりも利益を少なく見せているのであれば、それは脱税行為なのではないか? という見方を銀行はしています。

前述したような、今期の売上を来期の売上に付け替える、来期の経費を今期の経費として付け替えるといったケースなどは、脱税の典型です。銀行は、「社会の公器」とも呼ばれる存在ですから、そういった脱税をするような会社に融資をするわけにはいきません。

また、脱税をしていることが明確とまでは言えずとも、脱税をしているかもしれないとなれば、融資を躊躇するのは立場上当然だと言えます。

したがって、脱税に該当するか否かにかかわらず、逆粉飾自体が銀行から脱税の疑いを招くこと、ひいては、銀行融資が受けにくくなることを理解しておきましょう。

これに関連して、銀行は「顧問税理士の変更」に注目をしています。もしも、逆粉飾の兆候があって、さらには顧問税理士が替わっているとなると、「以前の顧問税理士と逆粉飾をめぐってトラブルになったから」ではないか? と銀行は考えるものです。

実際に、顧問先の脱税がわかったり、顧問先から脱税を相談されれば、税理士は顧問契約の解除を申し出るでしょう。

さらには、「会計ソフトの変更」にも、銀行は注目をしています。会計ソフトが替わったかどうかは、前回の決算書と今回の決算書の「様式」を比較すればわかることです。

なかには、「ほんとうの決算書」とは別に、「税務署用の決算書」や「銀行用の決算書」をつくるような会社もあるため、銀行は会計ソフトにも注目をしているのです。

なので、逆粉飾に加えて、税理士の変更や会計ソフトの変更などがあると、よりいっそう脱税を疑われやすくなります。そういう意味では、逆粉飾の有無にかかわらず、税理士や会計ソフトの変更については、銀行に「経緯」を説明しておくとよいでしょう。

ペナルティによって資金繰りに支障をきたす

逆粉飾の結果、ほんとうに脱税ということになると、税務署からは「ペナルティの税金」を課されることになります。いわゆる「追徴課税」です。

ペナルティの税金が上乗せされると、本来支払うべきだった税金の 1.5倍ていどを支払うことになります。これは、あきらかに「余計な出費」です。

脱税していた税金が大きければ大きいほど、その出費も大きくなります。場合によっては、資金繰りを破たんさせるほどのインパクトです。

では、そのときに銀行から融資を受けてしのぐことができるのか? といえば。当然、それはできません。繰り返しになりますが、脱税をするような会社に、銀行がおカネを貸すことはないからです。

とはいえ、黙っていれば、銀行にもバレないのではないか? と、考える社長がいます。ですが、それはありません。脱税をしたことは、銀行に必ずバレます。

なぜなら、銀行は「法人税申告書」を見て、ペナルティの税金がないかをチェックしているからです(別表5(2)という書類を見るとわかります)。

なお、ペナルティの税金は「脱税」とまではいかずとも、「経理処理の間違い」によって生じることもあります。この場合には、銀行に「脱税」と見られないように、ペナルティの税金が課された理由や経緯を説明することが大切です。

経理処理の間違いについては、税務署に「修正申告書」を提出することになりますから、それを銀行にも提示しつつ、説明をすることになります。場合によっては、顧問税理士から説明をしてもらうのもよいでしょう。

話を戻します。逆粉飾の結果、脱税としてペナルティの税金を課されると、ペナルティの税金を支払うことによる資金繰りの悪化に加えて、銀行融資を受けられないことによる資金繰りの悪化も起きるのがデメリットです。

会社の存続にも関わりますから、安易な逆粉飾は控えなければいけません。

まとめ

実際よりも利益を多く見せる「粉飾」に対して、実際よりも利益を少なく見せる「逆粉飾」があります。税金嫌いの社長がやりがちな「逆粉飾」によって、会社に起きるデメリットとは? についてお話をしました。

逆粉飾は、銀行融資や資金繰りにも影響するものであり、場合によっては会社の存続を危うくするものでもあります。安易な逆粉飾をしないよう、デメリットを理解しておきましょう。

逆粉飾する会社に起きるデメリット
  1. 利益過小で融資が受けにくくなる
  2. 脱税を疑われて融資が受けにくくなる
  3. ペナルティによって資金繰りに支障をきたす
逆粉飾する会社に起きるデメリット

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